2016年12月16日

『新・所得倍増論』デービッド・アトキンソン・著 vol.4531

【日本のGDPは770兆円まで増やせる?】
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本日ご紹介する一冊は、ベストセラー『新・観光立国論』の著者、デービッド・アトキンソン氏の30年間の集大成。

※参考:『新・観光立国論』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492502750/

最近は、ちきりんさんしかり、伊賀泰代さんしかり、小山昇さんしかり、すっかり「生産性」ブームですが、それもそのはず。なぜなら、日本の今後の成長を考えた場合、生産性を伸ばす以外に選択肢はないからです。

「GDP=人口×生産性」であり、日本はこれまで人口が多かったから世界2位の経済たり得た、というのは前作で述べられた通りですが、本書ではそこをさらに突っ込んで、どうすれば生産性が上がるのか、生産性の向上を阻んでいるのは何なのか、一歩踏み込んだ分析がなされています。

外からの目線で容赦なく日本の問題点を指摘するのが著者流ですが、その持ち味は、今回も発揮されています。

日本人による日本経済礼賛の問題点、農業の生産性の低さ、効率の悪い研究開発費、女性に甘い日本経済、責任をあいまいにする文化、「老舗」が多いことの問題点など、ズバリ切り込んでいます。

前作と重複する部分もありますが、今回も読み応えのある内容です。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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日本は先進国でもっとも生産性が低く、もっとも貧困率が高い

1人あたりGDPは世界第27位、1人あたり輸出額は世界第44位、1人あたりノーベル賞受賞者数は世界第39位

生産性を上げるのは、労働者ではなく経営者の責任です。世界一有能な労働者から先進国最低の生産性しか発揮させていないという日本の経営の現状は、いかに現行の日本型資本主義が破綻しているかを意味しています

日本とアメリカの生産性の格差のうち、45%は日本人女性の年収の低さに起因している

研究開発費は世界第3位、でも1人あたりで見ると「世界第10位」

スタンダードチャータード銀行の予測では、2050年の日本は世界第6位の経済になっています(中略)ただし、日本経済が2020年に比べて51.9%成長していなくては、第6位というポジションは獲得できません。この伸び率はどれくらいかというと、ドイツとほぼ同じです。これは裏を返せば、日本は現時点で大きく水を空けられているドイツ並みに生産性を向上させることができなければ、第6位にもなれないということです

農業の1人あたり総生産が異常に低い

日本のGDPは研究開発費の28倍です。世界の平均は47倍。これは、かなり効率の悪い投資と言わざるをえません

国税庁の数字では、1979年の女性の給与は男性の給与の51.1%。一方、2014年度の調査では、52.9%。35年間で、女性の社会進出は劇的に進んだにもかかわらず、実のところ男女格差はほとんど改善されていない

日本社会の中で、女性に任されている仕事が、そもそも付加価値が低いものが多いのではないか

日本に老舗が多いのは、「変化や改革を嫌う文化」の副産物である、という仮説も成り立つのです。さらに、日本では企業の吸収・合併が少ないこと、起業が少ないことも、同様に「現行制度を無条件に正当化する」文化の反動である可能性があります

GDPは770兆円まで増やせる

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著者によると、日本の潜在能力を考慮すると、GDPは770兆円まで増やせるそうです。

また、日本の農業が世界平均並みの輸出をするようになると、輸入額目標は約8兆円となり、農産物輸出額は世界第3位となるそうです。

テンションが上がりますね。

前作同様、日本の長所と短所を鋭く分析しており、じつに勉強になりました(「老舗」の部分は、土井も同感です)。

今後のビジネス、株式投資のチャンスを見極める上でも、参考になる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『新・所得倍増論』デービッド・アトキンソン・著 東洋経済新報社

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◆目次◆

第1章 日本はほとんど「潜在能力」を発揮できていない
第2章 「追いつき追い越せ幻想」にとらわれてしまった日本経済
第3章 「失われた20年」の恐ろしさ
第4章 戦後の成長要因は「生産性」か「人口」か
第5章 日本人の生産性が低いのはなぜか
第6章 日本人は「自信」をなくしたのか
第7章 日本型資本主義は人口激増時代の「副産物」に過ぎない
第8章 日本型資本主義の大転換期
第9章 日本の「潜在能力」をフルに活用するには

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