2016年9月30日

『調理場という戦場』斉須政雄・著 vol.4454

【このタイミングで読めて良かった。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344407717

ひょんなことからパリ滞在が延長になったので、ここから数日間は、パリ関連書が増えます。ご容赦ください。

と言いながら、限られた条件でベストを尽くすのがプロフェッショナル。

まさかここであの本を出すことになるとは思ってもみませんでした。

アマゾンが立ち上がって間もなく、同僚のNさんが強力にプッシュしていた本。その時は何となく読む気になれなくて、でも多少なりともフレンチもたしなむようになって、その凄さがわかったから、素直に手に取ってみようと思った本です。

本日ご紹介する一冊は、「ヴィヴァロワ」「タイユバン」などのパリの三ツ星レストランで修業し、「コート・ドール」のオーナーシェフとして活躍する斉須政雄さんが、その修業時代から今までを振り返った仕事論。

本書の一部は、「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載し、大反響だったものらしいですが、それも頷ける、素晴らしい内容です。

著者のひたむきな思いや、若い人への熱いエール、同志ベルナールとの友情、そしてリーダーとしての覚悟……。すっかり心打たれ、最初の17ページを読んだ頃には、もう涙がこぼれていました。

すべての仕事の出発点には、ひたむきな「思い」があります。それは、起業だって同じことです。

先日、浦島太郎の話をブログで書きましたが、浦島太郎が失ったのは、もしかしたら若さではなくて、この「思い」だったのかもしれません。

もし読者が、今、熱い「思い」を必要としているなら、本書は間違いなく「買い」の本です。

さっそく、その熱い言葉の一部をご覧いただきましょう。

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若い人は社会の中枢まで行く可能性がいくらでもありますよね。どれだけ自分の特質を生かせるのかはまだ知らない。作為もない。
「その白紙の状態のまま、ぶっちぎって行きな」
「汚染されないで、思うまま行ってしまえ!」
そんな風に、思います。

社会の常識になんて惑わされることなく、自分の常識でぶち当たってほしい。いつか、自分の常識に向けて、社会を振り向かせればいいじゃないですか。世間の常識があなたのことを「いい」と認めるまで、頑張ればいいんです。

技術指導に来ていたフランス人シェフが洗い場で手を洗っていた時に「あなたのお店で働かせてください」と頼み込みました。フランスとぼくをつなぐラインは、そんな細いものしかなかった。だけど、結局はそのツテでぼくのフランス行きは実現しました。
「手を洗おうとすると、いつも洗い場がきれいになっていた。マサオがいつもきれいにしてくれていたのを、わたしは見ていた。それがとてもうれしかったから、雇うことにした」

自分の習慣を変えずに流れるままに過ごしていたら、きっと一〇年後も人をうらやんでいるに違いない。モテる人がうらやましいし、仕事のできる人がうらやましい。生き方を変えなければ、異性のことも仕事のこともどっちつかずで、満たされないままの一〇年後を迎えるに違いない。だったら、ぼくは仕事以外のものは捨てよう。ぼくには資質がないのだから、やりすぎぐらいが当たり前のはずだ。

毎日やっている習慣を、他人はその人の人格として認めてくれる

「ロイヤルロードは、謙虚さへの道」という言葉はほんとうにその通りだと思います。選ばれた人は、多くの人のために働かなければならない。フランスで会った一流の料理人は、いつもそのお店の誰よりも働いていました。だからエースであり、トップであるのです

あの日の夢が現実になる。そこからは、ベルナールと一緒に開く新しいお店に向けて、何日も何日も話し合いました。「マサオ、人がちやほやするものはつまらないよ。それよりも、何でもないものを立派にしてやろうよ。下積みにいるものを引きあげよう。何にだっていいところはあるのだから」

ベルナールがいなければ、今のぼくはないでしょう。人が真摯に生きていくことのすばらしさを教えてくれたのは彼です。ぼくが今の「コート・ドール」までジャンプできたのは、彼が「あそこに飛んでいけよ」と、ジャンプ台になってくれたからなのです

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わずか280ページちょっとの文庫に、あまりに多くのドラマが詰まっていて、こんなに安い本はないと思いました。

サブタイトルに<「コート・ドール」斉須政雄の仕事論>とあるように、ちゃんとビジネス書にもなっています。

ぜひ読んで、この感動を味わってみてください。

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『調理場という戦場』斉須政雄・著 幻冬舎

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◆目次◆

フランス 一店目
フランス 二店目
フランス 三店目
フランス 四店目
フランス 五店目
フランス 六店目
東京 コート・ドール

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