2016年9月27日

『自省録』マルクス・アウレリウス・著 鈴木照雄・訳 vol.4451

【生きる指針となる名著】
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昨日に引き続き、古典名著を紹介。

本日ご紹介する一冊は、哲学者から皇帝になった「哲人皇帝」、マルクス・アウレリウスによる『自省録』です。

本書の素晴らしいところは、ともすれば誤読しやすいストア派哲学のエッセンスを、ギリシャ哲学を専門とする訳者、鈴木照雄氏(故人)が、わかりやすく解説してくれているところ。

ストア派哲学は、古代ギリシャのポリスの存在が揺らいでいた頃、「生きる指針」を求めた人々が飛びついたもの。

アレクサンドロス大王が領土を急速に拡大し、今で言うところのグローバリゼーションが起こり、人々が不安になったからで、ある意味、現在のグローバル社会に似た時代背景のなか、登場してきた学問と言えるでしょう。

訳者いわく、この『自省録』は、ストア派哲学の書としては、<第二級の資料、二番煎じの著述>だそうですが、それにもかかわらず後世に残されたのがこれだけだったというのは、おそらく氏が実務家(皇帝)として、大いに悩み、ストア派哲学を「生きる指針」として活用したからでしょう。

それゆえに、本書は啓発書として、また生きる指針として読む価値があります。

生きる目的を探している人、人間関係で悩んでいる人、克己心を養おうと考えている人には、きっと得るところがあると思います。

できればすべて通して読んでいただきたいですが、参考までに、一部ご紹介しましょう。

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何人もいま生きている生以外の生を失うわけではなく、いま失う生以外の生を生きるものではない

復讐する最良の方法は、[相手と]同じような者にならぬこと

神々を畏敬し人々の安泰を計れ。人生は短い。この地上の生の唯一の成果、それは敬虔な心構えと公共を想う行為である

太陽は雨の作用を果たすことをよもや求めはすまい。アスクレピオスもカルポポロスの仕事をすることはまずあるまい。星辰のおのおのはどうか。皆それぞれに違ったものであるが同一の目的に協働してはいないか

おまえの心を愉しいものにしようと思うなら、共に生きる人々の長所を想え

誰におまえが出会おうとも、直ちにおまえ自身に先ず語りかけよ──この男は善悪のことについていかなる原則を持っているか、と

人間は相互のために生まれたものである。されば、教えよ。さもなければ耐えよ

無教養な者が無教養なことをしたからといって、いかなる不都合なあるいは新奇なことが生じたというのか。むしろ彼がその過ちを犯すことを予期しなかったことをおまえは自身を責めるべきではないのか、それを反省せよ

人生の目標が終始一つにして同一不変である者は、その者自身もまた生涯を通して一つにして同一不変の人間であることの可能な者である

過去のことはすべて捨ておき、未来のことは神慮に委ね、ただ現在のことをのみ敬虔と正義に方向付ける

神々を非難すべきではないし──なぜなら、神々は意識的にもあるいは無意識的にも誤ることはけっしてないから──また人間をも非難すべきではない。なぜならその過ちが無意識でないものは一つとしてないからである。結果、誰をも非難すべきでないということになる

生命の終焉はいやしくもそれが人間の選択の埒外のものでもあるならば醜いものでもないからして各人に悪しきものではなくまた非社会的なものでもない。却って、もしそれが万有にとって時宜に適ったものであり万有に益を齎し全体と共にとり運ばれるものならば、それは善きものである。かくして、神と同じ道を運ばれそしてその思慮判断によって神と同じ目標に運ばれる者は神の息吹に運ばれる[至福の]者である

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最初から終わりまで説教を聞いているようなものなので、途中休み休み読むことをおすすめしますが、内容は本当に素晴らしいと思います。

本格的にストア哲学を勉強したいと思いました。

なお、土井が感動したのは、本文もさることながら、巻末にある訳者の解説です。

学者として述べるべきを述べつつ、柔軟に『自省録』の素晴らしさを述べ、また自身の『自省録』への愛を説く。

鈴木照雄さんという方は、きっと魅力的な方だったのだろうなと、勝手に思い描いていました。ご存命なら、ぜひお会いしたかったところです。

著者も訳者も亡くなっているのに、その英知に触れられるのは、読書の最大の魅力のひとつです。

ぜひじっくりと、味わいながら読んでみてください。

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『自省録』マルクス・アウレリウス・著 鈴木照雄・訳 講談社

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◆目次◆

第一巻
第二巻
第三巻
第四巻
第五巻
第六巻
第七巻
第八巻
第九巻
第十巻
第十一巻
第十二巻

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