2016年8月20日

『世界のエリートが学んでいる教養としての日本哲学』 小川仁志・著 vol.4413

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近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』の世界的ベストセラーは、日本的思想が外国の問題を解決した、象徴的な例だと思います。

※参考:『人生がときめく片づけの魔法』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763131206

このベストセラーの例を出すまでもなく、海外では日本の思想が幅広く受け入れられており、なかでも「禅(ZEN)」は、グローバル企業のCEOやスポーツ選手などに人気の思想です。

本日ご紹介する一冊は、そんな世界のエリートが学んでいる日本的思想をまとめて紹介した、興味深い日本思想入門書。

神道から仏教、禅、武士道、現代日本思想まで、日本哲学の歴史を概観し、そこから生まれた思考法(「なる」「従う」「結ぶ」「清める」「間をとる」「小さくする」「みやびやかにする」など)を、哲学者の小川仁志さんが解説しています。

ビジネスに使えそうなのは、第2章の「日本哲学の思考法」と題した部分ですが、ほかにも、「日本哲学の名著」「日本哲学の必須人物」「日本哲学の必須用語」がまとめられており、手っ取り早く日本思想を学ぶには、ピッタリの一冊だと思います。

基本的にじっくり読んで欲しい本ですが、ここではビジネスで使えそうな部分を中心に、ご紹介しておきます。

さっそく、赤ペンチェックしてみましょう。

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江戸期における禅の興隆が、近代における鈴木大拙の禅の思想につながってきます。大拙は、分別的思惟を否定し、むしろ「無分別の分別」を説きました。それは個体という観念が幻想にすぎないという発想を生み出すに至ります。西洋哲学では当たり前の主観主義や個体主義を否定してみせるところに、西洋のエリートたちを惹きつける要素があるのでしょう

死ぬか生きるかでは、肚を据えて死ぬほうを選べば、犬死をするというようなことはない

かつて政治学者の丸山眞男は、「である」社会から「する」社会に転換する必要性を訴えました。近代社会においては、一人ひとりの個人が主体的に世の中を変えていかないといけないという警鐘です。丸山の議論は、現代社会を生きる私たちにも当てはまるものといえます。なぜか? それは今なお日本人が、「する」ことよりも「である」、あるいは自然に「なる」ことをよしとして生きているからにほかなりません

自分が正しいかどうかではなく、自分が従うべきものに従う

無はもはや有の対立概念ではなく、有をも生み出す絶対的な場所という意味で、絶対無と呼ばれるのです。このような無を肯定的にとらえる思想は、日本独自のものといえるでしょう

罪や穢れを消滅させるという発想ではなく、それを水に流して清めるべきだと考えます

言葉なくして感じる。そのほうがより多くの情報を手に入れることができます

なぜ適当な間をとったほうがいいかというと、そうでないと本当のことが見えないからです。かつて間には真という字が使われていたともいいます。つまり、間には真理があるということです

何かを好きになると、人はこだわる。風流なこだわりを数奇といいますが、数奇と好きは同語源だといいます

私たちの生は偶然性に満ちているにもかかわらず、日ごろはそのことを直視しようとしません。なぜなら、不安だからです。誰しも自分の存在が偶然であることを認めるのは怖いものです

西洋の合理主義や功利主義からすると、量的成果を上げることは不可欠であり、ましてやお金が絡むなら、絶対にそれが増えるような選択をしなければなりません。ところが、筋を通す思考では、そんなものはどうでもいいのです。むしろ大事なのは人間の心なのです

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これまでバラバラだった知識が一気にまとめられたような感覚で、とてもすっきりしました。

ただ、あくまで概観しただけの本ですので、もっと深く学びたい方は、他の本と併読すると良いでしょう。

ビジネスパーソンの教養として、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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『世界のエリートが学んでいる教養としての日本哲学』
小川仁志・著 PHP研究所

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◆目次◆

第1章 日本哲学の歴史
第2章 日本哲学の思考法
第3章 日本哲学の名著
第4章 日本哲学の必須人物
第5章 日本哲学の必須用語

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