2016年6月12日

『偶然のチカラ』植島啓司・著 vol.4345

【「偶然」をまじめに考える】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/408720412X

成功した経営者のなかには、少なからず「運が良かった」と語る方がいらっしゃいます。

しかしながら、ビジネスの世界では、何となくこの「運」を語ることはタブーとされている。

そこで本日は、この「運」について徹底的に考えられる一冊をご紹介します。

本日ご紹介する一冊は、『偶然のチカラ』。宗教学、人類学などを専門とする著者、植島啓司さんが、古今東西のあらゆる事例を引きながら、人間を翻弄する「運」について論じています。

確率に挑んだ数学者たちの話から、ギリシャ神話まで、幅広いトピックを通して、運とは何か、幸福とは何かを議論しており、10年前の本ながら、今にピッタリの内容です。

・なるべく選択しないですますこと
・選択肢が出払ってから考えてもムダではない
・ただぼうっとしているだけで幸せな状態こそ、本当の幸せ

など、ビジネス書的な価値観からするとあり得ないメッセージですが、じつは縁や偶然に委ねることの素晴らしさを説いた本です。

「決まりきった日常とは異なる多くの選択肢を持つ必要がある。自分を世界に開いてくれるものならなんでも受け入れるべき」というメッセージは、今の保守的な日本にこそ必要なメッセージではないでしょうか。

さっそく、エッセンスを見て行きましょう。

———————————————–

人は果たして選択が正しかったかどうかをけっして自分で確かめることはできない

うまく生きる秘訣はなるべく選択しないですますことである。「あれかこれか」ではなく「あれもこれも」ということである

判断力があるように見せることは大切だが、実際には、いくつかの選択肢が出払ってから考えてもムダではない

人が納得できないのは、実際に起こったことについてではなく、なぜそれがよりによってほかの人にではなく、自分の身に起こったのか、ということである

いくつかの事象の系列がある一点で出会うことによって、スーパーナチュラルな出来事が浮上してくる

この世には、対象のない苦しみがあるように、対象のない喜びというのもまた存在するのである。ただぼうっとしているだけで幸せな状態こそ、本当の幸せなのではないか

自分を解きほぐしてくれるもの、眠り、赤ちゃんに戻してくれるもの、恍惚、柔軟性、ぐちゃぐちゃにしてくれるもの、そんなものにこそ大きな価値があるのではなかろうか。そう、決まりきった日常とは異なる多くの選択肢を持つ必要がある。自分を世界に開いてくれるものならなんでも受け入れるべきなのである

日本の仏教は、とりわけ中世において、「万物流転」「無常」「おごれるものも久しからず」「盛者必衰」など悲観的な色彩を強めていった。「すべては移りゆく」「生きることは虚しい」「つねに死の準備をせよ」というのだ。ところが、それは江戸時代の元禄文化あたりからまた違った傾向を持つことになる。つまり、そのあたりから、「憂き世」を「浮世」に置き換えて、どうせ「この世は常ならず」なら、「がんがん楽しんじゃおうぜ」という考え方が優勢になってくる

そもそも宗教というものも、ルーマニアの宗教学者エリアーデも指摘するように、何よりも「エクスタシーの技術」なのである。「エクスタシー」(忘我)は「エグジスタンス」(存在)と同じ語源であり、「みずからの存在の外側に立つ」という意味であり、歴史を通じて、人間はつねに自分以外のものに自分を託すことによって危機を乗り越えてきたのである

———————————————–

元禄文化の話を読んでいて、これからの日本が向かうのはひょっとしたらこれかなあ、と思ってしまいました。

芸術、娯楽、文化の時代がやってきた感じがしますね。

じつに興味深い読み物です、ぜひチェックしてみてください。

———————————————–

『偶然のチカラ』植島啓司・著 集英社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/408720412X

————————————————-

◆目次◆

Lesson1 自分で選択するべからず
Lesson2 世の中にはどうにもならないこともある
Lesson3 自分の身に起こったことはすべて必然と考える
Lesson4 たかが確率、されど確率
Lesson5 思いは全部どこかでつながっている
Lesson6 いい流れには黙って従う
Lesson7 すべてはなるようになる

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー