2016年4月3日

『エコノミストの昼ごはん』タイラー・コーエン・著 vol.4275

【美味しい食事にありつくための経済学】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861825598

ちょっと前の話になりますが、『スタバではグランデを買え!』という本がベストセラーになりました。

※参考:『スタバではグランデを買え!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480428968

この本は、「取引コスト」に着目して、合理的な選択をする方法を説いた本でしたが、経済学には、このように合理的な選択を促すための知恵がたくさん存在しています。

本日ご紹介する『エコノミストの昼ごはん』は、あなたが美味しい食事にありつくための経済学を、「ニューヨーク・タイムズ」誌の人気コラムニスト、タイラー・コーエン教授が説いた一冊です。

本書には、日本語版の序文がついているのですが、ここでなぜ日本がミシュランの星つきレストランの数がフランスよりも多いのか、意外な答えが示されています。

その答えは、日本はインフラが整っているから。

著者の言葉を借りると、こういう説明になります。

<日本の都市化および比較的有効な公共交通システムのおかげで、有効市場の規模は、人口の数字のみが示すものよりもはるかに大きなものになっています>

つまり、レストラン一つあたりの潜在顧客が増え、競争が激しくなるため、結果として食べ物の質が向上するということです。

また、こんな説明もなされていました。

<日本という国は労働時間が長い上に、非常に人口密度が高く、高度に都市化されているため、台所は概して狭くなっています。こうした事情のせいで、人々の外食する機会は増え、多くのレストランの支援につながると同時に、このセクター内の競争を大いに後押します>

じつは、広がりつつある地産地消のブームや、スローライフ促進の動きは、意図に反して日本の「匠」の仕事の質の低下につながる恐れがあるのです。

また、地産地消に関しては、こんなコメントも載っています。

<時として、水を売買するいちばん簡単な方法は、トマトの水分という形で取引することなのだ。食品の市場は、水の市場でもある。これは、ロカヴォアたちの哲学が見当はずれな理由の一つである。彼らは、世界の中には水資源が枯渇しつつある地域があり、食料の取引──長距離の取引も多い──以外にこの問題を本当に解決する方法はないのだという事実を見落としている。長距離取引は、環境問題を生み出す以上に、環境問題の解決につながることが多いのである>※ロカヴォア=地元産の食品を食べる人

ほかにも、食べ物に関する話題を通じて、物事の因果を正しく判断する見方を示しており、じつに勉強になりました。

気になったポイント、いくつか紹介しておきましょう。

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輸送の速度が遅く、保冷技術が導入されて間もない場合には、魚をはじめとするシーフードの美味しさが保たれるのは、海や湖からせいぜい十マイルの距離までである

一八七〇年から一九七〇年をピークに、技術の進歩する速度が落ちてきた今、私たちは、もっと広い意味での「イノベーション」に目を向ける必要がある。より良く賢い消費者になることは、自分たちの生活にさらなる進歩をもたらし、私が別の著書で論じた「大停滞」に立ち向かう一つの方法なのである

これはコーヒーに対して有利に働く内部相互補助であり、コーヒー好きにとってはスターバックスでの買い物は特にお得だということになる。だが、ミルクと砂糖が好きならば、コーヒーの香り代を余計に支払っていることになるので、自宅で自分好みにミルクと砂糖を混ぜたほうがいいかもしれない。そのほうがはるかに安上がりだ

アメリカの食べ物のレベルを上げつつ、価格はうんと下げたいと思うなら、一つ提案がある。誰でも免許が取得できるように、各々が責任をもって商売を行うという条件つきで、移動販売車などの屋台の規制を緩和しよう(中略)アメリカで次に起きる食の革命は、モバイルなものになるだろう

「モーテルに併設されているタイ料理店で食べるべし」レストランがモーテルに併設されている場合には、余計な賃料を払わなくてもよい。タイ人家族は既にモーテルを所有しており、その傍らでこの商売を始める

道路の悪さは、インドの食料品の多くが市場に到着するまでに腐ってしまう一因となっている。『エコノミスト』誌の試算によると、インドでは農産物の四分の一以上が廃棄処分になっている

環境にやさしい製品を買うことで、個人のモラルは低下しやすくなる。一連の実験では、「環境にやさしい店」で製品を購入する許可を与えられた人々は、実験の次の段階で行われるゲームにおいて、不正をしたり嘘をついたりする確率が上がった。つまり、一旦良心が満たされてしまうと、他の場面ではより強欲かつ利己的になるのである

不買運動が最も有効になるのは、通常、不買運動の対象となる業者があまり儲かっていない時である。不買運動の効果が最も低いのは、販売されているサービスや商品がそれぞれ巨額の利益をもたらしている時である

日本というのは、「メキシコ料理のシェフ」が一晩で「自動車のセールスマン」に転職することも、その逆も起こりえない国なのだ。食事客の視点から見れば、これは理想的である

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本書には、われわれが良い食事にありつくためのさまざまなヒントが書かれていますが、本当に大切なのは、以下のメッセージかもしれません。

・メタ合理的たれ
・最良の情報は往々にして他人の手の内にあるのだと知ること

これは、ソクラテスの「無知の知」や、松下幸之助の「衆知を集める」のような思想であり、結局、知的というのはこういう態度のことを言うのだと思い、大いに反省させられました。

食べ物に興味のない人にとっては、ちょっと内容が冗長かもしれませんが、好きな人にとってはたまらない一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『エコノミストの昼ごはん』タイラー・コーエン・著 作品社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861825598

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◆目次◆

第1章 革命前夜
第2章 かくしてアメリカの食べ物は駄目になった
第3章 スーパーマーケットでの体験に革命を!
第4章 おいしい店を見つけるためのルール
第5章 バーベキューは最高のスローフードだ
第6章 部屋の中のアジア象
第7章 今こそ新たな農業革命を
第8章 おいしく食べて地球を緑に
第9章 なぜメキシコで食べるメキシコ料理は味が違うのか
第10章 どこでも美味しいものを食べるための事典
第11章 家で作る料理の材料と価値

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