2016年1月5日

『シャーロック・ホームズの思考術』マリア・コニコヴァ・著 vol.4186

【ホームズに学ぶ科学的思考術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150504547

だいぶ前の話になりますが、テレビで伝説の女宝石泥棒、ドリス・ペインのことを紹介していて、その手口に驚きました。

ドリス・ペインは、世界各地の高級店に、富裕層を思わせる装いで現れ、店員に「いかにも買いそう」と思わせてたくさん宝石を出させ、何気なくそのうちのいくつかを身に着けて帰ったそうです。

このように堂々と盗みを働き、60年で盗んだ金額は200万ドル(2億4000万円)。テレビでは、捕まえた警察でさえも、「まさかこの人が盗みを働くなんて」と信じられない様子でした。

行動経済学が教えていることは、人間にはバイアスがあるということ。

そしてわれわれが正しく判断を下そうと思えば、このバイアスを排除するための思考術が欠かせないのです。

ということで本日ご紹介する一冊は、あのシャーロック・ホームズの思考術を紹介し、全米で話題となった『シャーロック・ホームズの思考術』の文庫版。

著者は、「ニューヨーカー」誌でコラムを担当し、「ニューヨーク・タイムズ」「ウォール・ストリート・ジャーナル」にも寄稿するジャーナリストのマリア・コニコヴァ氏。

本書の元本は、2013年に刊行され、「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラーとなり、18カ国に翻訳されました。

元本は読んでいなかったので、遅ればせながらの紹介ですが、なるほどこれは興味深い一冊でした。

大人気「シャーロック・ホームズ」の作品のなかからホームズの優れた思考に触れる部分を抜き出し、最新の行動経済学の知見から解説を加えるという内容で、ビジネス的にも参考になります。

観察する際の注意点や、想像力の重要性、正しい推理のステップまで、ホームズ的な考え方を、丁寧に解説しています。

さっそく、本書のなかから気になった部分を見て行きましょう。

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「きみの場合は、見るだけで観察しないんだ。見るのと観察するのとでは、まるっきりちがう。たとえば、きみは、玄関からこの部屋へあがる階段は何度も見ているだろう?(中略)ぼくは一七段だと知っている。それは見るだけでなく、観察しているからだ」

大陸をまたにかけてプレイボーイぶりを発揮したワトスンが、ジャスミンの香水をつけた女性と付き合ったことがあったとしたら、どうなっただろう? その付き合いが幸福なものだったと仮定しよう。手紙の匂いを嗅いだ彼は、突然はっきりと物が見えるようになるだろう(幸福な気分では、視野が広くなる)

◆初期設定効果(デフォルト・エフェクト)
私たちはデフォルトのオプションをそのまま利用し、実際には別のオプションのほうがいい場合でも、変えるためのエネルギーをかけようとしない

迷っているときの脳は、推論から一般化までの推論プロセスのあらゆる段階でいちばん楽な方法を選ぶ

二つのことが同時に起こる可能性は、そのうちのひとつが起こる可能性より高くなりえない

「不可能なものをひとつずつ取り除いていけば、あとに残るものが、どんなにありそうもないことでも、それが真実だということを、これまで何度も言ったじゃないか」

古代ローマの哲学者で詩人のルクレティウスは、世界に存在するいちばん高い山は自分がそれまでに観察したいちばん高い山と同じだと信じている人間を、ばかと呼んだ

人間が学習するのは、主として、報酬予測誤差(RPE リワード・プレディクション・エラー)というものに駆られてだ。期待していたよりもやりがいがあると、RPEによりドーパミンが脳内に放出されることになる

◆自信過剰が増大する主な情況
1.困難に直面したとき(事実をあますところなく知ることができない場合にどうしても判断を下さなくてはならないとき)
2.自信過剰は慣れとともにふくらむ
3.自信過剰は情報量とともに増大する
4.自信過剰は行動とともに増大する(積極的に携われば、自分のやっていることに自信がついていく)

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抜き出したのはバイアスが生まれるメカニズムですが、本書には、このようなバイアスをどうすれば排除できるかも書かれています。

・自分のものの見方から離れれば離れるほど、より広い状況を考えることができるようになる
・相手の個人的な特質によって判断を曇らせてはいけない
・観察したものからのみ推理し、それ以外のものからはしない

タイトルがユニークだったので眉唾でしたが、これはビジネスや投資に直結する優れた内容だと思います。

ぜひ読んでみてください。

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『シャーロック・ホームズの思考術』マリア・コニコヴァ・著 早川書房

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150504547

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◆目次◆

第一部 自分自身を理解する
第一章 科学的思考法を身につける
第二章 脳という屋根裏部屋を知る
第二部 観察から想像へ
第三章 脳という屋根裏部屋にしまう──観察する力をつける
第四章 脳という屋根裏部屋の探求──想像力を身につける
第三部 推理の手法
第五章 脳という屋根裏部屋を操縦する──事実に基づく推理
第六章 脳という屋根裏部屋をメンテナンスする──勉強に終わりはない
第四部 自己認識の科学
第七章 活動的な屋根裏部屋──すべてのステップを結びつける
第八章 理論から実践へ

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