2015年12月18日

『システム思考をはじめてみよう』ドネラ・H・メドウズ・著 vol.4168

【ちょっと薄いが…】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862762190

先日、「フォーブス」の「死後も稼ぎ続けるセレブ10名」が発表となり、 トップにマイケル・ジャクソンが選ばれました。(なんと年収140億円!)

※参考:フォーブスジャパン
http://forbesjapan.com/articles/detail/9828

金額の多寡によらず、後世に財産を残してくれた人物というのは少なからずいるわけで、その一人がドネラ・H・メドウズ氏でしょう。

ドネラ・H・メドウズ氏は、『成長の限界』『世界がもし100人の村だったら』(原案)などの書籍で知られる、元マサチューセッツ工科大学(MIT)の特別研究員(2001年に逝去)。

本書は、名エッセイストとして知られたメドウズ氏の膨大なエッセイの中から、「システム思考」に当たるものを選んでまとめたもの。

わずか70ページちょっとの分量のため、「薄すぎてコスパが悪い」という意見があるようですが、問題解決の視点を得るには、十分価値があると思います。(まあ、確かに薄いんですが…)

自転車操業と化している企業活動、ますます広がる貧富の格差など、現代社会の問題をズバリ指摘し、どうすれば解決できるのか、いくつか糸口となる視点を示しています。

「フィードバックの力を活用する」「見える化する」というのはその一例でしょう。

世界を変える「システム思考」とは、どんなものか。どうすれば手に入るのか。さっそく著者の言葉に耳を傾けてみましょう。

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従来の経験や考え方が通用しない、新しい変化が次々と起こる時代を生き抜くために最も大事なことは、「従来の経験や考え方から自由になる」ことです。そうしないと、新しい変化を素直に見つめることができません(枝廣淳子)

こんなクマのジョークを聞いたことがあるでしょうか? 森のキャンプ場で、ふたりの男がテントの外に座っていると、大きなクマが恐ろしげな顔で、自分たちめがけて突進してくるのが見えました。ひとりが運動靴の紐を結び始めたのを見て、もうひとりが言いました。「おまえ、気は確かか? あのクマより速く走るなんて無理だぞ!」すると、男が言いました。「クマじゃない。おまえより速く走ればいいんだ」

「クマから逃げるために、他のヤツよりも速く走ろう」とするコストは莫大です。無駄な投資が行われ、使われない設備や機械が増え、労働者は一時解雇され、家庭は破産し、地域社会は息も絶え絶えです

「成功者はさらに成功する」では、お金や人材などの資源が、最も力のある人たちに振り向けられます。必ずしも最善の、あるいは最も効率のよい人たちに向けられるわけではないのです。放っておくと、「成功者はさらに成功する」は、市場の競争も民主主義もだめにしてしまう可能性があります。問題はシステムの構造にあります。システムの中にいる人たちのモラルのせいではありません

問題はつながっている、解決策もつながっている

自由な社会では、飛びぬけて魅力的な場所があれば、当然人々が集まってきます。真っ先にやってくるのは、フットワークが軽い人たち(若者、金持ち、情報通)でしょう。その場所はどんどん成長していきます。その成長が止まるのは、高速道路の渋滞や失業者の増加、住宅不足や公害の発生、あるいは単なる景観の喪失によって、土地の魅力が失われたときです

原則によれば、魅力的な場所に確実に住む唯一の方法は、あらゆる場所が魅力的になるように努力することなのです

優れたフィードバックの効果は目を見張るほどです。かつてオランダで新しく住宅開発が行われたことがありました。そっくり同じ家々が建ち並んでいるのですが、電力メーターの設置場所だけが違っていました。地下に設置された家もあれば、玄関に設置された家もありました。電気使用量を比べてみると、メーターが簡単に目に見える家の方が、メーターが地下に設置されて目に見えない家よりも、三〇パーセント少なかったのです

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社会問題、環境問題が主として論じられていますが、本書で述べられている内容は、企業活動にも応用できると思います。

<問題はつながっている、解決策もつながっている>
<フィードバックがあれば、自分だって、世界だって変えられる>

「自分一人が頑張ったって、どうにもならないよ」という大きな問題に直面した時、われわれがどう考えればいいか、ヒントを示してくれる一冊です。

コスパよりも「一つの気づき」を大切にする方は、読んでみてください。

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『システム思考をはじめてみよう』ドネラ・H・メドウズ・著 英治出版

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862762190

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◆目次◆

お互いと競うのはやめて、クマに立ち向かおう
成功者はさらに成功する
問題はつながっている、解決策もつながっている
魅力をコントロールすることで、成長をコントロールする
フィードバックをもう少し
フィードバックがあれば、自分だって、世界だって変えられる
個人としては学び、組織としては抵抗する私たち
境界線は、現実の世界ではなく、心の中にある

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