2015年12月5日

『イノベーションと企業家精神 エッセンシャル版』 P・F・ドラッカー・著 vol.4155

【これぞ本物】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478066507

昨日は、岩崎夏海さんの新刊『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』をご紹介しました。

※参考:『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478066493

『もしドラ」の時は、『マネジメント エッセンシャル版』が飛ぶように売れ、100万部を突破したわけですが、今回もそれを狙ってか、ダイヤモンド社から献本が届いていました(笑)。

ただ、話題書が出れば同然関連書も動くわけで、書評家としては、やはり元本もご紹介したい、というのが本音です。

『イノベーションと企業家精神』は、もともと1985年に、当時75歳だったドラッカーが書いたもので、「イノベーションと企業家精神が誰でも学び実行することができるものであることを明らかにした世界最初の方法論」(本書より)だそうです。

土井も随分前に読んだことがありますが、当時はまだ起業していなかったため、起業のための糸口、参入する業界を見極めるためのヒント、ぐらいにしか思っていませんでした。

しかし、いざ会社を立ち上げ、10年以上続けてくると、本書ほど、現役の経営者にとって「機会/脅威」を見つけるヒントを与えてくれる本もないと思います。

既に昨日ご紹介した通り、本書には「予期せぬ成功」と「予期せぬ失敗」という概念が登場するのですが、その事例が読ませてくれます。

『もしイノ』で紹介されている百貨店のメイシーの他にも、たくさん事例が登場し、こちらの方が、経営者の身には迫るものがありました。

学者的な視点から批判されることもあるドラッカーですが、哲学、考えるヒントとしてのドラッカーは、おそらく永遠だと思います。

実際の経営に携わる方が読めば、きっと明日へのビジネスヒントが見つかるはずです。

さっそく、エッセンスをチェックしてみましょう。

———————————————–

経済活動に携わる者は誰でもリスクを冒す。なぜならば、経済活動の本質は現在の資源を将来の期待のために使うこと、すなわち不確実性とリスクにあるからである

初等教育の普及をもたらしたのも、教育に対する理解、教師の育成、教育学の進歩ではなく、最もイノベーションらしからぬイノベーション、一七世紀半ばのチェコの偉大な教育改革者ヨハン・アモス・コメニウスによる教科書の発明だった。教科書がなければ、いかに優れた教師であっても一度に一人か二人の生徒しか教えられない。教科書があれば、平凡な教師でも一度に三〇人から三五人の生徒を教えることができる

時に冷やかしの種とされている創造的模倣なるものこそ、きわめて成功の確率の高い立派な企業家戦略

外部の予期せぬ変化をイノベーションの機会として利用し成功するための条件は、その機会が自らの事業の知識と能力に合致していることである

イノベーションの機会としてのギャップはいくつかに分類できる。(1)業績ギャップ、(2)認識ギャップ、(3)価値観ギャップ、(4)プロセス・ギャップである

価値観ギャップの背後には、必ず傲慢と硬直、それに独断がある。つまるところ、「貧しい人たちが何を買えるかを知っているのは、彼ら貧しい人たちではなく私である」という考え方である

おそらくプロセス・ニーズに基づくイノベーションのうち最も成功したものが、日本の自動車事故を三分の一に減らした視線誘導標の開発だった

ニューヨークのシティバンクの成長は、主として意欲に燃える若い女性の社会進出をいち早く認識したことによるものだった

通念の誤りはその前提にある

新事業は、既存の事業から分離して組織しなければならない

ベンチャーが成功するには四つの原則がある。第一に市場に焦点を合わせること、第二に財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について計画をもつこと、第三にトップマネジメントのチームをそれが実際に必要となるずっと前から用意しておくこと。第四に創業者たる企業家自身が自らの役割、責任、位置づけについて決断することである

———————————————–

昨日ご紹介した『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』と比べてどちらを読むべきかというと、楽しみたければ『もしイノ』、稼ぎたければ本書、といったところでしょうか。

本書の短所は事例が古いことですが、長所もまた事例が古いことです。

みんなが忘れている事例、もしくは若い人がまったく知らない事例を現代に再現すれば、それだけで成功できるかもしれません。

温故知新という言葉がありますが、本書はまさにそのきっかけとなる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

———————————————–

『イノベーションと企業家精神 エッセンシャル版』
P・F・ドラッカー・著 ダイヤモンド社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478066507

————————————————-

◆目次◆

編訳者まえがき
まえがき
第1部 イノベーションの方法
第1章 イノベーションと企業家精神
第2章 イノベーションのための七つの機会
第3章 予期せぬ成功と失敗を利用する 第一の機会
第4章 ギャップを探す 第二の機会
第5章 ニーズを見つける 第三の機会
第6章 産業構造の変化を知る 第四の機会
第7章 人口構造の変化に着目する 第五の機会
第8章 認識の変化をとらえる 第六の機会
第9章 新しい知識を活用する 第七の機会
第10章 アイデアによるイノベーション
第11章 イノベーションの原理
第2部 企業家精神
第12章 企業家としてのマネジメント
第13章 既存企業における企業家精神
第14章 公的機関における企業家精神
第15章 ベンチャーのマネジメント
第3部 企業家戦略
第16章 総力戦略
第17章 ゲリラ戦略
第18章 ニッチ戦略
第19章 顧客創造戦略
終 章 企業家社会
編訳者あとがき

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー