2015年6月8日

『メディアのリアル』吉田正樹、先駆者たち・著 vol.3975

【メディアの未来が見えるインタビュー集】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833421313

「時流を読むためにはどうすればいいか?」

これは、セミナーをする度に、いろんな方に聞かれる質問です。

土井の答えは、「今、売れているものを知る。そこに未来の萌芽がある」ということですが、これは商品に限ったことではありません。

今、活躍している人間。

それもまた、「今、売れているもの」に匹敵する。つまり、今、活躍している人を知ることは、トレンドを掴むことにつながるのです。

本日ご紹介する一冊は、「笑う犬の生活」「夢で逢えたら」など、数々の伝説的番組を生み出し、『もしドラ』の岩崎夏海さん、ユーチューバー吉田ちかさんなどもプロデュースしているワタナベエンターテインメントの会長、吉田正樹さんが、時代の先端を行くクリエイター7人に取材した一冊。

2014年4月から7月にかけて吉田さんが行った、立教大学全学共通カリキュラムの講座「日本のコンテンツ産業は世界に通用するか~クールジャパンを考える~」がもとになっており、サイバーエージェントの藤田晋さん、『踊る大捜査線THE MOVIE2』を手掛けた映画監督の本広克行さん、映画プロデューサーの小滝祥平さん、メディアコンサルタントの境治さん、現代サブカルチャーのカリスマ宇野常寛さん、ヒップホップアーティストのKダブシャインさん、ユーチューバー吉田ちかさんなどが登場します。

どんな議論がなされているのか、ちょっとチェックしてみましょう。

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そこに良い意味での過剰なものが投入されていれば、その異常さが作品の熱量になるのです(吉田正樹)

人気が出るのは著名人ブログや儲け話、それからエロティックな分野であって、いくら真面目で堅いコンテンツを提供しても、なかなか人が集まらない。それがインターネットの現実なのです(藤田晋)

日本だと三〇〇億円、四〇〇億円というとんでもない数字を出すジブリのアニメーションも、アメリカだと完全にアウト系の映画です。なぜかというと『トイ・ストーリー』や『アナと雪の女王』のように、アメリカで受け入れられるアニメーションはすべて3D。宮崎アニメのような2Dの絵がきれいに動く作品というのは、ハリウッドではその技術が評価されても、普通の人には支持されないのです(本広克行)

僕はだいたいいつもトレンドの裏狙いなんです。今、当たっていないものの中に、次の時代のヒットがある。だからそれまでも、「お笑いが冬の時代だったから、お笑い番組」「トーク全盛の時代だからコント」という発想でした(吉田正樹)

当たるものに一極集中するというのは、言葉を換えれば多様性の否定です(中略)それは必ず文化の消滅につながっていく(小滝祥平)

テレビというのは、数十万人単位ならわりと簡単に集めることができるメディアなので、その特徴を活かして、グッズや番組のDVDを売るといったことに、これからはもっと力を入れていくようになると思われます。北海道テレビの『水曜どうでしょう』は、まさにその新しいモデルの先駆けです。北海道ではたとえ視聴率が一五%や二〇%取っても、人口が約五四〇万人と少ないので、大した広告収入は期待できません。ところがDVDが一〇万部以上売れ、有料ネット配信も人気なので、広告よりもそれ以外の売上のほうが大きいのです(境治)

少し前に、みんながネットサーフィンに興じるという時代がありました。(中略)それが今はリコメンド(勧めること)に変わりつつあります(吉田正樹)

現在の日本で希少なものは何かといったら、コミュニケーションではないでしょうか。だって、コミュニケーションはコピーできませんからね。AKB48のCDが売れるのは、それがイベント参加券だからです(宇野常寛)

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さらりと読めるオムニバス形式のインタビュー集ですが、それぞれの方の言葉に、メディアがこれから向かう道のヒントがあります。

各人のプロフェッショナルとしての心構えも学べるので、ぜひチェックしてみてください。

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『メディアのリアル』吉田正樹、先駆者たち・著 プレジデント社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833421313

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◆目次◆

第一章 「テレビプロデューサー」の生き残り方
  ワタナベエンターテインメント会長 吉田正樹
第二章 「スマホ」に賭ける二〇〇〇億円企業の新戦略
    サイバーエージェント社長 藤田 晋
第三章 興行収入一七三億円! 大ヒット映画のつくり方
    映画監督 本広克行
第四章 矜持を持て 日本映画の「魂の仕掛け人」
    独立系メディアプロデューサー 小滝祥平
第五章 大激変!「メディアの新潮流」
    メディアコンサルタント 境 治
第六章 「現代サブカルチャー」カリスマの思考
    評論家 宇野常寛
第七章 ヒップホップの歴史、日本の音楽業界の将来
    ヒップホップアーティスト Kダブシャイン
第八章 アクセス総数四〇〇〇万超!「バイリンガール英会話」
    吉田正樹×ユーチューバー 吉田ちか

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