2015年6月14日

『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』トッド・カシュダン、ロバート・ビスワス=ディーナー・著 vol.3981

【「幸福」を追い求めるとなぜまずいか】
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最近、アメリカでは「ポジティブ心理学」や「マインドフルネス」が流行し、日本にもその影響が及んでいます。

一方で、ベストセラーの売れ行きからもわかるように、「怒り」や「不安」「罪悪感」は、まるで悪のように扱われています。

流行りの思想や教育法は、結果が出るまでタイムラグがあるので、いつも時代も疑ってみる方が良い。

やみくもな規制緩和やゆとり教育が、いかにこの国の経済や社会に影を落としているか理解すれば、現在の「幸福礼賛」にも警鐘を鳴らすべきだと気づくでしょう。

本日ご紹介する一冊は、幸福学研究で知られるトッド・カシュダン、ロバート・ビスワス=ディーナーの2名が、幸福を求めることの問題点やポジティブ感情の落とし穴に言及し、ポジティブ/ネガティブ両方の感情をバランス良く利用する「ホールネス」の重要性を説いた論考。

「幸せ」重視で仕事や家庭、子育てを考えていた人にとっては、衝撃的な事実が並んでいます。

幸福を追い求めてかえって不幸になったり、子育てで失敗しないために、ぜひポイントをチェックしておいてください。

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不快感に耐える能力が大事なのは、キャンプ上手になるためでも、立派な兵士になるためでもない。そういう能力を身につけた人は強く、賢く、精神の働きが敏捷になる。それに何よりも、少々のことではびくともしない強固な幸福感を持てるようになる

幸福を追求することが大事だと考えている人たちは、そうでない人より寂しさを感じることが多い(カリフォルニア大学バークレー校アイリス・モースの研究)

生活が快適になればなるほど、不都合だと思える出来事に対して、こらえ性がなくなる

痛みを伴う思考、感情、感覚、記憶などを、紛らしたり避けたりするよりも、自分には「心の不快感に耐える能力」があると気づく方がずっといい

親は皆、試練やフラストレーションや失敗が子どもの「知的成長」を促すと信じているのだが、それらが「心の成長」にとっても有益であることがわからないようだ

クイーンズ大学のケイト・ハークネスの研究によれば、憂うつな気分になりやすい人は、細かい点に気がつく傾向があるという。人の表情を読み取る能力などは、特に高い

怒りの感情は創造性のひらめきを生じさせる

恥をかかせればかかせるほど、その人の不安と攻撃性は増大し、周囲から孤立していく。罰として恥をかかせるというのは、悲惨な逆効果を生み、やめさせようとする行動をかえって助長することになる。相手に改心させたいのであれば、辱めるのではなく「罪悪感」を持たせるべきだ

幸せな人たちは考えることをおっくうがるため、ストレスのかかる状況では、ステレオタイプの考え方に頼りがち

音楽を手段にして幸福感を得ようとした人たち(1)に比べ、ただ普通に聴いた人(2)の方が、ストラヴィンスキーの心地よいバイオリン音楽によって、4.5倍も多く幸福感を覚えた

創造性を必要とする仕事の場合には、幸福感を表わすリーダーの下での作業は、幸福感を表わさないリーダーの下での作業より2倍成果が上がった。一方で、分析的な仕事の場合は、リーダーが悲しみを表した場合には、そうでない場合よりも4倍成果が上がった

創造的であるためには、「こうでなくてはならない」という思い込みに挑戦する必要がある。ナルシシストは、自分だけは特別だと思っており、壮大な幻想を持っているので、アイデアが世間的に見て適正かどうかということに関心がない

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読んでいて感じたことは、感情に良いも悪いもない、人間に良い人も悪い人もいない、すべては使いようなのだ、ということ。

個人に当てはめて言うと、人生の正の部分も負の部分も等しく受け止めて対処できる人が、結局はうまくいくのです。

ビジネスや仕事選び、教育に必要な視点も入っているので、ぜひ読んでみてください。

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『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』トッド・カシュダン、ロバート・ビスワス=ディーナー・著
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◆目次◆

イントロダクション どんな感情にも意味がある
第1章 幸福を求めるほど不安になるのはなぜ?
第2章 快適な生活がもたらしたもの
第3章 嫌な気分にはメリットがある
第4章 ポジティブな感情には落とし穴がある
第5章 マインドフルネスにとらわれるな
第6章 ネガティブな感情を反転する
第7章 ありのままの自分とつきあう

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