2015年3月12日

『ザ・ラストマン』川村隆・著 vol.3887

【HITACHI復活の立役者、哲学を語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041023629

本日の一冊は、グループ会社から異例の抜擢で日立製作所本体の社長に就任、7873億円の赤字から奇跡の復活を成し遂げた、川村隆さんによる一冊。

タイトルになっている『ザ・ラストマン』とは、著者が30代の頃、後に日立製作所副社長に就任する綿森力氏(当時日立工場長)に教えられた言葉で、綿森氏はこうおっしゃったそうです。

「この工場が沈むときが来たら、君たちは先に船を降りろ。それを見届けてから、オレはこの窓を蹴破って飛び降りる。それがラストマンだ」

最後に責任を取る人。著者自身がラストマンとなって日立製作所の社長を引き受けたのは、じつは1999年に起こったハイジャック事件がきっかけでした。

全日空61便ハイジャック事件──機長が犯人に首を刺され、亡くなった痛ましい事件ですが、著者は何とこの飛行機に乗っていたのだそうです。

二階のコックピットに刃物を持った青年が押し入り、副操縦士は追い出され、機体が急降下。そんな時、たまたま非番で乗り合わせたパイロットの山内純二さんが陣頭指揮をとり、操縦桿を奪い返しました。

著者はこの事件に遭遇して、<緊急時にこそラストマンになることが必要である>と悟ったようです。

本書には、日立製作所の「ラストマン」となった著者の覚悟と哲学、そして再生ノウハウがまとめられています。

・意思決定をする人数を絞る
・出血を止める
・キャッシュを生む事業を見つける
・戦術は変えても戦略を変えてはいけない

「沈みかけている会社」を立て直すためのポイントや手順がまとめられており、じつに勉強になりました。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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一人ひとりが「ラストマン」として働いていくことの先に、より良い結果が待っている可能性が高い

飛行機が落ちそうになっているときに駆けつけて、身体を張って守った非番のパイロット。それが組織に勤める者の覚悟であり、責任ではないでしょうか。そして、「一度はなくしたも同然の命。一生に一度は大きな組織を動かす意思決定者になるのもいいのではないか」と思ったのです

一人ひとりが、会社から給料をもらうだけではなく、「自分がみんなの給料を稼ぐ」という意識を持てるようになれば、会社は再生できるはず

どんな改革であっても、必ず反対勢力や抵抗勢力は出てきます。それが痛みを伴う改革であるなら、なおさらです。決断して実行するまでに時間がかかると、その反対勢力に根回しをされ、改革を断念せざるを得ない状況に追い込まれる場合もある

意思決定者を少なくすると「結論が尖る」

どんな企業であっても、再生するための原則は次の二つです。
・出血を止める
・キャッシュを生む事業を見つける

日本において中流には、あまり明るい未来はない

「普段の製品と違って、株には保証書がない。私は保証書のない製品を初めて売ったのです。多くの投資家の皆さんは日立を信じて買ってくれた。これから私たちは、その期待に応えていかなくてはなりません」(著者が世界各地のメンバーに語った言葉)

「自分の目」以外の客観的な評価を知っておかないと、何をどう直せばいいのかがわからない

◆江戸時代の禅僧鈴木正三が挙げた「指導者が備えるべき能力」
1.先見の明がある
2.時代の流れを的確に読める
3.人の心をつかむことができる
4.気遣いができて人徳のある
5.自己の属している共同体、組織全体について構想を持っている
6.大所高所から全体が見渡せる力量を持っている
7.上に立つにふさわしい言葉遣いや態度が保てる

頂上をちょっと越えたときが、仕舞うことを考え始めるタイミング

「未来を話す」時間を持とう

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『ザ・ラストマン』川村隆・著 角川書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041023629

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◆目次◆

序 章 「自分の後ろには、もう誰もいない」
     ザ・ラストマン─「この覚悟」を持っていますか
第1章 大事なときに「何を決めるか」「どう決めるか」
    リーダーに求められていること
第2章 「きちんと稼ぐ」ための思考習慣
    「独りよがり」にならないために
第3章 意思決定から実行までの「シンプルな手順」
    自信をもってビジネスをするために
第4章 いつも前向きに「自分を磨く」人
    自分を鍛える、部下を鍛える
第5章 「慎重に楽観して」行動する9カ条
    成果を丁寧に出すための羅針盤
第6章 私たち日本人に必要な「意識」とは何か
    グローバル感覚とダイバーシティ

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