2014年12月31日

『アジア・シフトのすすめ』田村耕太郎・著 vol.3816

【2015年こそ、アジア・シフト】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569820956

今日で2014年も最後。

2015年以降は、いよいよ日本もアジア・シフトということで、田村耕太郎氏の『アジア・シフトのすすめ』をご紹介。

著者は、元参議院議員で、日本戦略情報機構(シンガポール法人)CEO。国立シンガポール大学リークアンユー公共政策大学院兼任教授も務める人物です。

本書では、2014年7月にシンガポールに居を移したという著者が、アジア各国の首脳や経済エリート、現地で活躍する日本人起業家などから聞いた話がまとめられています。

教育に関するコメントは、著者が当事者ということもあり、差し引いて受け取る必要がありますが、日本人のアジアに対する認識の間違い、そしてアジアに秘められたチャンスに気づく、良いきっかけとなる本だと思います。

日本の先行き不透明感や、アジアが世界のGDPの過半を占めるようになるという予測など、人口に膾炙した話もありますが、日本人起業家が少ないカンボジア、新大統領の登場で盛り上がるインドネシア、冷たいものを運ぶ物流網がないインドなど、アジア各国への進出のチャンスが紹介されており、興味深く読むことができました。

また、著者が元政治家ということで、各国の政権の見方についても良い勉強になります。

キャリア指南書・自己啓発書としても参考になる内容で、なかでもシンガポールの現地紙「ザ・ストレーツ・タイムズ」に載っていたというリーカーシン氏の「お金持ちになる技術」に関する文章は、インパクトがありました。

「貧しい時は他人にお金を使いなさい。お金に余裕ができたら自分に投資しなさい」

「お金がない時は、外に出て、うまく人に使われるようにしなさい。お金ができたら、自分を大事にして、他人に簡単に使われないようにしなさい」

「人にディナーをおごる時は、自分より大きな夢がある人か自分よりよく働く人に限りなさい。生活に困らなくなったら、お金は自分の夢に使いなさい。羽を広げて夢を追いなさい」

今後、日本人がアジアのエリートと戦うために必要なものは何か、教えてくれる一冊だと思います。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「頭数がものを言う時代」の再来

私は、これから長期的には「世界各国の一人当たりGDPは“平均”に近づいていく」という仮説を立てている

インドにはコールドチェーンがない。冷たいままものを運ぶという概念がないのだ

最低賃金法がないシンガポールや香港では、需要と供給でメイドの報酬が決まるが、それは日本円で月額四万円くらいが中央値といわれる。一方で、日本では国内の最低賃金が適応されるので、標準的な報酬で一五万~一六万円の月額となる

大量の資源エネルギーを消費しながら成長し続ける中国に、インドネシアはその豊富な石油、天然ガス、石炭や希少金属を提供

若いうちに、急成長するアジアで日本円以外の収入源をもっておくほうがリスクヘッジになります(トライアジアグループ横井朋幸氏)

シンガポールのビジネスエリートは、次の三つの国の人脈と情報をおさえることに腐心しているようだ。中国、インドネシア、マレーシア。ここにどれだけ深く多彩なネットワークをもっているかで、ビジネスの成否が決まる

「誰にも、世界を正確に読むことはできない。だがその中で、君らはリーダーとして国家や世界の未来を切り開いていかねばならない。だとしたらどうすべきか? ──失敗を恐れないことしかない」(国立シンガポール大学リークアンユー公共政策大学院 マブバニ学長)

本当に使えるネットワークは、本番の交渉の場面だけではなかなかできない。彼らのように役所を離れて、学校に行って机を並べているときにできるのだと思う

たとえオンラインであっても、学生はスティグリッツ教授のような人から直接学ぶべき

東京で行われている「東京の力を弱めよう」とのアホな議論は早くやめさせないといけない。東京を強くして東京が稼がないと地方に払う交付税も稼げないし、現時点での世界ナンバーワンのメガシテ
ィ東京の魅力をここから落としたら、アジアで勃興し始めている多数のメガシティとの競争に勝てない

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『アジア・シフトのすすめ』田村耕太郎・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569820956

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◆目次◆

第1章 パラダイスの終わり
第2章 世界の中心が変わる
第3章 「これまでのアジア」は、もうない
第4章 世界最強国家シンガポールの光と影
第5章 今、日本の岐路に何を思い、何をする

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