2014年10月22日

『なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?』ティル・レネベルク・著 vol.3746

【これは名著だ。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4772695427

みなさんは、体内時計(生物時計)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

そう、一日は24時間ですが、じつはわれわれ人間の多くは、この24時間よりも長い体内時計を持っていて、光を浴びることで、このズレを調整しています。

問題は、この体内時計には個人差、年齢差があり、タイプによって生産性が大きく違ってきてしまう、ということです。

本日ご紹介する一冊は、この体内時計の秘密について、ミュンヘン大学の医療心理学研究所教授、「時間生物学」センターの主任であるティル・レネベルクが解説した一冊。

英国医療協会の「年間ベストブック」にも選ばれた本で、学術書ながら軽快に読める、貴重な一冊となっています。

興味深いのは、人間には明らかに「朝型」「夜型」があって、早い始業時間は夜型に不利に働き、遅くまで飲み会をやると朝型は翌日、悪影響が出るという話(朝型の人は翌日遅くまで眠ることができない)。

著者によると、現代社会においては、どんどん夜型の人が増えてきていて、早い始業時間にはデメリットが多い。

また、ティーンエージャーはもともと夜型が多いため、彼らに早い始業時間を課すのはどうも現実的ではなさそうです。

最近の研究では、<学校の始業時間が一時間遅くなれば、毎晩、少なくとも八時間眠れる生徒の割合が、三五・七パーセントから五〇パーセントに跳ね上がる>のだそうです。

また、グローバル化に伴い海外出張も増えていますが、これに関しても面白い視点が示されています。

<ほとんどの人は、西に向かって飛んだときのほうが楽に適応できる。西へ行ったときは内的な一日を伸長して適応するが、もともとそれは二四時間より長いのだ。一方、反対方向に移動するとき、(特に夜型のクロノタイプの人にとって)調整はもっと難しくなる。西から東に向かうとき、すばやく楽に適応できるのは、極端な朝型の人だけだ>

また、

<社会的時差ぼけがひどい人は、喫煙者である確率が高い>
<シフトワーカーの間では、定時勤務の労働者より健康問題が多く生じる>

など、仕事や制度を考える上で参考になる情報がいくつも載っています。

適職や制度を考える上で、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人のクロノタイプを判断するのに最も適しているのは睡眠の中央時刻であることがわかった

ほとんどの老人は外出する機会がなく、テレビから光を浴びるだけというケースが多い。その結果、体内時計がうまく同調しなくなる

幼い子供は比較的、早起きで(若い親にとっては頭痛の種)、しだいに遅くなる。思春期から青春期に向かって夜更かしになり、二〇歳前後でターニングポイントを迎え、その後はふたたび早く起きるようになって、それがずっと続く。平均すると、女性はこのターニングポイントに達するのが一九歳半で、男性が再び早起きになるのは二一歳だ

早起きタイプは睡眠をとれなかったあと、夜更かしタイプのように、“朝寝坊”ができない

たしかに朝型でも、長い時間眠らず集中力を保って仕事をする人もいる。しかしそれができるのは、圧倒的に夜型に多い

いまや人口の六〇パーセントをはるかに超える人が、学校が始まる朝の早い時間帯には、勉強や仕事に完全に集中できていない

ティーンエージャーには八時間から一〇時間の睡眠が必要だが、学校のある日にはじゅうぶんな睡眠がとれない。最近の研究では、学校の始業時間が一時間遅くなれば、毎晩、少なくとも八時間眠れる生徒の割合が、三五・七パーセントから五〇パーセントに跳ね上がるという

クロノタイプが極端な朝型の人の一日は、とても短いということになる。そのような人だけが天王星や海王星の一日(それぞれ一七・七三時間と一八・二時間)の一日に同調できるというのはそのためだ

ほとんどの人は、西に向かって飛んだときのほうが楽に適応できる。西へ行ったときは内的な一日を伸長して適応するが、もともとそれは二四時間より長いのだ。一方、反対方向に移動するとき、(特に夜型のクロノタイプの人にとって)調整はもっと難しくなる。西から東に向かうとき、すばやく楽に適応できるのは、極端な朝型の人だけだ

社会的時差ぼけがひどい人は、喫煙者である確率が高い(中略)一日の内部時間と外部時間の差が一時間未満の人では、喫煙する人の割合は一五から二〇パーセントだ。差が五時間以上になると、これが六〇パーセントを超える

昼間の強い光を浴びるほど(そして夜にはあまり光を浴びない)、私たちは朝型になるのだ

一日二時間以上を外で過ごすと、クロノタイプは約一時間早くなる

近代社会において、体内時計へのわかりやすい脅威は、交代制勤務(シフトワーク)である(中略)数十年間にわたる疫学的研究によると、シフトワーカーの間では、定時勤務の労働者より健康問題が多く生じる傾向が示されている。たとえば睡眠障害、うつ、循環器系の病気、消化器官の問題、糖尿病や代謝障害、肥満などだ

若い夫婦のほうが年配の夫婦よりもクロノタイプが一致している可能性が高い

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『なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?』ティル・レネベルク・著 インターシフト
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◆目次◆

第1章 クロノタイプが好・不調の鍵を握る
第2章 早起きは三文の得なのか
第3章 ひどく疲れているのに眠れないわけ
第4章 オジギソウの眠りの秘密
第5章 なぜ体内時計は正確ではないのか
第6章 光は体内時計をどう同調させるか
第7章 異常なリズムの原因はなに?
第8章 一日のリズムを生む多くの仕組み
第9章 遺伝子を活性化するスイッチ
第10章 変化する環境で生き抜くために
第11章 暗くなるまで待って
第12章 若者が夜更かしをするわけ
第13章 学校の始業時間を遅くせよ!
第14章 他の惑星で暮らしてみたら
第15章 私の内臓はいつ到着するんだ?
第16章 社会的時差ぼけ
第17章 文化か、自然か
第18章 都市の暮らしが体内時計を変える
第19章 夏時間に体は適応できるのか
第20章 シフトワークが、がんの原因?
第21章 男と女のクロノタイプ
第22章 季節のリズムと心身の調子
第23章 睡眠と性格・行動・職業選択
第24章 進化における大きな役割

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