2014年9月6日

『「知」の読書術』佐藤優・著 vol.3700

【祝・3700号】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797672757

本日の一冊は、元外務省主任分析官で、ベストセラー作家、読書家としても知られる佐藤優さんが、「国家」や「資本主義」の本質、そしてそれらが今後、どこへ向かうのか、読書で読み解こうとした一冊。

エリック・ホブズボーム『20世紀の歴史』による時代区分や、エルンスト・トレルチ『ルネサンスと宗教改革』が説いた近代の出発点(ウェストファリア条約)、レーニン『帝国主義』にまとめられた「帝国主義発展の定義」などを紹介しながら、近代主権国家の原理や、それが必然的にたどる道筋、現在のわれわれが置かれた状況を説明しており、今後何が起こるのか、予期する上で参考になります。

また、『独裁者のためのハンドブック』から引用した「独裁を成功させる五つのルール」や、トロツキーが唱える「反乱の技術」など、革命家にとって実用性のある内容であることには驚きました。

◆独裁を成功させる五つのルール
ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
ルール3 歳入をコントロールせよ
ルール4 盟友には、忠誠を保つに足る分だけ見返りを与えよ
ルール5 庶民の暮らしを良くするために、盟友の分け前をピンハネするな

◆トロツキーが唱える反乱の技術
「都市のインフラや通信ネットワークを暴力的に押さえてしまえば、国家権力は奪取できる」

読書術に関する記述は少ないのですが、<「紙の本と同じ本を電子書籍で読む」──つまり「二冊目」を電子書籍で買う>といった話や、<ラフカディオ・ハーンの英文は、教養人・知識人の英語のベーシック>といった話は、参考になりました。

われわれが所属している「国家」とは一体何なのか、それがどこに向かうのか、見極める上で、有用な一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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一九一四年のオーストリア皇太子暗殺事件をもたらした直接の原因は、ナショナリズム(民族主義)という思想です。ウェストファリア条約によって宗教対立は解消しましたが、その一方で新しい火種がつくり出されました。それが「国民国家」という思想であり、「民族自決」というドグマです

過去の歴史を検証する上で、ホブズボームのように時代を「意味の固まり」として捉える見方は非常に重要です。一九世紀、二〇世紀という区分に囚われていると、時代の本当の姿を見誤ってしまいます

ホブズボームは、グローバル経済が国家と制度を解体していくなか、「知的な無力感」が「絶望的な大衆感情」と結びついて、政治的に強い力となっていることにも危惧の念を抱いています

アメリカはヨーロッパと違って、二度の世界大戦を経てもまだ啓蒙の精神が盛んで、非合理な情念が人間を動かすという感覚をよくわかっていませんでした。そのため、啓蒙思想や合理的思考がもたらす負の帰結に対して洞察が働かず、問題が先送りにされてしまいました

ルカーチは、「資本主義にどっぷりと浸かってそこから利益を得ている資本家は、資本主義のイデオロギーを認識することができない」と言います。それに対して、プロレタリアート(労働者)は、自分がどういう場所にいるかということをきちんと認識すること──階級意識に目覚めること──によって、資本主義のイデオロギー性を見破り、物象化を克服できるとしています

◆独裁を成功させる五つのルール(『独裁者のためのハンドブック』)
ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
ルール3 歳入をコントロールせよ
ルール4 盟友には、忠誠を保つに足る分だけ見返りを与えよ
ルール5 庶民の暮らしを良くするために、盟友の分け前をピンハネするな

トロツキーが唱える反乱の技術とは、「都市のインフラや通信ネットワークを暴力的に押さえてしまえば、国家権力は奪取できる」というものです

中間団体が壊れた国では、新自由主義によってアトム化した個人が国家に包摂されてしまいます。そうなると、国家の暴走に対する歯止めを失ってしまう。その手前で個人を包摂し、国家の暴走のストッパーともなる中間団体を再建することこそ、現代の最も重要な課題なのです

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『「知」の読書術』佐藤優・著 集英社インターナショナル
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797672757

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◆目次◆

第一部 「危機の時代」に備えよ
第一章 「世界大戦」は終わっていない
第二章 はたして「近代」は存在したのか
第三章 「動乱の時代」の必読書
第四章 「反知性主義」を超克せよ
第二部 「知のツール」の活用法
第五章 私が電子書籍を使うわけ
第六章 教養としてのインターネット
第七章 「知の英語」を身につけるには
第八章 現代に求められる知性とは何か

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