2014年8月30日

『逆転!強敵や逆境に勝てる秘密』マルコム・グラッドウェル・著 vol.3693

【グラッドウェルが語る、弱者が逆転する秘訣とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062185059

本日の一冊は、アメリカを代表する人気コラムニスト、マルコム・グラッドウェルが、「弱者が逆転する秘訣」を、歴史上の戦いや、著名人のエピソードとともに紹介した一冊。

羊飼いの少年ダビデが屈強なペリシテ人の大男ゴリアテを倒した話、アラビアのロレンスが遊牧民ベドウィンの集団を率いて、近代化された強大なオスマン軍をやっつけた話、小学校すら退学しかけた識字障害の少年が、ゴールドマン・サックスの社長になった話…。

グラッドウェルの流れるような文章でまとめられた、「小が大を倒す」エピソードは、読んでいて痛快です。

興味深かったのは、政治学者アイヴァン・アレグィン=トフトがはじきだしたという、大国と小国の紛争の勝敗表。

これを見れば、今苦しんでいる中小企業の経営者も、きっと勇気づけられるはずです。

<過去二〇〇年に起きた大国と小国の紛争の勝敗表をつくってみよう。人口および兵力に、少なくとも一〇倍の開きがあることが条件だ。(中略)正解を知ると、誰もが腰を抜かすにちがいない。政治学者アイヴァン・アレグィン=トフトがはじきだした結果は、七一・五パーセント。三分の一弱の戦いで、小国が勝利している>

大逆転の主役として登場する人物も、マーティン・ルーサー・キングや<アポロ13><ビューティフル・マインド>のプロデューサーのグレイザー、IKEA創業者のカンプラードなど、大物揃い。

「小が大を倒す」ための戦略と戦術、そして心構えが書かれており、じつに勉強になりました。

ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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強い相手と一線交える場合、かならずしも相手と同じ土俵で戦う必要はない。視点を変えて眺めてみると、相手は実際には「それほどでもない」ことがある。大事なのは自分の得意な戦法で戦うことだ

たしかにサロンは大きな池だが、そこで小魚以上の何かになることは難しかった。いっぽうピサロとモネは、小さな池で大きな魚になるほうがいいと考えていた(中略)彼らは一八七三年、無名の画家・彫刻家・版画家協会なる団体を設立して、展覧会を開催することにした。競争も審査員もメダルもない展覧会だ

大きな池では、トップクラスの人間以外はやる気を失うものだ

グレイザーが交渉術を身につけたのは、ボイスが聞く技術を習得したのと同じで、せっぱつまっていたからだ(中略)いまグレイザーはハリウッドの映画プロデューサーとして、三〇年間第一線で活躍している。手がけた作品は<スプラッシュ><アポロ13><ビューティフル・マインド><8 Mile>など多数。もし識字障害でなかったら、これほど成功しただろうか?

革新者に求められるのは、調和性というより、むしろ非調和性だ

鋭く対立する陣営の国と商売をするなんて、ほとんどの人が想像もしなかっただろう。裏切り者の烙印を押されかねないからだ。だがカンプラードはちがった。世間の評判などみじんも気に留めなかった。これが非調和性だ

「パリっとしたいでたちの男性がフロアを走ってきた。『ラガーディア空港に急いで行かないと。着いたら連絡する』と事務員に言っている。私はすかさず声をかけた──ラガーディアに行かれるんなら、タクシーに乗りあいしませんか。相手が『そうしましょう』と言ってくれたときは、やったと思ったね。金曜午後で道路は渋滞していたから、それから一時間、タクシーのなかで就職活動をしたよ」(中略)いまや彼は……ゴールドマン・サックスの社長だ

抜きさしならない状況をつくり、ブル・コナーの、えげつない手の内を世間にさらす──それがキングの指示だった。そのためにワイアット・ウォーカーが取った手段が、あの写真だ。両腕をたらして抵抗するそぶりも見せず、警察犬に噛みつかれる少年の写真である

「何が正しいか」という基準は、往々にして特権階級がよそ者を排除するときの言い訳だったりする。デビッド・ボイスに失うものは何もなく、だからこそ誰かが決めたルールを出しぬく自由があった

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『逆転!強敵や逆境に勝てる秘密』マルコム・グラッドウェル・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062185059

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◆目次◆

プロローグ ダビデとゴリアテ
羊飼いの少年はなぜ屈強な大男を倒せたか
第1部 不利は有利で、有利は不利
第1章 弱小チームが勝つには 相手と同じ戦略で戦う必要はない
第2章 貧しい家の子が勝つには 裕福な家庭の子にハングリー精神は宿るか
第3章 二流大学が勝つには
   「そこそこの大学の優等生」と「一流大のそこそこの学生」はどちらが有望か
第2部 望ましい困難
第4章 識字障害者が勝つには 逆境を逆手にとる戦略
第5章 親に先立たれた子が勝つには 不幸な体験がリモートミスに変わるとき
第6章 マイノリティの人種・民族が勝つには 公民権運動とトリックスターの関係
第3部 力の限界
第7章 精鋭の治安部隊に勝つには 正統性なき統治が失敗する理由
第8章 突然の悲劇に勝つには 「アメリカ史上最も壮大な刑法運用実験」の盲点
第9章 自分の運命に勝つには ナチスに抵抗をつづけたある牧師の生涯

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