2014年8月11日

『東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと』伊藤元重・著 vol.3674

【知的生産人への助言】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492045503

本日の一冊は、流通業に詳しい東京大学大学院経済学研究科教授の伊藤元重氏が、知的生産活動へのアドバイスを綴った一冊。

氏が読んできた本や、ハインツ・アーンド、チャールズ・キンドルバーガーといった経済学の重鎮から学んだことが、惜しげもなく披露されており、なかなか読み応えのある内容です。

知的生産のノウハウ本としては、梅棹忠夫先生の『知的生産の技術』などに及びませんが、著者の取材力、そしてそこから導き出される情報の質の高さには、舌を巻きます。

※参考:『知的生産の技術』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004150930

本書では、コジマ創業者の故小島勝平氏の話や、ゼニアの生産現場に行ってわかったこと、小島プレスの「提灯プレス」の秀逸さ、伊勢丹新宿店の「色」の仕掛けなど、氏の知的生産の「成果」が一部示されているのですが、これらがじつに面白い。

経営者、マーケターの目線から見ても「面白い」と思える情報を導く著者の手腕こそ、本書の最大の読みどころでしょう。

タイトルと内容がマッチしないのが残念ですが、ビジネス関連で知的生産に携わる方には、おすすめできる一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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不確実性の多い世界での戦略論でもう一つの重要なポイントが、基本原則を崩さないということだ。経済学ではこれをコミットメントという

ある人から、他人の論文の英語を真似することが、よい英文の論文を書く最短の方法であると言われた。別に論文の内容を盗むわけではない。英語を真似するだけである

「毎日一つ新しいことをやってみる」(コジマ創業者の故小島勝平氏)

差別化の一つの重要な特徴は、異質なものを組み合わせるということにある。経済学や経営学でシナジーと呼ばれる現象だ

日本の経済問題を議論するのに、皆が同じような新聞や資料を同じように読んで議論したのでは、つまらない議論しか出てこない

なぜ、ゼニアはこんなにゆったりとした生産が可能か。答えは簡単だった。ゼニアの客は、欧州と北米とアジアなどで、それぞれ3分の1ずつであるという。要するにグローバルな市場を相手に徹底した商品の絞り込みと、それなりの量の生産をしている。だから、細かい段取り替えに神経を削られるのではなく、ゆったりとした態勢で、本物の品質を追求したモノ作りができるのだ。日本の一宮ではこれができない

現場の人のこだわりを聞く

伊勢丹の新宿店は色を戦略的に利用しているという。1年間を10以上の期間に分け、それぞれの期間の基本色を設定するという。たとえば秋のある季節は紅葉の色を基本色としたとする。顧客の動線を考え、主要な動線の全面にその色に近い商品を並べるようにする

プロから直接話を聞くことは、最高の情報収集である。自分の頭を鍛えることにもつながる。しかし、プロの議論を鵜呑みにしてはいけない。自分の直感や疑問を大切にしなくてはいけない。プロが向きになって「素人はわかっていない」というときにこそ、プロにも見えていない大きな変化が起きている可能性があるのだ

ロールモデルを探せ

教育の質を高めるためには、クラスの生徒の数を減らせばよい

「研究者人生は三段ロケットのようなものと考えるべきだろう。人生の中で何回か古いロケットを切り離し、新しいロケットに点火する必要がある。そうした切り替えをしていくことで、一生、生産性を維持することができる」。森嶋先生はこんなような話をされた

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『東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと』伊藤元重・著 東洋経済新報社
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◆目次◆

序 章 人生にも戦略があっていい
第1章 「読む」「書く」「話す」力を鍛える
第2章 発想力を鍛える
第3章 効率を上げ、仕事の質を高める
第4章 現場からめいっぱい学ぶ
第5章 ロールモデルを探せ──私の20~30歳代

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