2014年7月9日

『イノベーションの最終解』クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス・著 vol.3641

【『イノベーションのジレンマ』シリーズ完結編】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798132314

以前、医院を経営している知人(秀才)が、これまでに読んだ経営の理論書でもっとも役立ったのは、クレイトン・M・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』だと言っていました。

※参考:『イノベーションのジレンマ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798100234

これには全面賛成で、とくに既存ビジネスに風穴を開けようとするベンチャーにとっては、本書以上に役立つ本はないといっていいでしょう。

本日ご紹介する一冊は、この名著『イノベーションのジレンマ』のシリーズ完結編となる一冊。

破壊的イノベーションの理論をまとめ、破壊的イノベーションが上手くいくのはどんな時か、かなり詳しく論じています。

また、格安航空会社やオンライン教育など、まさに進行しつつあるイノベーションの事例を論じ、うまくいくかどうか、著者独自の分析を加えています。

興味深かったのは、<非対称性の剣と盾をもった企業を探し出す>という視点。

つまり、イノベーション企業が、既存企業に対する攻撃力を持つのと同時に、既存企業が戦おうと思わない市場規模、ターゲット顧客、ビジネスモデルであることが重要だというのです。

著者はこれを<非対称な動機づけ>と呼んでいますが、参考までに本書のなかから、この<非対称な動機づけ>を生み出す要因を抜き出してみましょう。

◆非対称な動機づけを生み出す要因
1.事業機会の絶対的な規模
  中小企業には興味深く、大きく見える機会も、大企業にはつまらない
2.ターゲット顧客
  破壊的イノベーションは、既存企業にとって望ましくない顧客や、存在しないも同然の顧客から始まる
3.事業機会のビジネスモデル
  破壊的な新規参入企業は、既存企業が利益を上げる方法とはそぐわないビジネスモデルを用いる

大企業が見向きもしない小さなビジネスから始め、気がついたら世の中の主流になっている。

そんなビジネスを手掛けようと思う起業家には、ぜひおすすめしたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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変化のシグナルの質問に答えるには、次の三種類の顧客集団を評価する必要がある。
1.製品を消費していない顧客や、製品を不便な環境で消費している顧客(無消費者)
2.製品を消費しているが、ニーズが満たされていない顧客(満たされない顧客)
3.製品を消費しているが、ニーズが必要以上に満たされている顧客(過剰満足の顧客)

非対称性の剣と盾をもった企業を探し出す

◆非対称な動機づけを生み出す要因
1.事業機会の絶対的な規模
  中小企業には興味深く、大きく見える機会も、大企業にはつまらない
2.ターゲット顧客
  破壊的イノベーションは、既存企業にとって望ましくない顧客や、存在しないも同然の顧客から始まる
3.事業機会のビジネスモデル
  破壊的な新規参入企業は、既存企業が利益を上げる方法とはそぐわないビジネスモデルを用いる

エンブラエルとボンバルディアは、相対的に性能の限られた製品を発売することで、それまでジェット機の無消費者だった地域航空会社を獲得する方法を見つけた

ここで重要なのは、ジェットブルーなどの格安航空会社が、既存企業が反撃できないようなビジネスモデルをすでに構築しているかどうかだ。革張りのシートやディレクTVでは、十分とは言えない。
それらは資源に依存した強みであり、したがって簡単に模倣できる

◆破壊の輪を動かす6つの要因
1.人材市場:柔軟で起業家精神とリスク選好を促し、企業間の人材移動を可能にする人材市場の存在
2.資本市場:新規企業が立ち上がり、破壊的イノベーションの機会を追求しながら成長するのを助ける資本市場。負債による資金調達を促す資本市場政策は、破壊の輪の妨げになる
3.制約の少ない製品市場
4.破壊を支えるインフラ:適切な税制、企業の創設を促すインフラ、破壊のプロセスに「潤滑油」を供給する仲介機関
5.活気ある業界環境
6.研究開発

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『イノベーションの最終解』クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス・著 翔泳社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798132314

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◆目次◆

序 章
第一部 理論を分析に用いる方法
第一章 変化のシグナル──機会はどこにある?
第二章 競争のバトル──競合企業の経営状況を把握する
第三章 戦略的選択──重要な選択を見きわめる
第四章 イノベーションに影響を与える市場外の要因
第二部 理論に基づく分析の実例
第五章 破壊の学位──教育の未来
第六章 破壊が翼を広げる──航空の未来
第七章 ムーアの法則はどこへ向かうのか?──半導体の未来
第八章 肥大化した業界を治療する──医療の未来
第九章 海外のイノベーション──理論をもとに企業と国家の戦略を分析する
第一〇章 電線を切断する──通信の未来
終 章 結論──次に来るのは何か?
付 録 主要な概念のまとめ
用語集
解説 関西学院大学経営戦略研究科 教授 玉田俊平太
訳者あとがき

索引

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