2014年7月4日

『「自分」の壁』養老孟司・著 vol.3636

【これは読むべし。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106105764

本日の一冊は、大ベストセラー『バカの壁』以来の話題となってい
る、養老孟司氏の最新作。

※参考:『バカの壁』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106100037

「個性を伸ばせ」「自己を確立せよ」と強いる現在の社会や教育に対し、東京大学名誉教授が、さまざまな視点から「NO」を突きつける。

じつに刺激的な論考、かつ目からウロコの一冊です。

本書の中に出てくる話で印象的なのは、なぜ自分のツバなのに、飲めと言われたら嫌なのか。同様に、なぜ自分の小指を切り落としてネックレスにすることができないのか。

著者は本書で、こんな理由を挙げています。

<人間の脳、つまり意識は、「ここからここまでが自分だ」という自己の範囲を決めています。その範囲内のものは「えこひいき」する。ところが、それがいったん外に出ると、それまでの「えこひいき」分はなくなり、マイナスに転じてしまう。だから「ツバは汚い」と感じるようになるのです。もうお前は「自分」ではない、だから「えこひいき」はできない、ということです>

著者によると、<「自分」とは地図の中の現在位置の矢印程度>の存在に過ぎないのですが、われわれはそこに固執するあまり、さまざまな軋轢を生んでしまっている。

そんな偏狭な考え方を持つのではなく、「共生」という考えを持ったらどうか、というのが本書の提案です。

「自分の一生は自分だけのものだ」と考えるのではなく、親孝行を通じて「お前はお前だけのものじゃないよ」と説くのが昔の修身(道徳)の教えだった。

極端に「個」を主張することが、弊害を生んでいる現在にあって、この「共生」の思考は、じつに新しい。

「自分探し」ブームに終止符を打ってくれる、そんな一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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個性は放っておいても誰にでもあります。だから、この世の中で生きていくうえで大切なのは、「人といかに違うか」ではなくて、人と同じところを探すことです

自分が世界と一体化するということは、周りに敵や異物が一切ないということです(中略)だから至福の状態になるのです

人間の脳、つまり意識は、「ここからここまでが自分だ」という自己の範囲を決めています。その範囲内のものは「えこひいき」する。ところが、それがいったん外に出ると、それまでの「えこひいき」分はなくなり、マイナスに転じてしまう。だから「ツバは汚い」と感じるようになるのです。もうお前は「自分」ではない、だから「えこひいき」はできない、ということです

「自分」とは地図の中の現在位置の矢印程度

「個性を伸ばせ」「自己を確立せよ」といった教育は、若い人に無理を要求してきただけなのではないでしょうか。身の丈に合わないことを強いているのですから、結果が良くなるはずもありません。それよりは世間と折り合うことの大切さを教えたほうが、はるかにましではないでしょうか

一方で、私たちは共生の世界で育ってきたわけです。「自分」が先に立つことはなかった。だから日本人はアメリカ人よりも偉い、と言いたいわけではありません。私たちの社会は「一億総玉砕」という最悪の形を生んだこともあるのですから

「経済が成り立たない」で思考停止してはいけない

エネルギーについて真面目に考えるつもりならば、人にはどのくらいエネルギーが必要か、という根本の問題から考えないといけません

かつて日本人には「誕生日」がありませんでした

政治を見るときに大事なのは、人の能力をどう使っているかという点

日本人同士がお互いに信頼していた時代には、不信から生じるコストが低かった

日本が国際化することは、日本人がもっとウソつきになるということ

「そんなに言うならやってみな」近頃はこういう言い方をあまり聞かなくなりました

親孝行は、子どもに対して「お前はお前だけのものじゃないよ」ということを実は教えていた

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『「自分」の壁』養老孟司・著 新潮社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106105764

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◆目次◆

第1章 「自分」は矢印に過ぎない
第2章 ほんとうの自分は最後に残る
第3章 私の体は私だけのものではない
第4章 エネルギー問題は自分自身の問題
第5章 日本のシステムは生きている
第6章 絆には良し悪しがある
第7章 政治は現実を動かさない
第8章 「自分」以外の存在を意識する
第9章 あふれる情報に左右されないために
第10章 自信は「自分」で育てるもの

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