2014年6月8日

『長く稼ぐ会社だけがやっている「あたりまえ」の経営』岡本吏郎・著 vol.3610

【これからの節税の新常識?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894516209

本日の一冊は、ベストセラー『会社にお金が残らない本当の理由』の著者であり、経営コンサルタント/税理士の岡本吏郎さんが、会社経営の不変の「セオリー」を説いた一冊。

※参考:『会社にお金が残らない本当の理由』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894511576/

著者によると、ノウハウとは、「ノウハウ=メソッド+セオリー」のこと。

このうち、メソッドは適用時期や状況を選ぶものであり、セオリーは、“いつでも”“誰もが”適用できるもの。

これを取り違えると、経営は間違ってしまうわけですが、経営者は「自己都合」により、間違ったノウハウを適用してしまいがち。

ここ最近の経営を取り巻く環境と、実践が怪しい「ノウハウ」を取り上げ、現在経営者が考えるべき課題をまとめてくれたのが、本書『長く稼ぐ会社だけがやっている「あたりまえ」の経営』です。

著者は、最近、各業種がコア事業から離れ、周辺領域を拡大している状況を、こう分析しています。

<現在、各業種がコア事業から離れ、「周辺領域」を拡大しています(中略)「周辺領域」が拡大すると、業種を超えていろいろな企業が「周辺領域」に近接することになります。ですから、儲かる「周辺領域」には、多くの業種からの参入が必然になります>

この儲かる「周辺領域」のことを「プロフィットプール」と呼ぶのですが、この「プロフィットプール」を攻める戦略について、著者はこう述べています。

<「プロフィットプール」から少しだけ離れて、経済計算をやめてみれば、ライバルから見ると何でもない土地が肥沃に見えてくるケースはよくあります>

大きな声に惑わされず、長く稼ぐために堅実な手を打っていく。

読者がそう考えているなら、本書はきっと役に立つでしょう。

本書では、スキームとしての「兵站(へいたん)=人、金、モノ」のなかから、お金の兵站に絞って論じていきます。

ここで見えてくるのは、2012年~2015年に次々と改正される税法に伴い、これまでの「ザ・セオリー」が無効になること。

「ザ・セオリー」というのは、会社に利益を残すよりも役員報酬で取った方が税金が安くなる、ということですが、税制が改正されると、これが通用しなくなる、というのです。

実際の著者の言葉を引用して見て行きましょう。

<今までの節税法には前提がありました。それは、会社に利益を残すよりも役員報酬で取った方が税金が安いということに尽きるわけですが、それが税制の改正により限界的な適用しかできなくなってしまったのです>

詳しいシミュレーションは本書に譲りますが、確かにこれなら今後、役員報酬を抑えて企業に内部留保する中小企業が増えるかもしれません。

環境変化に対応することと、不変のセオリーをきっちり押さえていくこと。この2点の大切さを、本書は教えてくれています。

経営者は、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「都合の良いところだけ」に資源を集中した企業や歴史的人物の顛末は世の中にたくさんあります。ゼロックスが日本企業にシェアを奪われていった話は有名ですし、最近だと、P&Gがその呪縛で喘いでいます

つまらない映画だったら映画館からすぐに離れ、レストランでは一口で席を立ち、故障の多い車はさっさと売り、サービスがおかしいホテルでは、瞬時に立ち去る……。3階建て以上の鉄筋コンクリートの建物を建てても、お客が来なければ、すぐに方向転換をしなくてはいけません

現在、各業種がコア事業から離れ、「周辺領域」を拡大しています(中略)「周辺領域」が拡大すると、業種を超えていろいろな企業が「周辺領域」に近接することになります。ですから、儲かる「周辺領域」には、多くの業種からの参入が必然になります。そして、プレミアムコーヒーや宅配のように、儲かる「周辺領域」は、潜在的な利益も膨大です。こうした「周辺領域」のことを「プロフィットプール」と呼びます

「プロフィットプール」から少しだけ離れて、経済計算をやめてみれば、ライバルから見ると何でもない土地が肥沃に見えてくるケースはよくあります

セオリーは“いつでも”で“誰もが”です。
メソッドは、適用時期や状況を選びます

面白いのは、セオリーを無視したノウハウやセオリーの真逆のノウハウが、時々流行ってしまうことがあることです。例えば、ドラッカーが提示するセオリーの一つに、時間を作るために、人との付き合いを減らすというのがありますが、若い人たちの間では、「人脈を作る」ということが流行りましたし、今でもその傾向はSNSなどで友達を増やすという形で残っています

「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」

今までの節税法には前提がありました。それは、会社に利益を残すよりも役員報酬で取った方が税金が安いということに尽きるわけですが、それが税制の改正により限界的な適用しかできなくなってしまったのです

ドラッカーは、中規模の企業が持つ特有の問題の解決には、「解決方法は合併または買収による拡大しかない」とまで言い切ったわけですが、それでも21世紀に入っても中小企業がM&Aを行うことは、決して、戦略の一部として考えられているレベルにはありません

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『長く稼ぐ会社だけがやっている「あたりまえ」の経営』岡本吏郎・著 フォレスト出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894516209

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◆目次◆

contents1 “絵になる話”に踊らされる経営者
contents2 「運」と「実力」の相関関係
contents3 戦略を語らず、兵站を語る
contents4 スキームのためのシミュレーションを行なう
contents5 「準備」という概念
contents6 可能性とはなにか?

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