2014年3月28日

『晴れの日に、傘を売る。』 林秀信・著 vol.3538

【日本一の傘。その成功の秘密とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484142082

みなさんは、「water front」というブランドをご存じでしょうか?

名前だけでピンと来なくても、「かつてないほど細くて薄くてコンパクトな500円傘」と言えば、ピンと来るのではないでしょうか。

本日ご紹介する一冊は、このコンパクト傘で、傘市場のシェア日本一(17%)、年間販売数1870万本を誇る、シューズセレクション代表取締役社長、林秀信さんによる経営書です。

<ポケットに入るくらい小型で、いつでも携帯できる傘があれば、雨が降るかどうかをいちいち気にしなくてすみます>
<「万年筆くらいの大きさ」の「折り畳まない折り畳み傘」が、僕の目標>

と、志を語る著者ですが、じつはもともと自由が丘で大繁盛のスイーツ店「花時計」を経営しており、傘ビジネスは、それを投げ打ってでもやりたかったビジネスだそうです。

「24本骨の洋傘」で一躍有名になり、続いて「water front」で大ブレイク。

晴れの日でも買いたくなる豊富なカラーバリエーション、お土産用、ご当地傘と、用途を次々に開拓していくアイデアには、思わず舌を巻きます。

◆著者が作った「ご当地傘」の例
「富山サンダー」:重い雪に耐えられる丈夫な傘
「桜島ファイヤー」:降灰対策用の傘

経営に関しても、あえて莫大な在庫を持ち安定供給とコスト削減を実現する、単品ではなくアソートで納品するなど、ユニークな試みが紹介されており、良い刺激になります。
(元バイヤーとしては、在庫の持ち過ぎは気になりますが…)

以前ご紹介した『リ・インベンション』にも同様の話が出てきましたが、本書を読んでいると、ビジョンが明確なビジネスがいかに強いか、思い知らされます。
(同様に、『アイデア・ハンター』や『IKEAモデル』もおすすめです)

※参考:『リ・インベンション』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492533249/businessbookm-22/ref=nosim

※参考:『アイデア・ハンター』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453231822X/businessbookm-22/ref=nosim

※参考:『IKEAモデル』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4420310618/businessbookm-22/ref=nosim

次々に課題が浮かんできては、それを解決する。その過程でお客様を満足させ、利益を得、さらに再投資する…。

そういう意味で、このシューズセレクションは、ある意味理想の経営を実現できていると言っていいかもしれません。

見た目が薄くて、一見外しそうな本ですが、めくってみると、中身の骨はかなり頑丈。

まるで著者の作った傘のような、味のある一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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あくまで日本国内のお客様を対象に傘づくりをしていますから、海外の方にとっては、使い方の説明が充分でないことがあるかもしれません。思わぬトラブルにもなりかねないので、当社の傘には「日本国内限定発売」というタグを付けるようにしました。すると、思いもよらないことに、それが「日本でしか買えない」というアピールになったのです

小売店の要望もヒアリングしますが、基本的にはこちらでアソートしたものを納品しています。そのほうが、結果的に傘の“鮮度”を保つことができるからです。というのも、小売店が色を決めると、どうしても売れる色ばかり選んでしまいがちだからです

商談では、宿題をもらって帰るのではなく、相手に宿題を与えるようにしなさい

ランダムに行動することで見えてくることもある

街で120円で売られている飲料水は、山の頂上では200円とか300円とかで売られているでしょう。これが砂漠だったら、1000円でも1万円でも売れるかもしれません。それが、ふつうの値段(120円)よりも安かったら、お客様は感動する、びっくりする。僕は、そういうふうに驚かせることを、ずっと続けていきたいと思っています

浮利を追わず、企業努力で価格を下げる

人には、自分にできることとできないことがあります。僕のアイデアは傘に関するものだけ。神様は、そんなにたくさんの才能は与えてくれないのです

お客様の熱意に負けない工夫を

◆著者が研究中のアイデア
「サブマリン」:骨が骨に潜る
「リムジン」:2、3人が一緒に入ってもまだ余裕があるくらい大
きな傘。でも畳んだときには、ほかの傘と同じくらい小さくなる

これまで低価格にこだわっていたためにやれなかったことを、今後はやっていこう

最初はだれもが驚いたのに、そのうちそれがスタンダードになって、最終的には、みんながそれを当たり前のように使っているーーそういう傘をつくりたいのです

傘も、そこに施されている工夫が外からはわからない傘が、「粋な傘」なのかもしれません

新しい何かを手に入れたいとき、いま自分が執着しているものを手放さないと、それを手に入れることはできません

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『晴れの日に、傘を売る。』林秀信・著 阪急コミュニケーションズ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484142082

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◆目次◆

晴れの日でも売れる傘
「シェア17%」の秘密
「いい傘を500円で」
小売店とともに
晴れの日に傘を売る
傘の黒澤プロダクション
工場あってのメーカー
プロ集団としての会社
「良品薄利」の経営
唯一の才能、それが「傘づくり」
終わらない改良
究極の傘をめざして
もっと新しい驚きを
傘のことだけ考えて生きる
仕事に浪漫を!
生涯、一所懸命

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