2014年2月17日

『楽観主義者の未来予測(上)(下)』 ピーター・H・ディアマンディス、 スティーヴン・コトラー・著 vol.3499

【未来が見える名著】
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本日の一冊は、現在の世界が抱える問題と、それを解決するであろうテクノロジーを、一挙に紹介・解説した「超」刺激的な一冊。

著者は、MITで分子生物学および航空工学の学位を、ハーバードメディカルスクールで医学の学位を取得した秀才で、ホーキング博士の無重力体験をアシストした人物。

10を超える宇宙・ハイテク関連の会社を立ち上げた起業家でもあり、本書には、まばゆいばかりの未来が描かれています。

著者が冒頭で描き出すのは、先進国から途上国まで、世界中のあらゆる国々が「健康」と「自由」を手に入れられる「潤沢な世界」。

グローバル化した今日の世界では、<発展途上国で基本的な身体的欲求に応えることは、先進国の生活の質を高めることにもなる>ということで、どうすればわれわれが途上国の豊かさを支援できるか、具体的な方策とテクノロジーを紹介しています。

ざっとピックアップしただけでも、世界にはこんな問題が横たわっています。

・二〇五〇年には人口は一〇〇億人に近づく
・世界の入院件数の半分は、病原体や有害化学物質で汚れた水や、放射線障害の危険のある水を飲んだことが原因
・急性上気道感染症[訳注:風邪や急性咽頭炎・扁桃炎など]の三六パーセント、慢性閉塞性肺疾患の二二パーセント、そしてすべてのがんの一・五パーセントが、バイオマス燃料の使用による室内空気の汚染が原因
・水道代の四分の三が、排泄物を回収し、下水処理施設を稼働させる費用として使われている
・発展途上国世界では、金融サービスを利用できない人が二十七億人にのぼる
・老化による白内障は世界の失明原因の第一位

本書には、これらを解決するための先端研究、テクノロジーが紹介されているわけですが、これがすごい。

希代の起業家・発明家であるディーン・ケーメンが作った、ヘアドライヤー一台分の電力で1日に1000リットルの水を精製できる、「スリングショット」という装置、ゲイツ財団が真剣に取り組んでいる、水を無駄にしないトイレシステム、既にスウェーデンの企業が始めているという都市部での垂直農場プロジェクト、環境にダメージを与える放牧をなくし、タンパク質を提供できる培養肉…。

世界を豊かにするためのあらゆるテクノロジーと、それを手掛ける企業、人物が登場し、ビジネスや投資にも役立つ内容となっています。

われわれがこれから何に取り組めばよいか、どこにビジネスの種があるか、すべて一覧で見せてくれる、未来へのガイドブックです。

これは絶対にチェックしたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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歴史をふりかえれば、かつては珍しかった資源が、イノベーションによって豊富に得られるようになった話はいくらでもある。その理由は非常に単純である。希少性という性質は、状況によって左右されることが多いのだ

アブダビ郊外の、石油精製所や空港のさらに先に位置するマスダール・シティには近い将来、五万人が住み、四万人が働くことが計画されているが、そうするにあたって、廃棄物や二酸化炭素は一切排出されないことになっている

基本的な生存の欲求が満たされれば、「潤沢のピラミッド」の次の段階にあるのは、エネルギー、教育、そして情報・通信である(中略)エネルギーは労働の手段を提供し、教育は労働者の「専門化」を可能にする。そして潤沢な情報・通信は、(教育機会の拡大を通じて)「専門化」をさらに進めるだけでなく、専門家が専門性を「交換」することを可能にし、ひいては経済学者のフリードリヒ・ハイエクが「カタラクシー」と呼ぶものを生み出す、というわけだ。カタラクシーとは、分業が生む無限の可能性のことである

トイレをどのように改良できるか考えてみよう。インフラストラクチャーを必要としないトイレはどうだろうか。床下に配管はなく、芝生の下に汚水処理槽もなく、通りに下水道が埋設されていることもない。そうしたハイテクトイレでは、排泄物を粉末化して焼却し、尿は蒸発させる。その過程ですべてを無菌化するようになっている。このトイレでは、何かを無駄遣いするのではなく、むしろ還元するようになっている。数袋の尿素(肥料に使える)、食卓塩、大量の真水、そして必要なら、用を足しているあいだに携帯電話を充電できるくらいの電力が得られるのだ

スウェーデン企業のプランタゴンはすでに、スウェーデン国内で二カ所、中国で二カ所、シンガポールで一カ所の計五カ所で垂直農場プロジェクトを進めている

安価なドローン(無人飛行機)を使えば、モンスーンの洪水で道路が水没してしまうバングラデシュや、そもそも道路が存在しないボツワナといった場所に、必需品を空輸することができる

サドウェイ(固体化学の世界的権威、MIT教授)はこう語る。「現在作動中の液体金属電池のプロトタイプは、アイスホッケーのパックくらいの大きさで、二〇ワット時のエネルギーを貯蔵できますが、それより大きなユニットも開発中です。大型冷凍庫サイズの装置では、三〇キロワット時のエネルギーが貯蔵できますが、これは家庭での一日分の電気をまかなうのに十分な量です」

今後、幹細胞、組織工学、3Dプリンティングという三つのテクノロジーが一つになれば、医療の潤沢を実現できるだけの、非常に強い能力をすぐに得られるでしょう

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『楽観主義者の未来予測(上)(下)』ピーター・H・ディアマンディス、スティーヴン・コトラー・著 早川書房
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◆目次◆

第1部 全体像
第2部 指数関数的テクノロジー
第3部 ピラミッドの底部を作る
第4部 潤沢な世界を実現する力
第5部 ピラミッドの頂点
第6部 もっと速く進むために


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