2014年2月7日

『森を見る力』 橘川幸夫・著 vol.3489

【橘川幸夫氏が示す、未来の情報社会の見取り図は?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794968388

本日の一冊は、音楽雑誌「ロッキング・オン」や、全面投稿雑誌「ポンプ」など、さまざまなメディアを創刊・開発してきた橘川幸夫さんが、これからの情報社会の見取り図を示した一冊。

タイトルの『森を見る力』とは、「木を見て森を見ず」というところの「森」を見る力を指しており、著者の言葉を借りれば、<枝や根っこから、出来るだけ遠くの地点から、現在の自分を見る力のこと>。

この『森を見る力』をもって、未来の情報社会を見通すと、一体どうなるか。これこそが、本書の最大の読みどころです。

戦後、われわれの社会がどういった原理で発展・成熟してきたか、その本質を述べた後で、今起こりつつある構造変化を説く。

その慧眼には、本当に頭が下がります。

いくつか、気になった部分を引用してみましょう。

<ここ10年近くで露出した「不祥事」は、社会が成長する過程に生まれる権力と民間の癒着というものではなく、完成させた組織そのものの腐敗によって、組織の構成員である個人が組織を食い物にするという種類のものが多いように思う>

<家電業界が流通の下請けになっていったように、玩具業界も著作権ビジネスの下請けになっていったのだろう>

<書店の生きる道としては、「書籍や雑誌を販売することによって多様な人たちが集まる」ということが一つの可能性になるのかも知れない>

また、今後の情報ビジネスのヒントとしては、

<インターネットは、最終的には、ひとりひとりを結ぶP2P(Peer to Peer)の方向に進んでいる>

<これからの社会においては、人は何かしらの「生産」に関与しないと生きていけなくなる>

<インターネットの世界では、発信者負担が原則>

など、ちょっと気の利いた人間が読めば、たちまちビジネスチャンスに変わる言葉が散りばめられています。

われわれの社会を俯瞰する上で、また今後のビジネスヒントをつかむために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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すでに僕たちは、自分の経験ですら、無用のものにしつつあるのではないか。経験から学ぶ者が愚か者であるとするなら、愚か者にすらなれなくなっている自分を感じる

日本社会は、あらゆるリスクに対応するために、さまざまな「防潮堤」を築きあげようとしている。そのためには、膨大な国家予算が必要になるという。その結果、本当の危機を感じなくなるような人間を育ててしまったら、本末転倒である

誰も信じていないことを狂信しなければ就職が出来ないという、残酷なまでのプロセスを、人間の生涯にとって最も重要な年代だと思われる20歳前後の時期に要求する社会は、どこかおかしい

(団塊世代は)既存のビジネス領域と競争して新事業を始めるのではなく、これからの社会にとって必要だがあまり儲からない仕事というテーマを探しだすべきだし、行政もそうした事業支援を行うべきだ

ここ10年近くで露出した「不祥事」は、社会が成長する過程に生まれる権力と民間の癒着というものではなく、完成させた組織そのものの腐敗によって、組織の構成員である個人が組織を食い物にするという種類のものが多いように思う

家電業界が流通の下請けになっていったように、玩具業界も著作権ビジネスの下請けになっていったのだろう

書店の生きる道としては、「書籍や雑誌を販売することによって多様な人たちが集まる」ということが一つの可能性になるのかも知れない

インターネットとは、1対nの放送と、1対1の通信の構造が合体しているところに意味がある

(ジョブズは)アルバムを発表するようにビジネスを展開した

インターネットは、最終的には、ひとりひとりを結ぶP2P(Peer to Peer)の方向に進んでいる

つまり、これからの社会においては、人は何かしらの「生産」に関与しないと生きていけなくなるのではないか

インターネットの世界では、発信者負担が原則である

池上彰は「まとめサイト」だ

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『森を見る力』橘川幸夫・著 晶文社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794968388

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◆目次◆

序章 森を見る力
森を見る力1
森を見る力2
第一章 戦後社会の中で変質したものは何か
第二章 不安定な時代のアイデンティティ
第三章 メディアの現在
第四章 インターネットが何をしたか
第五章 3・11以後の社会
あとがき 追悼・林雄二郎さん

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