2014年2月28日

『期待バブル崩壊』 野口悠紀雄・著 vol.3510

【アベノミクスの今後は?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478027323


株価が一進一退するなか、今後、アベノミクスがどういう方向に進むのか、気になっている方は多いのではないでしょうか。

本日ご紹介する一冊は、大蔵省を経て、エール大学でPh.D.を取得、一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任し、現在は早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授を務める野口悠紀雄氏が、アベノミクスのこれまでとこれからを論じた一冊。

『期待バブル崩壊』というタイトルが示しているように、アベノミクスのこれまでを、「かりそめの経済効果」「空回り」と断じ、資産価格を上昇させたが実物経済には影響を与えていない事実を厳しく指摘しています。

さまざまなデータから、現在の景気が「期待」と「住宅の駆け込み需要」によるものであること、現状の政策が、効いていない証拠を挙げ、その理由を丁寧に示しています。

なかでも本質的な指摘と感じたのは、<輸出立国の基本的な条件は失われている>というお話。

<今後の日本経済成長の主役は、製造業ではなく、非製造業である>
という主張は、まさに今後、政策転換するにあたって、本質的な部分だと思います。

今後の経済の見通しに関しても、以下のようにネガティブで、本質的な変革の必要性を感じさせられる内容です。

<実質住宅投資は二桁減の可能性>
<一四年度の実質経済成長率はマイナスになるはず>

投資家が読むべきなのはもちろんですが、経営者、起業家にとっても、次のビジネスチャンスがどこにあるのか、目安となる内容。

なかでも著者が指摘する「娯楽・レジャー・文化」の好調ぶりは、注目しておくべきでしょう。

ぜひおすすめしたい一冊です。

———————————————–
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
———————————————–

資産価格の重要な特徴は、「期待」によって強く影響されることだ。将来株価が上がると多くの人が考えれば、買いが増えるので、実際に株価が上がる。つまり、自己実現的だ。期待は、安倍晋三内閣が「大胆な金融緩和を行なう」と宣言したことで高まった。金融緩和が実際に効果を発揮したからではない

経済には、実物の側面と資産価格の側面がある。前者は、生産、消費、投資、そして輸出入などだ。後者は金利、株価、為替レートなどである

利益増は、トヨタが自動車技術上の新しい革新を行なったためにもたらされたものではない。その大部分は、為替レートが円安になったことによるものだ

もし、日本経済にバブルの利用しか残されていないのだとすれば、地道な努力は放棄されるだろう。その結果、人材の質が劣化する。これこそが、バブルのもたらす最大の弊害だ

一四年度における公共投資は、前年度比マイナスになる。したがって、これ以外の条件が一三年七~九月期から変わらないとすれば、

一三年七~九月期も、設備投資が増えたのは建設業

DIはGDP成長率とあまり相関していない

ソフトウエアを含み土地投資額を除く設備投資額を見ると、大企業ではいずれの産業も下方修正だ。全規模合計では、非製造業が上方修正、製造業と全産業が下方修正になっている

日本企業の自己資本比率は上昇している。このことは、つぎの二つの結果をもたらす。第一に、仮に企業が設備投資を増加させるにしても、金融機関からの借入に頼る必要がない。第二に、仮に金融緩和政策によって実質金利が低下したとしても、投資が増えない可能性がある

貿易赤字拡大は、経常収支の黒字を縮小させる。一四年二月に発表された国際収支状況速報では、一三年の経常収支は三兆三〇六一億円の黒字だ。しかし、前年比では三一・五%の減となっている

円安にもかかわらず、現地通貨建ての輸出価格が低下しない

日本の輸出数量が増加した原因は、輸入国側の景気上昇

円安がさらに進むのでない限り、消費者物価をさらに押し上げることはない

いまや、規模の面で、実質民間最終消費の一項目である娯楽・レジャー・文化が、設備投資総額と同程度のウエイトを持つに至っている

————————————————

『期待バブル崩壊』野口悠紀雄・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478027323

————————————————-

◆目次◆

はじめに
第1章 経済の好循環は生じていない
第2章 データが裏づける「期待バブル崩壊」
第3章 空回りを続ける異次元金融緩和措置
第4章 ユーロ鎮静化で円安になったが輸出は伸びず
第5章 デフレ脱却すれば実質成長率は下がる
第6章 アベノミクスでは賃上げは実現できない
第7章 日本活性化に必要なのは何か?

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー