2014年1月29日

『一流の決断力』 植田兼司・著 vol.3480

【岩瀬大輔氏の「伝説の元上司」、決断力を語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820718886

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本日の一冊は、東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)で、グローバル運用のヘッドとして7000億円のポートフォリオを運用し、その後、リップルウッド・ジャパンの代表取締役も務めた著者が、「決断力」を語った自己啓発書。

空気を破って発言する勇気、ディール・ブレイクを恐れない姿勢、少数意見の尊重…。

マーケット、あるいはビジネスで勝つための意思決定のノウハウがコンパクトにまとめられており、じつに興味深い内容です。

また、グローバルな舞台でタフ・ネゴシエーションをまとめてきた経験から、交渉で話をまとめるためのノウハウが、具体的に語られています。

個人的に勉強になったのは、<もめたときの決断には「慎み深さと寛容」を>と見出しが打たれたパートに書かれている、話をまとめるためのテクニック。

ここでちょっと、紹介しておきましょう。

1.自分のチームで絶対にとりたいイシューと、相手に譲ってもいいと思うイシューを選別し、それに応じて強弱をつけて、「これを譲る代わりに、これを認めてくれ」という交渉をする

2.「足して二で割る」「半分ずつの痛み分け」

3.将来起こるかもしれない損害に対して支払う金額が問題になったとき、「キャップ」という上限を設けるやり方

4.売り手、買い手で売買金額が折り合わない場合、現在上げている利益をベースに合意できるミニマムの金額でいったん譲渡し、将来(例えば翌年)、利益が予想以上に上がったら買い手から追加的に一定の金額 が売り手に支払われ、利益が上がらなかったら当初の購入金額で確定(EarnOut)

これがわかれば、どんな交渉でも「落とし所」がわかるはずです。

また、処世術としてもたくさんの教訓が語られており、例えば以下のような言葉が紹介されています。

<成功の秘訣はカウンターパートを好きになること>
<気をつけるべきは視野にも入っていない人たち>

指導者として、投資家として、責任ある決断をするには、一体どうしたらいいか。

プロの「決断力」を学べる、じつに興味深い一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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リップルウッドで驚いたことは、いかなるディールでも、途中で妙味なしと判断すればどんなに進んだ段階でも平気で降りる、ということです。ディール・ブレイクを全く恐れないのです

富士電機から富士通が生まれ、イトーヨーカ堂からセブンイレブンが生まれたように、常にとがったプロジェクトが子会社となり、遠い将来は「出藍の誉れ」となって、親会社をも凌駕する存在となることがあります。そういう出世プロジェクトは、最初から順風満帆というものは少なく、むしろ社内のエリートコースから外れたところからスタートするものです

行き詰まったら変数(ファクター)を減らすことを考えよ

英国に「もし遅れても立ち止まって時計を見るな」ということわざがあります。一番いけないのが、「もう遅い」と思って物事を投げること、あきらめることです

新聞を読むときは、その記事を感受性豊かに読み、驚き、その先を自分で予測します。そしてそれが自分の仕事にどういう影響が出るかを考え、リスクを最小限にすることを心掛けるのです

リーダーは、基本に立ち返って、複式簿記、会計を理解し、多くの会社の貸借対照表、損益計算書を読み込んで、資産、負債、収益、費用のバランスと関連を理解しておくことが必須です。私の敬愛する富士重工業の吉永泰之社長は夜学に通って会計の勉強をしたといいます。そして、その勉強は将来、決断に迫られたときに必ず役に立ちます。なぜなら、企業取引において与信行為はつきものであり、さまざまな局面で「信用供与できるかどうか」の最終決断をリーダーはしなければならないからです

仕事においても、私事においても、人は矛盾しているように見える行動をすることがありますが。それは相互に作用して均衡点へ至る過程にすぎません

成功の秘訣はカウンターパートを好きになること

気をつけるべきは視野にも入っていない人たち

日々、リーダーが継続的に適切な決断をしていくうえで欠かせないのは部下の支えです。したがって、日々の仕事で起こるアクシデントにおいては、その最も大切な部下を守る気構えと行動を期待します

イエスマンを信じて決断してはいけません。自分の居心地のよさで人を判断し、その進言を聞くことのないように

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『一流の決断力』植田兼司・著 日本能率協会マネジメントセンター
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◆目次◆

第1章 決断の流儀
第2章 「逆張りの哲学」で勝ち切る
第3章 負けを克服し、逆転につなげる道
第4章 感受性とストレス耐性を磨く
第5章 異質の人を大切に
第6章 変われる者だけが生き残る

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