2013年12月27日

『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』ブラッド・ストーン・著vol.3447‏

【今年最後のビッグタイトル】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249816

本日ご紹介する一冊は、誰もが不可能と思った「everything store」を実現し、人々の購買行動を変えた男、アマゾン創業者、ジェフ・ベゾスの待望の本格評伝。

原著は、フィナンシャル・タイムズ、ゴールドマン・サックス共催の「ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2013」を受賞しており、今、最も注目されている一冊です。

かつての古巣であり、ジェフ・ベゾス本人とも何度か話したことがありますが、人となり、創業当時のエピソードをそこまで深くは知らないため、じつに興味深く読ませていただきました。

評伝は、書き手が誰か、翻訳の場合、翻訳者が誰かが本のクオリティに著しく影響するのですが、本書の場合、執筆はブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のシニアライター、ブラッド・ストーン氏、翻訳を『スティーブ・ジョブズ』を訳した井口耕二氏が担当しており、まさに鉄壁の布陣です。

実際に読んでみたところ、じつによく調べているし、また情緒たっぷりの起業物語に仕上がってもいます。インターネット黎明期、90年代の興奮が伝わってくるようで、じつにワクワクしました。

ジェフ・ベゾスやアマゾンに興味のない人も、「6兆円稼ぐ男」がどんな人間なのか、知っておいて損はないと思います。(アマゾンの売上高は、2012年に610億ドル)

本書を読む限り、ベゾスが他の人物と違うのは、その驚くべき行動力と野心、そして優秀な人間を虜にする人間的魅力でしょう。

ウォールストリートで高給をもらっていたにもかかわらず、それをあっさり捨ててゼロから起業する勇気、「everything store」という壮大なビジョンを打ち上げた豪胆さ、そして誰もが協力したくなる人間的魅力、ライバル、ウォルマートからも学ぶしたたかさ…。

おそらくここに書かれているのは、「グローバルに成功する起業家」の条件でもあります。

31歳で起業したベゾスが、世界を変えるほどのビッグビジネスを手掛け、巨万の富を手に入れた。

その過程は決して平坦ではありませんでしたが、振り返ればベゾスは確かに、起業成功の王道を着実に歩んでいたと言えるでしょう。

急速な発展、ドットコムバブルの崩壊、貴重な人材の流出…。

多くの起業家が直面し、潰れていく状況にあっても、ベゾスは崩れず、柔軟に自身を変化させていきました。

その姿を見て、起業家ならきっと感じ入るところがあるはずです。

今年の最後を飾るにふさわしい、力作です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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アマゾンの年間売上高は、創業17年目の2012年610億ドルを記録した。売上高1000億ドル突破までの期間が小売業の史上最短記録となるのもまちがいないだろう

マイナーによると、ベゾスは成功した実業家について詳しく調べ、特に、フランチャイズのドミノ・ピザで一財産を築いたバージニア州のアントレプレナー、フランク・ミークスがすごいと言っていたらしい。また、計算機科学の世界を拓いたアラン・ケイも尊敬しており、彼の名言「視点は知能指数80点分に相当する」(新しい角度から見ると物事が理解しやすいという意味)をよく口にしていた

「このインターネットというもの、世界を変える原動力になると思ったものに身を投じなかった場合、あのときやっておけばよかったと心から後悔する可能性があると思いました」(ベゾスの言葉)

「誰かを雇ったら、その人を基準に次はもっと優れた人を雇うようにするんです。そうすれば、人的資源が全体的によくなっていきますからね」(ベゾスの言葉)

1998年の頭、ブルームボールを持ちこんだマーケティング担当役員のマーク・ブライアーからとある調査の結果がもたらされた。消費者の大部分は本をめったに買わず、だからアマゾン・ドット・コムを使っていないし、また将来使うこともまずないというものだ。ベゾスは、米国における読書傾向の背後にひそむ憂うつな数字を知らされても気をもむことはなかった。逆に、ハーバードビジネススクール出身者を集めて「SWATチーム」を作って製品カテゴリーの検討をしろ、在庫可能な品目が多く、かつ、リアル店舗では見つかりにくくて郵送しやすい製品カテゴリーを探し出せとブライアーに指示。これこそ、アマゾンに成功をもたらした戦略の中核である

経営者というのは自分の得意なパターンというのがあって、自分のやり方でしかダンスが踊れないのが普通

顧客はクチコミで集まるとベゾスは考えていた。だから、マーケティング費用を浮かせて顧客体験の改善に使ったほうが弾み車を回せると思ったのだ

「有能でなければジェフにズタボロにされ、捨てられます。有能なら、もうダメというところまで働かされます」

使い切れないほどの財産を手に入れたのに、どうしてそんなにがんばるのかと聞かれたとき、ベゾスはこう答えている。「頼られるとがんばってしまうんです。頼られるのが好きなのでしょう」

利益率が高ければライバル企業が研究開発に投資して競争が激しくなるが、逆に利益率が低ければ顧客は集まるし市場を守りやすい──ベゾスはそう考えているのだ

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『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』ブラッド・ストーン・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249816

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◆目次◆

プロローグ 優秀な技術系創業者の物語/けたたましい声で笑う男
第I部 信念を貫く
第1章 アマゾンは金融工学の会社から生まれた
第2章 冷たい目を持つ聡明な男
第3章 ベゾスの白昼夢と社内の混乱
第4章 宿敵アナリストに打ち勝つ
第II部 書店サイトだけでは終わらない
第5章 ロケット少年
第6章 混乱続きの物流システム
第7章 テクノロジー企業であって小売企業ではない
第8章 キンドル誕生
第III部 伝道師か、金の亡者か
第10章 ご都合主義
第11章 疑問符の王国

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