2013年11月15日

『日本語の練習問題』 出口汪・著 vol.3405

【深い。人生を変える日本語のレッスン】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763132903

本日の一冊は、現代文のカリスマ、出口汪氏が書いた、『日本語の練習問題』。

代々木ゼミナールのすべての大教室を満杯にし、650人収容できる教室にも立ち見の聴講生がいたというほどの人気ぶりで、 自身の執筆した参考書・書籍は、売上累計部数600万部超。

弊社のセミナーでもお話しいただいたことがありますが、これまでに聴いた講義のなかでも、1、2を争う素晴らしい内容でした。

※参考:「伝説のカリスマ国語講師、出口汪直伝!人を魅了する「教え方」の技術」
http://eliesbook.co.jp/archives/404

本書は、そんな著者が人生を変える「美しい日本語」を教えてくれる、夢の授業です。

敬語表現、正しい文法知識、美しい日本語のレッスンまで、じつに有用な情報が詰まっていますが、そのひとつひとつが深い。

試しに「問題9」を見てみましょう。

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問題9 社長に、部長と話した件を伝えるとします。
     次の敬語表現を正しく直しなさい。

部長にご報告申し上げました。

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この問題に対する、著者の解説は以下の通りです。

<一見、丁寧な言葉遣いのように思えるかもしれません。しかし「ご報告」の「ご」は部長を高める尊敬語、「申し上げました」も部長を高める謙譲語で、肝心の社長に対する敬意が不足しています。そこで、「部長にご相談」と部長を高めておいて、さらに、「いたしました」と社長にも敬意を表しなければならないのです>

さらに、有名な中原中也の「汚れつちまつた悲しみに……」の解説部分。

「問題23」では、カッコ内にどんな助詞が入るか、問われています。

汚れつちまつた悲しみに
今日(  )小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日(  )風さへ吹きすぎる

答えは当然「も」ですが、これに対し、著者の解説はこうなっています。

<繰り返される悲しみは、「も」という助詞によって初めて表現されたのです>

淡々と問題をこなしているだけの本かと思ったら大間違いで、まさに感性を養う『日本語の練習問題』。

これまでに読んだ著者のどの本よりも気持ちが入っているなと思っていたら、あとがきに衝撃の事実が書かれていました。

言語センスに長けた「現代文のカリスマ」の息子さんが、言語能力の問題を抱えていたのです。

本書は、贖罪の気持ちから書かれた、著者渾身の一冊。

ぜひ買って読んでみることをおすすめいたします。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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日本人は言葉で祈り、言葉で呪ってきました。その日本語を粗雑に扱うと、やがて汚い日本語に「復讐」されることになります。復讐とは、その人が使っている日本語にふさわしい人間になってしまうことです

「謙譲語」を使える人は美しい

もし、謙譲語がなかったら、いったいどうなるのでしょうか?
作者である女房にとってはどの人物も自分よりは大抵身分が上ですから、彼らの動作には敬語表現を使わなければなりません。そこで、尊敬語を使えばいいのですが、それだけでは、複数の登場人物の上下関係が表せません(中略)そこで、身分の低い方の動作に謙譲語をつけることで、相対的に身分の高い方を持ち上げるということをします

最近、「ください」を丁寧語だと思って目上の方や社外の方に多用する場面が見られますが、これは正しい使い方ではなく、失礼に当たる場合もあります。今回の問題については、「おっしゃっていただけますか?」と疑問形にすることで、相手に依頼する表現となります

敬語表現は、相手を尊重しつつ、相手との関係を調和させようとするものです。私たちが今こそ「強い日本」を誇るのなら、それは日本が率先して、世界の国々を「調和」させることだと私は思います

「話をしてくださいました」と、「ください」を使うことで、私のために話をしてくださってありがたいと、話し手に感謝の気持ちを込めることができます

敬語表現の使い方ひとつで、客観的な事実を述べるのか、そこに感謝の気持ちを込めるのか、あるいは、親密感を出すのか、距離を置くのかと、自分と相手との関係が変化するのです

芭蕉は「の」ではなく、切れ字の「や」を用いたのです。その結果、「古池」と「蛙」とはつながりが断ち切れてしまいました。この「蛙」は古池とは関わりを持たない蛙なのです

繰り返される悲しみは、「も」という助詞によって初めて表現されたのです

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『日本語の練習問題』出口汪・著 サンマーク出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763132903

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◆目次◆

第1章 敬語で誰にでも好かれる人になる
第2章 主語と述語を「正しく」把握する
第3章 接続語で文脈力を鍛える
第4章 感情や意思を伝える表現を身につける
第5章 五感を言葉に取り入れて表現する
第6章 擬音語や比喩を使いこなす練習問題
第7章 総合問題

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