2013年11月1日

『団塊の秋』 堺屋太一・著 Vol.3391

【堺屋太一『団塊の世代』の総決算】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/439661473X

本日の一冊は、予測小説『団塊の世代』がミリオンセラーとなった、通産省出身の作家、堺屋太一さんによる一冊。

※参考:『団塊の世代』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167193205

『団塊の世代』は、ベビーブーム世代である『団塊の世代』が、日本経済に与える影響を予測した、恐るべき本でしたが、本書では、その団塊の世代が、2015年~2028年に、どんな人生を送るのか、その未来を描いています。

恐らくはアベノミクスと思われる政策の失敗、東京オリンピックのいまいちな盛り上がり、「ユーズド」「整理屋」「電気守」などのビジネスの隆盛…。

さまざまな日本の「未来」が登場しますが、正直、『団塊の世代』と比べると、想定の範囲内であり、目新しさには欠けます。

工学博士を取った息子が韓国企業の下請けでベトナムに原子力発電所建設の地質調査に行く…などといった設定も、正直、今の延長上で見える世界だと思います。

個人的に面白かったのは、以下のように、未来の新聞が読めるところ。

【2020年4月15日 水曜日 毎朝新聞】
東京オリンピック・パラリンピックの開会まであと百日──会場建設や周辺地域の整備は進んでいるが、スポーツ熱は盛り上がらない。人口の高齢化が進み、スポーツをする人口も観る人の数も減少の一途をたどっている。プロ野球は昨年から八チーム一リーグになった。年間観客数は年々減少し、延べ千三百人余。ピークだった二〇〇四年に比べて五割減になった

【2022年6月24日 金曜日 毎朝新聞】
最近、ユーズドのファニチャーや衣類などの再生販売が急成長を遂げている。(中略)大阪南港にはユーズド専門の常設市場が開設、内外のバイヤーが詰めかけている。その一人「リメイン社」代表のナイマン・デラクレ氏、「日本のユーズドには高級品が多い。衣類、食品、家具などバングラデシュやパキスタンでは日本ユーズドはブランドだ」という

本格的に新聞テイストでまとめられており、昔読んだ『恐怖新聞』のような感覚で楽しめました。

※参考:『恐怖新聞全9巻 完結セット』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B002DE6HZ8

ぜひチェックしてみてください。

—————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
—————————————————

大型予算と金融緩和策で株高円安を招いた保守政権も、国民が期待したほどではなかった。はじめの一年は評判も良かったが二年目からは批判が続出する。円の対ドル相場が百二十円を超えた頃からは、輸入燃料の値上がりで電力料金やガソリン代が高騰、食料品も大幅に値上がりした。それに消費税の引き上げが加わり、「実感としては生活費が三年間で三割も上がった」といわれるようになった。その一方、輸出は期待したほどには増えず、雇用も伸びなかった

「格差なんか是正したらあかんよ。豊かな人を貧しくしても、貧しい者は豊かにならない。みんな貧しくなるだけや。俺が言いたいのはちょっとの収入が得られる働き場所や。月十万円でええ。夫婦のどちらか一人でええ。月十万円稼げる仕事が高齢者にもあったらええ。要は高齢者に適した働くシステムを築くことや」

【2020年4月15日 水曜日 毎朝新聞】
東京オリンピック・パラリンピックの開会まであと百日──会場建設や周辺地域の整備は進んでいるが、スポーツ熱は盛り上がらない。人口の高齢化が進み、スポーツをする人口も観る人の数も減少の一途をたどっている。プロ野球は昨年から八チーム一リーグになった。年間観客数は年々減少し、延べ千三百人余。ピークだった二〇〇四年に比べて五割減になった

【2022年6月24日 金曜日 毎朝新聞】
最近、ユーズドのファニチャーや衣類などの再生販売が急成長を遂げている。(中略)大阪南港にはユーズド専門の常設市場が開設、内外のバイヤーが詰めかけている。その一人「リメイン社」代表のナイマン・デラクレ氏、「日本のユーズドには高級品が多い。衣類、食品、家具などバングラデシュやパキスタンでは日本ユーズドはブランドだ」という

「整理屋」というのは介護施設に移転したり死亡したりした高齢者の遺した家具や什器、衣類を片付ける専門業者で、かなりの大手も育っている

私の目下の職業は『電気守』、正確には婿に仕事を譲って相談役として手伝う身です。『電気守』とは耳慣れない言葉でしょうが、私がはじめて既に八年、上越地方では三軒、全国では二百軒ぐらいあるでしょう。マスコミでは『エレキファーマー』などとも呼んでいます。業態は遊休農地や廃業ゴルフ場、無用となった薪炭林などを借用して、太陽光発電パネルを並べた発電所にして投資家に売却、その管理(守)を請け負うものです。
管理料は発電した電力の売り上げの一割が標準です

「数少なくなる労働力を生産性の高い分野に回す雇用の弾力化が必要」

————————————————

『団塊の秋』堺屋太一・著 祥伝社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/439661473X

————————————————-

◆目次◆

第一話 さまよえる活力──2015年
第二話 年金プラス十万円──2017年
第三話 孫に会いたい!──2020年
第四話 孫の進路──2022年
第五話 養護センターまで二千三百十六歩──2025年
第六話 電気守──2028年

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー