2013年10月11日

『一流を育てる』秋山利輝・著 vol.3370

【一流の職人が教える、教育の順番】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4774514322

本日の一冊は、宮内庁や迎賓館、国会議事堂、高級ホテル、百貨店、美術館など、名立たる顧客から、注文家具の依頼が殺到する職人、秋山利輝氏による一冊。

「秋山学校」に入学を許可されたら男も女も丸坊主。携帯電話禁止。家族と会えるのは、盆・正月の帰省時のみ。親からの仕送りも禁止。

テレビで同社の取り組みを見て、「こんなご時世に、なんと時代錯誤な…」と思った方もいらっしゃると思いますが、なるほど、読み進めて行くと、その合理性がよくわかります。

著者が親からの仕送りを禁止するのは、じつはこういう理由でした。

<苦労して稼いだ給料から職人の命である道具を買ってこそ、愛情を込めて大切に使うことができる。仕送りで立派な道具を手に入れても感動はない>

最近のビジネス書は、本人を一流に育てるためでなく、働く本人にとって都合の良い教育法を説いたものが多いですが、一流になるというのは、そんなに甘いものではありません。

マイカー通勤でラクをすると、歩くのに必要な筋肉が衰えるように、仕事でラクをすると、仕事に必要な「規律」や「勤勉さ」が失われてしまうのです。

良い仕事をするためには、それなりの犠牲と若い頃の癖づけ、そして一流の師の指導が必要。

その具体的内容を説いたのが、本書『一流を育てる』です。

本書には、『職人心得三十箇条』という一流に育てるための30箇条が載っているのですが、この順番がいい。

・挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます
・連絡・報告・相談のできる人から現場に行かせてもらえます
・明るい人から現場に行かせてもらえます

多くの若者がチャンスを与えられないのは、じつは最初の「挨拶」が原因であるのに、当の本人は気づいていない。

本書は、そうした「基本」の大切さに気づかせてくれる本です。

「すごいノウハウ」を求めてビジネス書を読んだけれど、まったく成果の出ていない方は、ぜひ本書を読んで、一流の基礎を学ぶといいかもしれません。

ひさびさに、背筋がピンと伸びる一冊でした。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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なぜ、やっと育てた職人を戦力とせずに、八年で辞めさせてしまうのか。私の下にずっといたら、ここでしか活躍できない職人になってしまいます。世の中の役に立つ職人、何十年も何世代も使える本物の家具を提供できる職人を育てるのが私の役目です。職人を私物化し、私の手足として働かせてはいけないのです

苦労して稼いだ給料から職人の命である道具を買ってこそ、愛情を込めて大切に使うことができる。仕送りで立派な道具を手に入れても感動はない

道具を使いこなすには、経験が必要です。手のひらにカンナの刃がついている感覚になるまでひたすら使い込むしかありません

挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます

連絡・報告・相談のできる人から現場に行かせてもらえます

カンナやノミは、手入れをしただけ応えてくれます。反対に、使っている道具への思いやりがなければケガをするのは自分です。そのつけはそっくり自分に返ってくるのです

道具は常に使える状態、最高の状態にしておくことが必要です。いつでも仕事をする準備ができているから、すぐにスイッチオンになり、一〇一%の力を出せるのです

“お手伝い”とは、相手が望んでいることを読み取り、先回りして行動することです

木が好きな家具職人は、道具をうまく使えます。樹齢百年、二百年の木の命をいただくのです。少しも無駄のないよう、命を生かし切ろうと思うこと。そして、家具という新たな命を吹き込む気持ちで手を動かすのです。そうしていると、道具をうまく使えるようになっていきます

職人にとって、「自慢」できることは大切なことです。納品するときは、作った家具の「自慢」をします。どこで育ったどんな木材で作っているか、空間に合った家具にするために凝らした工夫など、専門用語は使わずに、お客さまにわかりやすい言葉で、ポイントを押さえて説明します

自ら進んで、人と関わることが大切です。本音で意見を言い合っても喧嘩にならないのは、真理を求める姿勢があるからです

食べ物の好き嫌いも一切禁止です。それを言うようになると、いずれ仕事や人の好き嫌いを言うようになるからです

周りから応援してもらっていることに気づくと、感謝の気持ちが生まれます。感謝した分だけ、一流の職人に近づけるのです

怒られるのは年の若いほうがいい─ーできたら二十歳までに怒られるのがいい

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『一流を育てる』秋山利輝・著 現代書林
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4774514322

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◆目次◆

序章 心が一流なら、技術も必ず一流になる
『職人心得三十箇条』
結章 一流職人への道

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