2013年10月27日

『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』石島洋一・著 vol.3386‏

【思わず泣ける、感動のエピソード】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569814794

不覚にも、読んで泣いてしまいました。

何で泣いたかというと、一見すると、ただの企業事例モノ。しかも、ベストセラー『決算書がおもしろいほどわかる本』を書いた、公認会計士の石島洋一さんによる新刊です。

※参考:『決算書がおもしろいほどわかる本』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569672523

石島さんは、以前インタビューさせていただいて、とても好感が持てる方でしたが、とはいえ数字を扱う公認会計士。

「そんな方に<「感動する企業」の秘密>と言われても…」

というのが、最初本書を見た時の感想でした。

それが、献本いただいてから一カ月間放置していて、ちょっとめくってみたところ、ぐいぐい引き込まれ、不覚にも泣いてしまったわけです。

およそビジネスのすべては人と人をつなぐものであり、当然そこには感動の要素があるわけですが、宅急便は、贈り物を扱うものだけに、その要素がじつに強い。

宅急便を扱った本書は、あまたあるディズニー本に勝るとも劣らない、感動エピソードが詰まった一冊なのです。

なかでも感動したのは、東日本大震災の時の、現場の主管支店長の決断と、それを受けた木川HD社長の粋なはからい。

新社長就任挨拶で宅急便一個につき10円の寄付(当時の規模で130億円相当。最終純利益の4割にあたる)を発表し、また株主総会では、株主相手にこんなやり取りがなされたそうです。

<ある株主の代理人から、木川HD社長に質問が飛んできた。「社長は今回の寄付で、株主に損害を与えたということで訴訟を起こされることを考慮していないのですか?」木川氏は答えた。「まったく考えていません。寄付は、会社が今為すべき行動と考えます。株主代表訴訟を起こす人がいるのであれば、受けて立ちます」>

木川HD社長が言う、「為さざるの罪」という言葉が、胸にずしんと来ました。

「全員経営」で、社員全員が為すべきことに向かって挑む社風。

本書には、その秘密が書かれています。

著者が、ヤマトホールディングス会長の瀬戸氏と高校時代からの親友だったからこそできた綿密なインタビュー。

もちろん、それだけにヤマトびいきにはなっているのでしょうが、それがなければここまで多面的にこの企業を知ることはなかったと思います。

また、公認会計士ならではの冷静な視点で分析している部分も、実業家にとっては、響くところがあります。

ぜひ、読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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三人の主管支店長は話し合って、覚悟を決めた。
「会社の車を使い、経費を使って、積極的にみんながボランティア活動をしている。人件費も含めたら膨大な金額になる。でも『世のため、人のため』と会社がいつもいっている方針なら、このままやらせてみよう。本社からお叱りを受けたら、自分たち主管支店長のクビを差し出せばいいか」

年度計画について話していた木川HD社長が、最後に話を始めた。
「今回の震災で、現地の人達が自主的に救援物資輸送に動いてくれたことを誇りに思う。今度は本社として何ができるかを考えてみた。東北はクール宅急便などでヤマトを育ててくれた地域でもある。その地域に対する恩返しとして、水産業、農業、そして学校や病院等の生活基盤の復興に寄付先を指定して、宅急便一個につき一〇円の寄付をしていきたい」
社長就任日、この挨拶は幹部を一瞬驚かせた。宅急便一個につき一〇円となれば、当時の年間取り扱い量は一三億個だから、累計一三〇億円にもなる。ヤマトの通常の最終純利益は三〇〇億円程度なので、その四割にもなる、大変な額である。幹部達もその金額がいかに大きなものであるかは、すぐに気付いたのだろう。そして、その後に起きたこと──。静まりかえった雰囲気を、拍手の嵐がかき消していったという

株主のほうは大丈夫だったのだろうか。ある株主の代理人から、木川HD社長に質問が飛んできた。
「社長は今回の寄付で、株主に損害を与えたということで訴訟を起こされることを考慮していないのですか?」
木川氏は答えた。
「まったく考えていません。寄付は、会社が今為すべき行動と考えます。株主代表訴訟を起こす人がいるのであれば、受けて立ちます」
度胸の据わった経営者である。銀行出身の木川氏にしてみれば、株主代表訴訟のことなど知らないわけはない。しかし、「今、東北に恩返ししなくてどうする」という思いを実行に移していった。そんな木川HD社長がよく口にする言葉がある。
「為さざるの罪」

ヤマトはなんと財務省と折衝に入った。この寄付について、社会的意義を理解してもらい、無税化の交渉をしたのである。かつては運輸省(現国交省)と大論争を交わしたことで有名なヤマトだが、今度は財務省が相手だ。勝手が違う(中略)財務省も粋な計らいをしてくれた。全額損金を認める告示がなされたのは、六月二四日、つまり株主総会の数日前だったのである。ヤマトの株主に対する説得材料を、財務省が与えてくれたことになる。日本のお役所も捨てたものではない

(関西支社長の)大井氏がよく口にする言葉がある。
「“やらされ感”から“やりたい感”、“やりたい感”から“任せろ感”」

上司が部下を変えうる原動力は、とてもシンプルなものではないかと踏んでいる。それは、部下に対し興味を持つことだ

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『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』石島洋一・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569814794

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◆目次◆

第1章 震災時に見るヤマト魂~有事マニュアルは必要ない~
第2章 実践される「全員経営」~ヤマトパワーの原動力~
第3章 ヤマトの人づくり~制度と風土の合わせ技~
第4章 お客様の問題解決が仕事
    ~運送業を超えた、ソリューション企業へ~
第5章 一〇〇年目でも目指すのは「愛される企業」
    ~新しい民間企業のあり方~
第6章 ヤマトの粘り腰~創設時から受け継がれる「根気」~

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