2013年8月2日

『非常識な本質』水野和敏・著 Vol.3300

【祝・3300号】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894515806

毎日クルマに乗っていると、ど素人にも、どのクルマが特別で、どのクルマがそうでないのか、何となくわかってきます。

最近すごいな、と思うのは、自宅のマンションの駐車場と、会社の駐車場の両方に存在する、日産GT-R。

デザインやパフォーマンスももちろんですが、何よりもオーナーさんの半端じゃない愛情を感じる。

一体どんな人が作ったんだろうと疑問に思っていたら、ちょうど開発責任者の本が発売されるということで、さっそく読んでみました。

本日ご紹介するのは、元日産GT-R開発責任者、水野和敏さんが書いた、『非常識な本質』です。

エンジンとトランスミッションが通常のコストの10分の1、開発メンバーの人数が5分の1、ヨーロッパで買うと5000~6000万円はするはずの性能と仕様が、800万円程度で買える…。

本書では、そんな非常識なクルマを実現してしまった著者の創意工夫、目のつけどころ、実行力のすごさが、余すところなく書かれています。

「乗り心地がいい」「後部座席の乗り降りがしやすい」「ハンドリングが楽しい」など、ユーザー満足につながる要素を言語化し、それを数値化して商品に落とし込む視点、工数ではなく、「能数」(保有する能力の数)という指標でチーム力を考える視点、さらには、こだわりを捨て、エンジンを外注するというしたたかさ…。

個人的には、塗装が6色しかないのに、ユーザーを満足させられる、以下の理由が参考になりました。

<じつはGT-Rには、塗装が6色しかありません。ふつう、スポーツカーなら塗装の色が豊富ですが、そのぶん、やれ赤がない、黄色がないなどとクレームも意外に多いんです。しかし、塗装そのものを、たとえば世界に類のない芸術の領域までもっていくと、6色しかなくてもクレームが来ないんです。人並みのものを提供するから、顧客は好きとか嫌いとかで選ぶ。しかし、機械を超越して、人間の手によるすごい塗装の質感を感じさせることができたなら、個人の好みをも超越する普遍性を持つのです>

不可能を可能にするための、さまざまな視点が書かれており、じつに参考になる内容です。

これはおすすめの一冊です。

—————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
—————————————————

レースで勝つためには、最高馬力で走っていない残り82パーセントの区間で相手より速く走れるクルマをつくること

人の人生には、「苦しさを知るからこそ楽しさを知る」という世界がある(中略)世界一の楽しさを知っている人は、やはり世界一の苦しさを楽しさに変えることができた人なんです

能数という概念で人を見ると、「クルマだけをつくっていました」「レースだけやっていました」という人を250人集めるよりも、50人に能数という項目を加えて積算をしたほうが、チームのパワーが上になるという計算が簡単にできるんです

じつはGT-Rには、塗装が6色しかありません。ふつう、スポーツカーなら塗装の色が豊富ですが、そのぶん、やれ赤がない、黄色がないなどとクレームも意外に多いんです。しかし、塗装そのものを、たとえば世界に類のない芸術の領域までもっていくと、6色しかなくてもクレームが来ないんです。人並みのものを提供するから、顧客は好きとか嫌いとかで選ぶ。しかし、機械を超越して、人間の手によるすごい塗装の質感を感じさせることができたなら、個人の好みをも超越する普遍性を持つのです

どんな路面状況でも安全に乗ることができるスーパーカーをつくると、きっと彼らの心がつかめるはずだ

じつはイギリスには、ベンツやBMWなどがエンジン開発を頼みにいくあるエンジンメーカーがあります。そのメーカーはレーシングエンジンやV6などをつくり慣れていて、レベルもポルシェやフェラーリに負けていません(中略)自分が正直に「できない」と認めることで、世界でトップレベルのエンジン技術を持っているメーカーに頼むことができる

日産GT-Rの開発をはじめた僕は、当初から「世界がGT-Rをスーパーカーとして認めてくれるかどうか」を検証する勝負の土俵として、ヨーロッパではなく全米有数の高級住宅街として名高いビバリーヒルズを想定していました

開発責任者が直接、お客様にGT-Rの素晴らしさを説明し、同席している販売員が契約の交渉をする。スーパーカーを趣味で購入するようなユーザーは、かなりエモーションが高い。開発責任者や開発チームのメンバーが目の前にいるというシーンに、きっと感動してくれるはずだ──。チームも商品にするということです

売ったあとのお客様のクルマでも現在のモデルと同じ性能や機能に近く、つねに進化できる

————————————————

『非常識な本質』水野和敏・著 フォレスト出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894515806

————————————————-

◆目次◆

第1章 非常識な本質
第2章 はみ出し者が生きる道
第3章 「お客様は神様」の本当の意味
第4章 世界一を目指した型破りな開発
第5章 答えはいつも会社の外にある
第6章 ブランドの正体

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー