2013年8月28日

『人は成熟するにつれて若くなる』 ヘルマン・ヘッセ・著 vol.3326

【どう死に向かうか。ヘッセ晩年のエッセイ集。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794218672

最近、ちょっと気になっているのは、人生の後半期、人はどうやって「死」を受け入れるのか、ということです。

できれば、富も名声も手に入れた人間が、振り返ってどう人生を捉えるのか、その穏やかな境地を見てみたい。

そう思って出合ったのが、この『人は成熟するにつれて若くなる』でした。

本書は、ノーベル文学賞を受賞し、著作の累計が5千万部以上となった大作家、ヘルマン・ヘッセのエッセイ集です。

『車輪の下』は大好きで、高校時代によく読んでいましたが、こんな晩年のエッセイがあったとは知りませんでした。

※参考:『車輪の下』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102001034

内容は、ヘッセの詩とエッセイがいくつか掲載されたもので、老年になることで起こる変化がよく書き込まれています。

高齢になってから、どう生きるべきかの指針、ヒントが示されており、じつに参考になります。

いくつか引用してみましょう。

<好きな仕事や意義のある仕事にもどれる人、愛する人びとのところに、どこかの故郷に帰ることができる人は幸いだ! それができない人、この幻想が壊れてしまった人は、そのあとはじまる寒さを避けてベッドに這い込むか、旅に逃れる>

<青年にとって必要なことは、自分自身を真剣に考えることができることである。老年にとって必要なことは自分自身を犠牲にできることである。なぜなら、老年には自分以上に真剣に対処すべき何者かがあるからである>

<悲しみは損失に執着するという意味でよいことではなく、真の人生の目的にかなうものではない>

やはり、老年になっても意義ある仕事を持つこと、愛する人を持つこと、帰れる場所を持つことが重要なのだと、再認識させられます。

デキる人は、ゴールから逆算して、今何をすべきかを考える。

充実した人生を歩むために何が必要か、下手な自己啓発書よりも多くを教えてくれる一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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好きな仕事や意義のある仕事にもどれる人、愛する人びとのところに、どこかの故郷に帰ることができる人は幸いだ! それができない人、この幻想が壊れてしまった人は、そのあとはじまる寒さを避けてベッドに這い込むか、旅に逃れる

青年にとって必要なことは、自分自身を真剣に考えることができることである。老年にとって必要なことは自分自身を犠牲にできることである。なぜなら、老年には自分以上に真剣に対処すべき何者かがあるからである

過ぎ去ったことにこだわったり、それを模倣したりすることが私たちにとって重要なのではなく、変化に対応できる能力をもって新しいことを体験し、力をつくしてそれに参加することが必要であろう。その限りでは、悲しみは損失に執着するという意味でよいことではなく、真の人生の目的にかなうものではない

年老いて賢い人間は、年老いて賢くないソクラテスに向かいあうことになった。そして私は抵抗するか、恥じなくてはならなかった

要するに老人にとっては、もう新しい体験は存在しないのである。老人は、各人各様の独自の体験を、最初のさまざまな体験でとうの昔に受け取っており、「新しい」体験は、稀になるばかりで、新しいと思っても、実はすでに何度か、あるいはしばしば経験したことのくりかえしであり、ずっと以前に一度完成されたようにみえる絵の上に塗る新しいラッカーのようなものなのである

私たち詩人や知識階級は、記憶力をひじょうに評価する。それは私たちの資本である。私たちはそれによって生活する。──しかし、忘れてしまったものや、無意識の底に投げ捨ててしまったものが、突然私たちの意識に浮かんできて私たちを驚かすとき、それは、喜ばしいものであろうとなかろうと、常に私たちが注意深く大事にしてきた思い出にはない勢いと重さをもつ発見物である

真理は、ひとつの典型的な未成年の理想である。これに対して愛は、成年と、再び崩壊と死の準備をしようと努力している者の理想である

徐々にすべてのものが消え失せて、ついには私たちの心に近かった人びとや、最も近かった人びとを、この世よりもはるかにたくさん「あの世」にもつようになると、私たちはいつのまにかあの世に好奇心をもつようになり、生という建物にまだしっかりと守られている者がもつ恐れを忘れるようになる

光に向かうにせよ夜に向かうにせよ、あらゆる運動は死に通じる。魂がその苦しみをおそれる新たな誕生へと通じる

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『人は成熟するにつれて若くなる』ヘルマン・ヘッセ・著 V・ミヒェルス・編 草思社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794218672

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◆目次◆

春の散歩
耳を澄ます
夏の終わり
老いる
晩夏
湯治客
忠告
断章1
五十歳の男
断章2
老いること
(ほか)

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