2013年8月16日

『カリスマ社長の大失敗』國貞文隆・著 vol.3314‏

【あの有名経営者の失敗談】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840151741

本日の一冊は、小林一三、市村清、土光敏夫、福武哲彦、鮎川義介など、日本を代表する大経営者たちの不遇の時代にフォーカスし、エピソードと教訓を紹介した一冊。

とかくカリスマ経営者には美談ばかりがつきまとうものですが、本書の面白いところは、彼らの格好悪いところにばかりフォーカスした点。

ダメ社員のレッテルを貼られ、出社もせずにぶらぶらしていたという阪急グループ創業者の小林一三、第一志望である東芝に落とされたことが人生を分けたソニー創業者の井深大、学校はすべて中退し、就職した会社も倒産したというリコー創業者の市村清…。

色とりどりの人生、そして各人がどうやって困難から這い上がったかを知ると、不思議と勇気が湧いてきます。

今日は、このなかから、阪急グループ創業者の小林一三のエピソードをピックアップしてみましょう。

<入った鉄道会社がボロ会社だったため、他に入り手もなく、一三しか実働できる人間がいなかった。一三はその不安定な状況のなかから、必死にアイデアを考え、ボロ会社を立ち直らせるべく起業家のように懸命に働き、様々なビジネスに進出するのである。たとえば神戸線開通時、乗客の少ないガラガラ状態を逆手にとって「綺麗で早うて、ガラアキで、眺めの素敵によい涼しい電車」というコピーでアピールしたり、集客目的で女性や子ども向けのイベントを企画したり、温泉、動物園などのアミューズメント施設を造ったりするなど、他社のやらない施策を次々と打ち出していった。いずれも苦しい状況から逆転の発想で生まれたものだ>

数多くの経営者に会ってきたという著者の解説も素晴らしく、読み応えのある一冊に仕上がっています。

<思いこそが人を動かす。そのためには高い目線が必要だ。近くばかりを見るのではなく、もっと遠くに何があるのか見ようとする。遠くを見ていれば、目の前の失敗が次へのステップに活かされるはずだ>(本文より)

挑戦に満ちた人生を歩むために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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入った鉄道会社がボロ会社だったため、他に入り手もなく、一三しか実働できる人間がいなかった。一三はその不安定な状況のなかから、必死にアイデアを考え、ボロ会社を立ち直らせるべく起業家のように懸命に働き、様々なビジネスに進出するのである。たとえば神戸線開通時、乗客の少ないガラガラ状態を逆手にとって「綺麗で早うて、ガラアキで、眺めの素敵によい涼しい電車」というコピーでアピールしたり、集客目的で女性や子ども向けのイベントを企画したり、温泉、動物園などのアミューズメント施設を造ったりするなど、他社のやらない施策を次々と打ち出していった。いずれも苦しい状況から逆転の発想で生まれたものだ

倒産すれば当然、周りの態度は変わる。「社長」が「こら、福武」になり、給料の遅配もあったから詐欺・横領で告訴もされた。味方も離れていく。その様相はまさに地獄。哲彦は、「死ぬぐらい簡単なことはないわ」と思ったという(中略)何もかも失い、岡山県で袋小路に陥った哲彦は何度も、東京や大阪の友人たちから「こちらに出てこないか」と声をかけられている。しかしこのとき、哲彦が下した決断は「岡山から逃げないこと」だった

「夏の日に夜遅く仕事を終えてタライにお湯を入れ行水をつかいながら、“われながら、ほんとうにきょうはよく働いたな”と自分で自分をほめたいような充実感を味わったことを今でも覚えています」(『人生心得帖』)

本田も39歳までは経営者としてそれなりに活躍し、自動車関連事業を大きくしてきた。資産もある程度は持っている。しかし、そのまま続けていたら、ホンダの本田宗一郎はなかった。当時は特に、もう一度新しい会社を作るには年齢的に遅い。高く飛び上がるにはいったん深くしゃがむように、もう一度チャレンジするには時間がいる。そのためには1年間というモラトリアムが必要だった。本田はその時間をひたすら遊び呆けたのである

「踏みつけられ、笑われ、そしてあざけられたことは枚挙にいとまがない。しかし、私は、かつてユダヤ人が耐えてきたように、それに耐え抜いてきた」(藤田田)

「冬の朝四時ごろ、寝ているところを父にけ飛ばされ、『売掛金を回収してこい』と命じられたこともある。こんな時刻にと思ったが、『この時間ならたいがい店にいるはずだ』と言う。この時は売り先がつぶれかけていて裁判になった。つくづく、掛け売りは割に合わないと思った。一生懸命頭を下げて売り込んでも、肝心のカネを取れないのだから」(飯田亮)

興味深いのは、渡邉(恒雄)は常に自分よりデキると見込んだ人物との競争を避け、主流派ではなく非主流派を選んでいることだ

「迷ったときほど遠くを見る。そして未来を見極めるには過去を見る」(孫正義)

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『カリスマ社長の大失敗』國貞文隆・著 メディアファクトリー
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840151741

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◆目次◆

第1章 いつだって「失敗」が成功を生んできた!
第2章 スタート地点でつまずいた社長たち
小林一三(阪急グループ創業者)
井深大(ソニー創業者)
稲盛和夫(京セラ創業者)
市村清(リコー創業者)
石井久(立花証券創業者)
石橋正二郎(ブリヂストン創業者)
ジャック・ウェルチ(ゼネラル・エレクトリック元会長)
土光敏夫(石川島播磨重工業元社長、東芝元社長、経団連元会長)
第3章 ビジネスで失敗した社長たち
松永安左エ門(電力王)
福武哲彦(ベネッセ創業者)
五島慶太(東急グループ創業者)
松下幸之助(パナソニック創業者)
鮎川義介(日産グループ創業者)
三島海雲(カルピス創業者)
早川徳次(シャープ創業者)
樋口泰行(日本マイクロソフト社長)
増田宗昭(CCC会長)
鈴木幸一(IIJ会長)
スティーブ・ジョブズ(アップルコンピュータ創業者)
星野佳路(星野リゾート社長)
藤田晋(サイバーエージェント社長)
第4章 社長たちの「遅咲きブレイクスルー」
本田宗一郎(ホンダ創業者)
藤田田(日本マクドナルド創業者)
飯田亮(セコム創業者)
鈴木敏文(セブン&アイホールディングス会長)
出井伸之(ソニー元会長)
武田國男(武田薬品工業元会長)
渡邉恒雄(読売新聞グループ本社会長)
第5章 ソフトバンク孫正義と、ユニクロ柳井正の失敗学
孫正義(ソフトバンクグループ創業者)
柳井正(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)

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