2013年7月22日

『「経営」が見える魔法のメガネ』坂根正弘・著 Vol.3289

【コマツに学ぶ「強み」の作り方】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822274217

本日の一冊は、どん底のコマツを救い、「コムトラックス」で大逆転した坂根正弘・現コマツ相談役による経営論。

「コムトラックス」というのは、コマツが売った車両の位置や稼働時間、稼働状況などの情報が得られるシステムのことで、開発のきっかけは、じつは1990年年代後半に日本で起こった盗難事件だったそうです。

<郊外にある無人のATM(現金自動預払機)を建機で建物ごと破壊し、中に入っている現金を盗み出す。こうした事件をニュースで見た記憶のある方もおられるだろう。蛮行に使われたのは、工事現場などから盗難にあった建機だった>(米倉誠一郎教授による「解説」)

盗難をなくそうと発明された技術は、やがて顧客のもつ建機をマネジメントする機能につながり、それが未払い防止、顧客の人件費削減、メンテナンス需要創出にまでつながって行きます。

また、全世界30万台の建機の稼働状況がわかるため、需要の増減をいち早く知り、生産のムダをなくすこともできるそうです。

建機の稼働状況が景気の先行指標になる、というのは、投資家にとっても興味深い話ではないでしょうか。

そして、個人的に読んで興味深かったのは、氏がよく言う「ダントツ経営」の詳細。

「ダントツ技術」と「ダントツ商品」「ダントツサービス」をもって、「なくてはならない」会社になるという考え方は、確かに企業の交渉力を高め、利益を増大させると思います。

氏を含め、企業を再生させた経営者の本を読むと必ず、最初に「商品の絞り込み」を行っています。

やはり、強みを作るには、資源を投入する領域をぐっと狭め、ダントツのナンバーワンを目指すこと。

経営はもちろん、個人のキャリアにとっても得るところが多い一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「ないと困る度合い」が企業の価値

すべてで勝てることなど少ない。捨てる部分を作って、強い部分に磨きをかけるという「一点突破主義」の攻めの手法だ

建機の需要は景気の先行指標と言われています。ただ、実際の稼働状況を知れば、もう一歩進んだ先行指標になりますよね

日本の変動費は安かった。人件費は高いのですが、生産性も高いため加工コストは高くない。現地生産比率が低かったこともあり、日本の変動費は中国よりも安い。タイと同じくらいでした。ここに気づけば問題は半分、解決したようなものです。本質が見えましたから。日本でもモノ作りは十分にやっていける。高すぎる固定費さえ減らせばいい

世界の拠点から送られてくる営業報告も進歩しています。「バッドニュース」は赤い文字、黒い文字が「ニュートラルニュース」、青い文字が「グッドニュース」になります。最重要の項目は太字で書いてあります

「協力会社を叩かない」が大原則

一度出した仕事は社内に引き揚げない

当時、銀行からの資金調達に困る企業が出てきました。そこで、当社は支払いを現金にしました。新規に設備を導入したばかりのところには、コマツが設備を買い取りリースしました。さらに、コマツの幹部が銀行に一緒に行き「おたくが貸さないなら、コマツが貸す」とまで言いました。そこまですれば銀行もお金を貸しますね。その代わり銀行には定期的に協力企業さんの経営状況を説明することにしています。こうやって苦楽を共に経験し、積み上げることで、いい関係を築いてきました

社長にノーと言えない取締役会が活性化するわけありません

社長にノーと言える取締役会を作るには、社外の役員がいることが絶対条件

社長になりたいと強く思っている人は、社長にしたくなかったですね。自分がトップになったらこうするんだ、と強く思っていると、すべてを変えてみたくなります。今までの路線を全部否定し大向こうに受けるような新機軸を打ち出したくなるんですよ

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『「経営」が見える魔法のメガネ』坂根正弘・著 日経BP社
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◆目次◆

プロローグ 「見える化」の達人は未来を読む
1時間目 「ダントツ経営」への道
     「ないと困る」会社を目指せ
2時間目 「見える化」が強くする
     本質を見極める力を養え
3時間目 為替に負けない生産
     日本の強みをフル活用
4時間目 世代を重ねて進化する
     有言実行が強さを生む
解説 世界に冠たるイノベーター、坂根正弘の神髄
(米倉誠一郎・一橋大学イノベーション研究センター教授)

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