2013年5月23日

『負けかたの極意』野村克也・著 Vol.3229

【良すぎる。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062183501

本日の一冊は、「再生工場」の異名を取る名監督、野村克也氏による、負け方論。

監督生活24年で1565勝1563敗。

わずかに勝ちが上回っている野村監督だからこそ書ける内容、といえばそうですし、われわれ読者も望んでいる内容ではありますが、やはり企画成立までにはひと悶着あったようです。

「はじめに」で著者は、こう書いています。

<「負け方について書いてください」出版社から要請を受けたとき、正直、腹が立った>

結局は、思い直して書いてくれたそうですが、これは編集者のファインプレーだと思います。

個人的には、これまで読んだ野村監督のどの本よりも面白かったです。

本書の冒頭に、鶴見俊輔さんという哲学者が「敗北力」について書いた短文が掲載されているのですが、本書はこの軸に沿って書かれています。

<敗北力とは、「どういう条件を満たすとき自分が敗北するかの認識と、その敗北をどのように受け止めるかの気構えから成る」>

著者自身がプロデビューで味わった屈辱のエピソード、一度は敗北した選手を再生させた手法、勝つための力、ノウハウの蓄え方。

往年の名選手のエピソードも登場し、じつに読み応えのある一冊です。

今日は、株価が大暴落して、敗北を味わった方が多いと思いますが、本書を読めば、あら不思議。

きっとエネルギーが湧いてくるはずです。

ぜひチェックしてみてください!
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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いうなれば、勝ちはパァーッと盛り上がるが冷めやすい“一瞬の恋”。対して負けは、たとえ嫌なことがあっても、必要と思えばきちんといってくれる“悪友”といったところだろうか

再生で大事なのは、その選手に足りないものに気づかせてやることだ

周囲からは「もはや限界」と見られていても、何かひとつ新たな武器を身につけることで、もうひと花咲かせることは充分可能である

痛い目に遭わないと、人間はほんとうには変われない。だからこそ指導者は、ときにはあえて失敗させることも必要なのである

その選手の将来性を判断する基準のひとつとして、私が注目していることがある。三振したり、KOされたりしたとき、どんな顔でベンチに引き上げてくるか、である

目先の勝利にこだわるあまり、肝心の「人」を殺してしまっては何にもならない

元阪急ブレーブスの福本豊に私は訊ねたことがある。
「盗塁とは何か?」
すると、“世界の盗塁王”はこういった。
「それは眼です」

百パーセント理想の状態でないのは、たしかに環境のせいかもしれない。だが、そのなかで百パーセントの力を発揮しないのは、自分自身のせいなのだ

「これ」と思った人材を抜擢、信頼し、結果が出るまで待つことができるか。言い換えれば、近い将来の大きな成果のために、目先の利益をあえて捨て、ある程度の失敗や負けに目をつぶるだけの覚悟を決められるか──リーダーには、それだけの度量が求められるということである

「この監督についていけば、いずれ勝たせてくれる」「この監督のいう通りにやっていれば、必ず結果は出る」そのように思わせることが何よりも大切だった。「信は万物のもとをなす」という言葉があるが、選手の信頼があってこそ、はじめて監督は自分の目指す野球を実践できるのである

張本勲が現役時代に残した名言がある。
「夜の素振りは、おれの睡眠薬だ」

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『負けかたの極意』野村克也・著 講談社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062183501

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◆目次◆

第一章 人は勝利から学ばない
第二章 敗者の特権
第三章 再生も負けからはじまる
第四章 負けかたの極意
第五章 負けを活かすために何が必要か
第六章 負けを活かすリーダーの条件

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