【経常利益2450倍、の怪物小売】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/478550451X
今日はリスクを取って、言いたいことを言わせてもらいます。
最近のビジネス書は、サラリーマン根性の編集者がサラリーマン社長に書かせたサラリーマン騙しの本が多く、しばしばうんざりすることがあります。
虚業は実業に資することで初めて意味を成すわけですから、貴重な働き手の時間を頂戴する以上、ビジネス書の内容は、やはり結果に直結するものでなければならない。
エンタメじゃないんだから、読者にウケるために作る、ネタのために作るといった、目的を失ったビジネス書は、いい加減終わりにしてもらいたいのです。
そういう意味で、最近面白いのは、商業界さんの作ったいぶし銀のビジネス書。
表紙もタイトルも、決して洗練されているわけではないのですが、先日ご紹介した『俺のイタリアン、俺のフレンチ』なども、中身がべらぼうに面白く、商売の役に立ちます。
※参考:『俺のイタリアン、俺のフレンチ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4785504544
同様におすすめしたいのが、本日ご紹介するドン・キホーテ創業者、安田隆夫さんによる『情熱商人』。
この「失われた20年」に、何と売上高450倍、経常利益2450倍を実現した、ドン・キホーテの成功の秘密が綴られた、貴重な一冊です。
ドン・キホーテと言えば、旗艦店である新宿・歌舞伎町のお店が連想され、いかがわしい印象のある方も多いと思いますが、現在は、ホームセンターの老舗ドイト、GMSの老舗・長崎屋を傘下に収めるなど、流通コングロマリットとして脱皮しつつあります(2012年12月末時点で、合計249店舗)。
本書には、そんなドン・キホーテの戦略と、安田氏が次に狙う市場、さらには売れる小売現場を作るためのノウハウが書かれています。
創業者が自身の経験を伝えることを諦めることで実現した現場への権限委譲、有名になった「圧縮陳列」の考え方、サプライズを演出するためのコンセプト作り、順調に拡大しているPB開発、さらにはドン・キホーテ社内で徹底されている心得・行動指針までが公開されています。
起業家の啓発書としても役立つ内容で、とくに終わりの方の言葉はいい刺激になりました。
<野心を抱く起業家たるもの、勝負をしていてツキのあるときは、あえてブレーキを踏まずに行けるところまで行くべきである。これが(勝ちに鈍感な)凡人にはなかなかできない。すぐビビッて、腹八分目などという中途半端な状態に満足してしまう。少なくともこれでは、永遠にビッグにはなれない>
本気で成果を出したい起業家、投資家は必読の一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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スイーツ(甘味商品)なら、10人くらいのお客さまからなる甘党委員会をつくって、「ブラインドテストをやったらこれが1位になりました」と情報発信をすれば、スイーツ好きのお客さまはその商品に飛びつくだろう
A店は使い捨ての100円ライターが「0円」、B点では「3円」で売られている。この場合も、お客さまには「3円」のほうが断然強いインパクトを与えるはずだ
「良いプライシング」とは何か。基本的にはお客さまに「自分は賢い買い物をした」という、満足感と信頼感を持っていただくことだろう
閉塞感からの解放が、流通小売業最大のビジネスチャンスになる。特に今、人々が渇望しているのは“祭り”だ
常にお客さまの“見落とし感”が残るように演出し、お客さまが「後ろ髪を引かれながら」店を出るような気持ち、すなわち「近いうちにもう一度来たいな」と思っていただかなくてはならない。そのさじ加減が難しいのだ
プロは「脇役商品」を「主役」にする
1号店立地は無理してでも理想を貫け
2009年秋に本格スタートしたドン・キホーテの完全オリジナルPB「情熱価格」の売上は順調に伸びており、前期(2012年6月期)で約170億円(前年同期比121%)、今期(2013年6月期)は250億円(同147%)を目指している
今は「店が商圏をつくる」時代
総合業態だからこそ、ほかにない独自性の発揮と思い切った絞り込みが不可欠
今後ドンキはファミリーを取りにいく!
これからは店舗開発から業態開発、さらには商品開発の時代になる
企業の規模が拡大して、多くの人を使う立場になったとき、彼ら社員にその追体験をさせるのはしょせん無理なのだと諦めなければならない。これが難しいのだ(中略)つまり、創業時の「諦めない力」と、一定の規模拡大後の「諦める力」──中小企業から脱皮して大企業になるためには、経営者にこの相反する2つの資質が必要なのである
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『情熱商人』安田隆夫・著 月泉博・編著 商業界
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/478550451X
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◆目次◆
編著者まえがき
序 章 ドン・キホーテってどんな企業?──その軌跡と奇跡
第1章 総論──流通大激変時代の突破力
第2章 各論──「ドンキ流」勝ち残り戦略の真髄
第3章 若き商人と起業家に贈る言葉
著者あとがき
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