2013年3月24日

『ヤバい経営学』フリーク・ヴァーミューレン・著 Vol.3169

【痛快! 経営における不都合な真実】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492502467

本日の一冊は、ロンドン・ビジネススクールの名物准教授が、経営の世界における「不都合な真実」を明かした一冊。

本書を読むまでもなく、学術研究の世界では、経営の世界の常識が否定されていたり、まことしやかに伝えられている経営論が一刀両断されていたりします。

それでもなお、経営における間違った認識が改められないのは、それが人間にとって、あるいは企業を取り巻く当事者にとって、「不都合な真実」だから。

しかしながら、本当に賢明な経営をしようと思ったら、本書で書かれている真実は知っておいた方が良いでしょう。

いくつか事例を挙げるとすると、たとえばこんな質問。

カリフォルニア州の家庭に対し、電気やガスの節約を呼びかけるチラシのメッセージを作りました。最も効果があったのは、次のうちどれでしょう?

1.節約しよう! 環境のために。
2.節約しよう! 社会のために。
3.節約しよう! あなたの出費も減らせるのだから。
4.節約しよう! みんなもやっているのだから。

これは本書に書かれている質問ですが、じつは正しい答えは、4番の「節約しよう! みんなもやっているのだから」。

社会心理学を学んだ方はご存じのように、<「他の人たちがやっている」という単純な事実は、私たちの意思決定や行動に大きく影響している>のです。

しかしながら当然、「他の人たちがやっている」というのは、イコール正しいわけではありません。

そして人間は、「環境のために」や「社会のために」という美辞麗句には弱いものなのです。

本書には他にも、製薬会社がMR活動をやめられない理由(利益を明らかに圧迫している)、間違った改善をしてしまう「選択バイアス」、イカロスのパラドックスなどについて解説しており、失敗の原因となり得る心理的要因を幅広く紹介しています。

なかでも興味深かったのは、「クレオソート・ブッシュ」という言葉。

クレオソート・ブッシュは、砂漠に生息するハマビシ科の植物ですが、いったん生えると、周囲に他の植物が生えないように、土壌に毒の成分を放出しながら繁殖するのだそうです。

企業も特定の事業で成功すると、そこにばかり集中するようになり、新たな成長の芽を摘んでしまいがちになりますが、本書ではそこに警鐘を鳴らしています。

また、よく言われる「フォーカス戦略」についても、原因と結果が逆と批判しています。(業績が悪くなったから、収入源を広げたのであって、その逆ではない。同様に、業績の良い企業は、フォーカスのせいでリスクにさらされている可能性があり、必ずしも健全なことではない)

ビジネス書の世界の常識が打ち砕かれる、興味深い一冊。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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企業買収で買う側の企業は損をすることが研究でわかっているのに、なぜこんなにも多くの企業買収が多くの業界で起き続けているのだろう

「他の人たちがやっている」という単純な事実は、私たちの意思決定や行動に大きく影響している

実は、製薬会社の中で一番の金食い虫は、マーケティングだ(中略)そして、マーケティング費用のうちで最も大きな支出は製薬会社の営業活動、いわゆるMR活動にかかる費用だ

自分だけが小さな損をするよりも、他の人と同じ失敗をして大きな損をするほうが、ずっとましだと私たちは感じるのだ(プロスペクト理論)

社会心理学では、人は少数意見を述べたがらない、という現象が知られている

これがアビリーンのパラドックスだ。自分たちが間違った方向に向かって進んでいることに気づいても、誰もそれを口に出さなければ、行き詰まるまでみんなでその現状を維持してしまう

酔っ払いの自転車乗り
「そこの暗がりで失くしたんですが、そこだと暗すぎて見つけることができないんです。だから、明るい街灯の下で探しているんです」

クレオソート・ブッシュは砂漠に生息するハマビシ科の植物で、周囲に他の植物が生えないように、土壌に毒の成分を放出しながら繁殖する

会社が生き延びるためには、さまざまな小さな収入源を持っていることが重要

会社の規模と財務的な成功は、関係していることが多い

アナリストたちが「売り」を推奨するケースは、平均で五%にも満たない。通常は五%以上の数の上場企業で、株価が下がっているにもかかわらずだ

経営者がストックオプションを大量に持っているときは、経営者はリスクを積極的に取るようになる

低迷企業は、もっと儲かるビジネスを探そうとして、多角化することが多い。つまり、一つの事業に集中していないのは、業績低迷の原因ではなく、結果なのだ

「本当に革新的になりたいなら、お客さんのことを忘れなきゃいけない」(ファルーク・チャウドライ)

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『ヤバい経営学』フリーク・ヴァーミューレン・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492502467

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◆目次◆

Introduction モンキーストーリー
Chapter1 今、経営で起きていること
Chapter2 成功の罠(とそこからの脱出方法)
Chapter3 登りつめたい衝動
Chapter4 英雄と悪党
Chapter5 仲間意識と影響力
Chapter6 経営にまつわる神話
Chapter7 暗闇の中での歩き方
Chapter8 目に見えるものと目に見えないもの
Epilogue 裸の王様

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