2013年2月20日

『禅とハードル』南直哉、為末大・著 Vol.3137

【生きること、働くことの意味に関して仏教が教えてくれること】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4905425360

本日の一冊は、世界選手権400メートルハードルで前人未到の日本記録を打ち立てた元プロ陸上選手の為末大氏と、青森県恐山菩提寺院代の南直哉氏による対談本。

お金信仰が壊れ、なぜ生きるのか、なぜ働くのか、わからなくなっている人が多いと思いますが、本書はそんな人たちに、生きることの意味や働くことの本質を教えてくれる一冊です。

いきなり興味深かったのは、以下の部分。

<我々人間に共通の最大の問題は、「なぜ生まれてきたか」ということがわからないことなんですよ。生まれてくる根拠が欠けている。つまり自分が自分を肯定するための根拠が、見いだせないということなんです>

だから、われわれは、仕事を求める。なぜなら、<誰かにかわいがられたり、褒められたり認められたりする経験をしない限りは、自分の存在理由や存在価値を決して実感できないようになっている>からです。

では、どうすれば良い職業人生が歩めるのか。

本書には、そのヒントも記されています。

<「好きなこと」を認められるための「手段」にしてしまうと、苦しくなってしまうわけですね。本来、好きなことをやるのは「遊び」であって、遊びには「目的」がないものなんです(南)>

また、われわれが資本主義経済とどう付き合っていくか考える上でも、重要なヒントが示されています。

<現代では人間は、生まれてきた結果、市場の世界に入るしかないけれど、市場のために生まれてくるわけじゃないのですから。その場合、誰かがどこかで、結果に結びつかなかったプロセスを、これは大事だなって言ってくれないと、その人は存在を肯定されないでしょう>

仕事が忙しくて、本質を見失ってしまいそうな時に、紐解きたい一冊。

これはぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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何かをすっぱりやめて次に行けるのは、良い結果を残した残さないではなく、その場その場でベストを尽くしたときなんですよね(為末)

結局伸びる人間というのは、自分で課題を設定できる能力がある者だけなんですね(南)

我々人間に共通の最大の問題は、「なぜ生まれてきたか」ということがわからないことなんですよ。生まれてくる根拠が欠けている。つまり自分が自分を肯定するための根拠が、見いだせないということなんです。誰かにかわいがられたり、褒められたり認められたりする経験をしない限りは、自分の存在理由や存在価値を決して実感できないようになっているんですね(南)

「好きなこと」を認められるための「手段」にしてしまうと、苦しくなってしまうわけですね。本来、好きなことをやるのは「遊び」であって、遊びには「目的」がないものなんです(南)

世の中は表向き、楽しく生き生きと充実していなくちゃいけないという前提がある。どうしてそういう前提があるかというと、本当は楽しくも前向きでもないからです(南)

信じるというのは、本来は裏切られてもかまわない、というものであるべきです(南)

生きているほうが良いと根拠なく断定するためには、強く信じる対象が必要なんです(南)

資本主義経済というものは、「時間差」と、距離などの「空間差」でお金を儲けるしくみですよね。投資は時間の差異で利益を上げるし、貿易は距離の差異で利益を上げる。つまり「差異」が利益を生むわけです。この考え方が人間の意識に強く投影されると「個性」というものになるんです(南)

結局、夢や希望を信じている世界というのは、前のめりになってる人なんです。今の自分じゃなくて、常に未来の自分、要は前に向かって実存を投げてるんです。前にばっかり投げていくから、現在が空洞になっていくんですね(南)

現代では人間は、生まれてきた結果、市場の世界に入るしかないけれど、市場のために生まれてくるわけじゃないのですから。その場合、誰かがどこかで、結果に結びつかなかったプロセスを、これは大事だなって言ってくれないと、その人は存在を肯定されないでしょう

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『禅とハードル』南直哉、為末大・著 サンガ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4905425360

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◆目次◆

プロローグ
対談パート1
坐禅
対談パート2
エピローグ
あとがき

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