2013年1月1日

『「黄金のバンタム」を破った男』百田尚樹・著 vol.3087

【「日本復活」のエネルギーをくれる一冊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569679161

昨日は、多くの方がTVで紅白歌合戦を観たことと思いますが、じつは、関東キー局の歴代最高視聴率は、1963年12月31日の、「第14回NHK紅白歌合戦」。

この時の視聴率は、81.4%にも及んだと言われますが、じつは非公式には、これを上回る視聴率が存在しました。

それは、終戦後1959年11月5日に大阪で行われた、世界チャンピオン・ペレス対世界ランキング1位・矢尾板の世界タイトルマッチ。

戦後、ボクシングは敗戦で打ちひしがれた日本人の希望の光であり、多くの人が世界チャンピオンの誕生を望んでいたのです。

本書は、そんな戦後のボクシングの歴史を、名著『永遠の0』の著者、百田尚樹さんが描き出したもの。

未開の日本ボクシングを変えた名コーチ・カーンと、引退直前からチャンピオンに輝き、日本のボクシング界に道を開いた白井の師弟愛、悲劇の天才、矢尾板、青木…。

日本ボクシング界を盛り上げた名選手たちの、色とりどりの人生を読んでいると、成功には、かくもさまざまな要因が絡んでいるものかと、ため息が出ます。

そして、数多くの偶然を経て、「黄金のバンタム」ジョフレを破り、バンタム級世界チャンピオンに輝いたファイティング原田の、運の強さ、努力の凄まじさに、感動するのです。

本書によると、かつてモハメド・アリはこう言ったそうです。

「死に物狂いの練習に耐え抜いてきた者こそが、厳しい互角の勝負において、心の底まで降りて行って、勝利に必要な一オンスの勇気を持ってくることができる」

その一オンスの勇気を手に入れたファイティング原田とは、どんな人物だったのか。なぜ彼は、そんなにストイックに自らの仕事に没入することができたのか。

ぜひ本書を読んで、多くのビジネスパーソンに知っていただきたいと思っています。

2013年以降は、知識の時代ではなく、意志の時代になると思いますが、そんな時代だからこそ、ぜひ読んでいただきたい本。

最高に熱くなれること、請け合いの一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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彼(カーン)はまず白井に徹底的に防御の大切さを教え込んだ。それまでの日本のボクシングは肉を切らせて骨を断つという「肉弾戦」スタイルが主流で、防御は卑怯者のするものという見方があった

「日本は戦争でアメリカに負けた。今、日本が世界に対抗できるのはスポーツしかない。ヨシオ、君は自分のために戦うと思ってはいけない。それだけでは苦境を乗り越えられない」(カーン)

「俺は素質のある方じゃなかった。だから人の二倍三倍やらないとダメだったんだ」(原田)

三迫も米倉も悲運のボクサーだったが、今こうして振り返ってみると、その戦いは決して無駄ではなかったことがわかる。彼らはその貴重な経験を生かして、偉大な指導者として日本ボクシング界を大いに発展させたからだ

白井が三度目の防衛戦を迎える前、白井の目の古傷が試合中にカットするかもしれない場合に備えて、カーンはアメリカから新発売の止血剤を取り寄せた。そしてそれが実際に効くかどうかを調べるために、彼はカミソリで自分の手を切り、その傷口に薬を塗った。そして血が止まるのを確認すると、それを白井に見せて、「ヨシオ、これで万が一、試合中に目を切っても大丈夫だ」と言った。白井が、この人のために頑張ろうと思ったのはいうまでもない

青木には大きな欠点があった。それは天才にありがちな練習嫌いだった

「俺が青木に負けたら、努力することが意味を失う。一所懸命に練習しているボクサーが、ろくに練習しないボクサーに負けるなんてことがあったら、おかしいじゃないですか」(原田)

原田に「鬼の笹崎」がついていたように、海老原に人生を懸けた金平がついていたように、もし青木勝利にいい指導者がいれば、彼は世界チャンピオンになっていたかもしれない。そうなればまったく別な人生が待っていたことだろう

かつてモハメド・アリはこう言った。「死に物狂いの練習に耐え抜いてきた者こそが、厳しい互角の勝負において、心の底まで降りて行って、勝利に必要な一オンスの勇気を持ってくることができる」

「他のことはいつでもできる。でも、ボクシングは今しかできない。それに世界チャンピオンとリングで戦える人生なんて、他に比べることができないじゃないか」

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『2052 今後40年のグローバル予測』ヨルゲン・ランダース・著 日経BP社
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◆目次◆

第一章 日本ボクシングの夜明け
第二章 ホープたちの季節
第三章 切り札の決断
第四章 スーパースター
第五章 フライ級三羽烏
第六章 黄金のバンタム
第七章 マルスが去った
第八章 チャンピオンの苦しみ
第九章 「十年」という覚悟
解説 増田俊也

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