2012年11月27日

『IKEAモデル』アンダッシュ・ダルヴィッグ・著 vol.3052

【企業文化が競争力につながる、IKEAの強さとは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4420310618

先日紹介した『アイデア・ハンター』で印象的だったのは、自分の技やビジョンが、アイデアを選別するフィルターになる、という視点でした。

※参考:『アイデア・ハンター』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453231822X

ウォルト・ディズニーは、家族連れを楽しませる娯楽施設を目指していたから、さびれたアメリカの遊園地ではなく、デンマークのチボリ公園を見学した。ビジョンがあれば、そこに情報が集まってきて、結果、事業も異なったものになる、というのが、本から得られた教訓でした。

本日ご紹介する『IKEAモデル』は、このビジョンの大切さを、じつに深い部分まで教えてくれる名著。

既に2回読んでいますが、ここまで読み返したいと思う本に出合ったのは久しぶりです。

本書は、個性的なビジネスモデルで知られる世界最大級の家具小売、IKEAの前CEO、アンダッシュ・ダルヴィッグが、IKEAの独自性の本質を語った一冊。

著者が同社のCEOを務めたのは、1999年から2009年の10年間ですが、同社はこの10年間に売上を年平均11%伸ばし、従業員を約7万人増強しています。

グローバル化の波に乗り、世界規模で拡大してもなお、揺らがない個性。それは一体どこから生じているのか? そう、それこそが「ビジョン」の力なのです。

本書によると、IKEAの創業者イングヴァル・カンプラードは、『ある家具商人の言葉』という文書のなかで、<美しく上質な商品の多くが富裕層のためだけに作られていることを指摘>し、<財力が限られた人でもデザイン性が高く質の良い家具を手に入れられるようにしたい>と宣言しました。

このビジョンがあったからこそ、同社は顧客を研究し、せまい家でも快適に過ごせる洒落た家具を、安く提供することができたわけです。

著者が成功の理由と指摘する同社のバリューチェーン管理も、このビジョンから生まれたもの。

本書を読むと、一企業がどうやって強さや独自性を獲得するのか、どうやって良い企業市民へと進化するのか、そのプロセスがよくわかります。

ノーベル賞経済学者のマイケル・スペンスは、本書を3度読んだらしいですが、その気持ちがよくわかる、深い内容です。

経営者および未来のリーダーは、ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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企業は株主に利益を還元するだけでなく、貧困を削減する、環境を改善する、平等を促進するなどのより大きな目標を設定しなければならない

企業がこのような高邁な目標に本気で取り組んでいることが伝わると、最高の人材が集まるようになる。食い扶持を稼ぐためだけではない仕事をしたいと考える人々だ

創業者イングヴァル・カンプラードは『言葉』のなかで、美しく上質な商品の多くが富裕層のためだけに作られていることを指摘した。彼は、イケアはこの慣習を変え、財力が限られた人でもデザイン性が高く質の良い家具を手に入れられるようにしたいと宣言した

イケアは収納問題に真剣に取り組み、狭い家に暮らす人の不便を解消することに力を注ぐ。大邸宅に住んでいるのは一部の人だ。ほとんどの人は、持ち物をしまうのに適当な場所を見つけて取り出しやすく収納するのに苦労している。また、決して広くはない空間を最大限に効率よく使わなければならない

成績は悪くても価値観が会社にふさわしいマネジャーには二度目のチャンスが与えられるべきだ。成績が良くても価値観が会社にふさわしくないマネジャーは職を解かれるべきだ。会社の文化を重視していることを組織に対して態度で示すには、妥協を許さない姿勢を貫かなければならない

企業の社会的・環境的責任は、納税のように確かな貢献になるべきだ。多くの企業は納税額を顧客に知らせたりしない

イケアの財務方針は極めて保守的であり、金は使う前に稼ぐべきという姿勢を貫いている。成長は重要だが、まずは今の顧客を大切にしてから増やすことを考えるべきだ

時間がますます貴重になっている現代では、すべてが揃っている店で買い物できるという利便性がこれまで以上に大きな意味を持つ

会社が提供するものに関して独自性を確立するのが商品レンジだとすれば、価格競争力と収益性の大部分を決定するのはサプライチェーンだ

少しずつ変化を重ねていくことも大切だが、本当に効果があるのは投資とリスクを伴い、長期的な観点からなされる大転換だ。これを実現するには会社のビジョンと価値観という指針が必要であり、投資を決断し、場合によってはリスクを負うことのできるオーナーが必要だ

ごく基本的な話をすれば、人は空腹なときは食べることに意欲的だ。疲れているときは眠ることに意欲的だ。よきリーダーシップを実現するには、自分が必要としていることを知り、その欲求を土台とすることが大切だ
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『IKEAモデル』アンダッシュ・ダルヴィッグ・著 集英社クリエイティブ

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4420310618

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◆目次◆

第一部 社会的責任を伴うビジョン
第二部 バリューチェーン管理を通じて差別化する
第三部 市場リーダーシップ、そして
    バランスのとれた市場ポートフォリオ
第四部 長期的な観点で築く

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