2012年10月6日

『完全なる経営』A・H・マズロー・著 Vol.3000

【祝・3000号!を飾るのは…】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532148634

「崇高なる精神」「雪山の崇高な美しさ」。

「崇高」とは、おそらくわれわれが持っている言葉の中でも、もっとも美しい言葉、最大級の賛辞の一つだと思いますが、一体、この「崇高さ」はどこから生まれてくるものなのでしょうか。

崇高さのイメージとは、理想に向け、真っ直ぐに向かっていく様であり、それは、「探求する心」に似ています。

古代ギリシャ人は、これを「フィロソフィア」(filo+sophia=智を愛する心)と呼びました。

私的な話で恐縮ですが、メルマガ「ビジネスブックマラソン」が3000号を迎える本日は、この「フィロソフィア」のある一冊をご紹介しようと思います。

栄えある3000号を飾るのは、偉大なる心理学者にして、「自己実現」概念の提唱者、アブラハム・H・マズローによる名著、『完全なる経営』。

あのドラッカーをして「マズローの最も重要な、不滅の作品」「私にインパクトを与え続けてくれる知恵の泉」と言わしめた、経営者必読の一冊です。

マズロー生前の手記を元にまとめたものであり、本当の「自己実現」を生む人間主義経営とは何か、生涯探求し続けたマズローの思索の跡をたどることができます。

<人間の本性はどれほどいい社会を築きうるのか、社会はどれほどいい人間性をもたらしうるのか、社会の本性はどれほどいい社会を実現しうるのか>

これこそが、マズローが持っていた問題意識であり、現在の不信渦巻く日本社会・企業に必要な視点ですが、本書にはこれらに関するヒントがいくつも載っています。

本書によれば、<高度に発達した人間の場合、仕事はアイデンティティや自己の一部、すなわち、その個人の自己規定の一部となっている>。

また、<仕事の大義名分は自己の一部として取り込まれており、もはや世界と自己との区別は存在しない>。

健全な人間は、健全な事業に参加し、それと一体化するものであり、健全なチームでは、<だれが得点するかなど大した問題ではなくなる>。

そう、われわれが真に健全な人間となった場合、われわれの本性は健全な社会を「作り得る」のです。

そのために、教育はどうあるべきか、リーダーはどうあるべきか、組織はどうあるべきか、マズローが思索したのがこの手記。

これを読むことは、現在の退行しつつある日本社会の負のトレンドを逆転させる意味を持つと、個人的には信じています。

3000号を機に、おすすめしたい珠玉の一冊。

ぜひ、この週末に読んでみてください。

—————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
—————————————————

高度に発達した人間の場合、仕事はアイデンティティや自己の一部、すなわち、その個人の自己規定の一部となっている

個々のセラピストの力ではどうすることもできないような問題でも、良き共同体、良き組織、良きチームが解決してくれる

自己実現をもたらす仕事に取り組む場合、仕事の大義名分は自己の一部として取り込まれており、もはや世界と自己との区別は存在しなくなる

この世に存在する人間は、程度の差こそあれ、ちっぽけなものなのだ。そうであれば、偉大な事業に何らかの形で参加し、それと一体化することが、健全で強固な自尊心を確保する上で必
要不可欠と言える

組織の健康度を測る基準がなければならない

何であれ人々の恐怖や不安を増すものは、退行に向かう力と成長に向かう力が均衡した状態に影響を及ぼす。その結果、均衡は崩れ、退行に向かう力が成長に向かう力よりも大きく作用するようになる

自尊心形成の基礎をなすのは、他者からの尊敬や賞賛──とりわけ人生の早い段階で経験した尊敬や賞賛──なのである

本当の意味で「チームらしい」チームでは、チームの利益がメンバーの利益に優先しているのである。いや、このような言い方すら適切ではない。なぜなら、本当にチームらしいチームであれば、チームの利益とメンバーの利益との違いはなくなるからだ。チームの利益はメンバーの利益となり、もはや区別はつかなくなる。したがって、だれが得点するかなど大した問題ではなくなるのだ

自己を表現したり自己の内面を表出したりすることは、一般の人びとには認められており、奨励もされている。だが、多くの場合、リーダーはそのような行動を取るべきではない(中略)
彼らが自分の思いを明かしてしまうと、組織内の士気は低下し、だれもが自信を失ってしまう

曖昧さや無計画性を受け入れることのできる能力が、創造性と深い関係にある

われわれは実際的人間と理論的人間を二文法的にとらえる傾向を強くもっている(中略)だが、健康な人間の研究を通じて明らかになったことは、健康な人間はどのような行動も取れるということだ

一人ですべてのことをなし遂げられる人間はいない

だれかがリーダーで、その他の人間はフォロワーということではない。社会の全成員が目標を明確に理解し、全力を尽くして各人になしうる最大の貢献を果たすのが理想的な社会変革の姿

————————————————

『完全なる経営』A・H・マズロー・著 日本経済新聞出版社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532148634
————————————————-

◆目次◆

義務、仕事、使命に対する自己実現者の態度
自己実現、仕事、義務、使命に関する追記
自己実現化した義務
欲求階層のレベルに応じた経営管理原則
進歩的な経済活動と経営管理
経営管理方針には個人差は無視できない
成長に向かう力と退行に向かう力のバランス
進歩的な経営管理論ならびに組織論の目標と方向性に関する覚え書き
退行に向かわせる力
職場における自尊心に関する覚え書き
心理学的実験としての経営管理
愛国主義の一形態としての進歩的な経営管理
心理的健康と優れた管理者・監督者・職長等との関係
心理的健康と優れた管理者との関係に関する追記
進歩的な経営管理に関する覚え書き
進歩的な経営管理の副産物
シナジーに関する覚え書き
いいことの量は際限ないというシナジー説と、いいことの量は
限られているという反シナジー説
シナジーに関する追記
相互関連する全体像の動態、および全体論的・有機体論的思考
に関する覚え書き
B価値に関する覚え書き
リーダーシップに関する覚え書き
優れたひと──生まれつき優秀で優勢な人間
きわめて優秀な上ない司
レイク・アローヘッドにおける覆いのない非構造的グループに
関する覚え書き
創造性に関する覚え書き
創造性に関する覚え書き(追記)
起業家に関する覚え書き
利益、税金、コスト、金銭、経済学等を再定義するための覚え書き
利益に関する覚え書き(追記)
利益、コスト等を再定義するための覚え書き(追記)
進歩的ないいセールスパーソンと顧客

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー