2012年10月1日

『外資系金融の終わり』藤沢数希・著 Vol.2995

【あまりに美味しい、外資系金融のビジネスモデル】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478020892

名著『ライアーズ・ポーカー』や『ウォールストリート投資銀行残酷日記』『ヘッジホッグ』など、外資系金融の裏側を書いたお話は、どうしてこんなに面白いのでしょうか。

※参考:『ライアーズ・ポーカー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4775970623

それはおそらく、そこに「赤裸々」かつ「極端」な人間の欲や性が出ているから。

本日ご紹介する、人気ブロガー、藤沢数希さんの『外資系金融の終わり』も、そんな「赤裸々」かつ「極端」な一冊です。

著者は、欧米の研究機関にて、理論物理学の分野で博士号を取得し、外資系投資銀行に就職した人物。

投資銀行では、マーケットの定量分析、トレーディングに従事し、入社3年目ではやくも日本の上場企業の社長を超える給料をもらっていたようです。

本書の面白いところは、金融のプロの報酬体系(ヘッジファンド・マネジャーの場合、マネジメント・フィーが2%で成功報酬が20%)や、実際の相場を明らかにしている点。

クオンツだったら年収3000万円くらいで頭打ちになるとか、ジョン・ポールソンがサブプライムで「史上最大のぼろ儲け」をし、4130億円の報酬を受け取ったとか、AIGで世界を破綻の縁に追い込んだジョセフ・カッサーノが300億円のボーナスをもらった後に辞めて、悠々自適の暮らしをしているとか、ここまで赤裸々に報酬について書いた本も珍しいと思います。

実務家の立場から、なぜ外資系金融がここまでボロ儲けできたのか、その仕組みを考えていくと、世の中で儲けるための本質が浮かび上がってきて、じつにいい気づきになります。

著者いわく、<宝くじというのは世界で一番すぐれたビジネスモデル>で、金融は二番目に美味しいビジネスだそうですが、本書を読んで、その本質を学べば、三番目に美味しいビジネスが見つかるかもしれません。

ブログ感覚でさらりと読め、金融の基礎知識と、ビジネスモデルが学べる、興味深い一冊。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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トレーダーは最悪クビになるだけなので、こういう極稀にドカンと負けるリスクを取って、ふだんちまちま儲け続けて、安定して利益を出しているような顔をしているのがいいのだ。しかも、AIGでわかったことは、そういう複雑極まりないデリバティブを多数取り引きしていれば、巨額損失を出しても、他にポジションを管理できる人がいないので、クビにさえならないということなのだ。ちなみに、AIGでCDSをしこたま取引して世界を破綻の縁に追い込んだ部署の責任者だったジョセフ・カッサーノさんは、300億円ほどのボーナスをもらった後に会社を辞めて、悠々自適の暮らしをしているという

バーナンキが運用する、この世界最大のヘッジファンドだが、パフォーマンスはじつは絶好調なのである。リーマン・ショック直後のバーゲンセールのときに、非伝統的資産を買いまくった。そして、それらは大幅に値上がりし、莫大な金利や配当をFRBに支払い続けている

少しでも利回りが高いものを投資家が求めた結果、あらゆるリスク資産が買われ続け、リスク資産の利回りが低下していった

ギャンブルは時に愚か者に課せられた税金といわれるが、そのなかでも宝くじはチャンピオンである。だから、宝くじは多くの国で最高権力を握っている政府の専売事業となっている。こんなボロい儲けが出る商売を民間企業に簡単に渡すわけにはいかないのだ。そして、民間の手に渡ったボロい儲けが出る商売が「金融」である

金利と満期のグラフをイールド・カーブと呼ぶ。銀行というのは、満期の短い短期資金を、より期間の長いところで運用して、長短金利差で儲けているのだ

銀行はなぜ簡単につぶせないのか? それは銀行が決済機能という、現代の社会でなくてはならない金融システムを担っているからだ

大きな会社のIPOや企業合併などでは、時に数百億円の手数料が投資銀行に支払われる。そのお返しとして、株式調査部のトップ・アナリストが提灯レポートを書くのである

投資銀行は実際の買収の執行までやる。だから「買収金額の1%で10億円フィーをください」と請求できるし、クライアントもそんなもんか、と思って払ってしまうのだ

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『外資系金融の終わり』藤沢数希・著 ダイヤモンド社

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◆目次◆

まえがき──終わりのはじまり
第1章 大きすぎてつぶせない
第2章 金が天から降ってきた
第3章 金融ほどすてきなビジネスはない
第4章 サル山の名前は外資系投資銀行
第5章 ヨーロッパとアメリカの失われる10年+
第6章 金融コングロマリットの終焉
あとがき──大企業から個人の時代へ

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