2012年10月16日

『創造力なき日本』村上隆・著 Vol.3010

【アーティスト村上隆に学ぶ仕事の心構え】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041103304

「あまりに本質を突くと人に嫌われる」。

これは自分自身、経験を通して学んできたことですが(苦笑)、同様のことをやってしまっている奇特な本があったので、本日はそれをご紹介します。

ご紹介するのは、『創造力なき日本』。アーティストの村上隆さんが語った、仕事論、芸術論です。

村上隆さんと言えば、ルイ・ヴィトンや六本木ヒルズ、カニエ・ウェスト、ゆずとのコラボレーションが有名ですが、個人的には、ベルサイユ宮殿で個展をやるという大胆な試みに度肝を抜かれました。(これはニュースにもなりましたね)

そんな村上さんが語った仕事論、芸術論ですから、過激でないわけがありません。

<アーティストは、社会のヒエラルキーの中では最下層>
<現代美術で求められるのは、絵の才能などではなく“戦略”>
<アーティストは不幸と美をエンターテイメント化する道化>

など、アーティストから抗議を受けそうな「本質」を、ずけずけと言ってのけています。

アーティストから見た場合の評価はどうかわかりませんが、仕事論として見た場合、じつに興味深い主張がなされています。

<どれだけ絵が下手であっても、やり続けていれば何かしらの答えが出るもの>
<死線をさまようのにも近いようなところまで自分を追い込む>

などは、スキルばかり求めている若いビジネスパーソンに、ぜひ伝えたい教えです。

また、最近ロングセラーの条件に着目している土井にとっては、<芸術とは“死後の世界をつくること”>という話がじつに参考になりました。

今の時代のトレンドに注目しすぎることなく、時間軸を長くとって作品に取り組む。

良いインスピレーションが得られた気がします。

クリエイティブな仕事をする人、成果主義の職場で働く人、徒弟制度が根強い業界で働く方には、ぜひおすすめしたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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戦後刷り込まれた「ドリーム・カム・トゥルー」=「夢はいつか叶うもの」の方便の徹底が人を怠惰にした

「アーティストは、社会のヒエラルキーの中では最下層に位置する存在である。その自覚がなければ、この世界ではやっていけない」アーティストを目指す人間であるなら、まずはこのことを知っておくべきです

挨拶も満足にできない人間は、組織の中で生き残っていくことも、アートの世界で生き残っていくことも絶対にできません

才能がありながらも去っていく人たちが後を絶たない一方で、どれだけ絵が下手であっても、やり続けていれば何かしらの答えが出るものです

「アートを職業に選ぶなら、ほかのことはやらず、アートの歴史を学び、マーケットで売っていく戦略を立てなければならない」(弟子のMr.が『美術手帖』で語ったこと)

芸術作品には乗り越えなければならない領域があります。その領域に足を踏み入れていくためにはまず、「形なくして心は伝わらない」という基本をよく認識しておく必要があります

死線をさまようのにも近いようなところまで自分を追い込む時期があってもいい

「やりたいことをやりなさい」と言って、混乱ばかりをもたらす自由を与えていても仕方がありません。それをやめて、「今、世界のアートシーンはこうなっている」「そこで生きていくためにはこういうことをすべきだ」と教えるようになったら、日本のアート業界は変わっていくはずです

芸術とは“死後の世界をつくること”

「答えを見つけにくい時代には正論が流行する」
(ドワンゴ会長 川上量生氏)

みんな、作家の人生、伴侶、時代、そして何より、作家の不幸に期待しているのです。不幸にもかかわらず、とてつもない集中力でつくられた美しい作品、荒々しい作品、細かい作品が、その作家の人生の枠をはみ出しているときに感動するわけです。つまりアーティストは不幸と美をエンターテイメント化する道化なのです

自由と社会性と、どちらかに振り切るのもよくなく、振り子のように行ったり来たりを繰り返していくものなのでしょう。そして現在は、自由闊達から社会性のほうへと振り子を戻していくべき時期なのだと思います

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『創造力なき日本』村上隆 角川書店

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041103304
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◆目次◆

第一章 アート業界で生きていくということ
第二章 成功するための「修行(トレーニング)」と「仕事術
    (ワークスタイル)」
第三章 チャート式 勝つための戦略の練り方
第四章 「正論の時代」における極論的人の育て方
第五章 「インダストリー」としてのアート業界
特別対談 村上隆×川上量生

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