2012年7月13日

『大失敗にも大不況にも負けなかった社長たちの物語』 柴崎伴之・著 Vol.2914

【感動の起業エピソード集】

先日、出版ビジネスの視察を兼ねて、北京に旅行に行ってきました。

現地の出版社と意見交換する傍ら、大型書店を訪ねてきたのですが、拙著も含め、日本の著者の本が所狭しと並んでいました。

現在、日本人のビジネス書著者で一番人気があるのは、京セラ・KDDI創業者の稲盛和夫氏(『生き方』が100万部を突破)。

なぜかというと、氏は中国のカリスマ起業家、ジャック・マー(アリババを創業)が尊敬する人物だからです。

起業家というのは、前例のないことを始めるのが仕事ですが、その際、指針とすべきは一体何でしょうか。

数多くの起業家たちの自伝・評伝を読む限り、彼らは皆、志や信念を持っていました。つまり「社会はこうあるべきだ」という理想です。

もし、起業家に資質というものがあるとすれば、おそらくそれはこの「理想」を抱く才能ではないかと思います。

そして、「理想」は多くの場合、思い通りにならない「現実」から生まれてくる。

だからこそ、起業家は「現実」に潰されてはいけないのです。

本日ご紹介する一冊は、この「現実」に打ち勝ち、理想を実現した10人の社長たちを紹介した、評伝集。

本田宗一郎、カーネル・サンダース、安藤百福、ウォルト・ディズニー、稲盛和夫、ココ・シャネル、小林一三、スティーブ・ジョブズ、菊池寛、松下幸之助、計10名のエピソードが、それぞれ10~20ページでまとめられています。

既に知られたエピソードもありますが、冒頭の本田宗一郎、カーネル・サンダースの両名は、知られざるエピソードも含め、感動的な話が収められています。

本田宗一郎が工場を訪れた際、油まみれの工員の手をぎゅっと握りしめた話、老人になったカーネルサンダースが計1000軒のレストランを回って営業した話、菊池寛が友人の罪をかぶって一高を去った話…。

創業者はやはり「粋」でかつ「骨太」でなければいけないと感じさせられる、そんなエピソード集です。

失うことを恐れていては、未来は切り拓けない。

閉塞感を打ち破るために、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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大正12(1923)年9月1日、震度7の大地震が南関東一円を襲った。いわゆる関東大震災である。未曾有の大地震は14万人を超す死者・行方不明者を出し、被災者は190万人にも及んだ(中略)そんな絶望的な状況の中、オートバイで焼け野原を走り回る男がいた。17歳の本田宗一郎である。宗一郎はオートバイで被災地を駆け巡っては荷物を運び、困っている人をサイドカーに乗せた

20代にして富を得た若き経営者は、28歳で修理工場を閉鎖してしまう。宗一郎の夢はあくまで自動車を「作ること」であったからだ

うまくいかないのは、鋳物の基礎知識が足りないからだ。試行錯誤の末にそう考えた宗一郎は、聴講生として浜松工高に通い始める

仕事もせず遊び呆け始めた彼の姿を見て、妻は大いに不安になったが、宗一郎は戦後の日本が復興するのを静かに待っていたのだった

お上の言うことに対し、はいそうですかとおとなしく従う宗一郎ではない。新聞のコラムなどを通じ、「世界の一流国で国家が色を独占している例など聞いたことがない」と騒ぎ立て、世論を味方につけると、まんまと認可をもぎとった

ある工場を訪問した際には、こんなエピソードを残している。本当に工場にきてくれた宗一郎に、ひとりの工員が感激の面持ちで握手の手を差し伸べたが、慌てて手を引っ込めた。自分の手が油まみれだったことに気づいたからだ。だが、宗一郎はその手をがっしりと握って言った。「いや、いいんだよ、その油まみれの手がいいんだ。俺は油の匂いが大好きなんだよ」

ジェファソンビルにあるロータリー・クラブだ。カーネルは、フェリーボートの経営と同時に加入したこのクラブを、生涯辞めなかった。なぜなら、カーネルがクラブのモットーを大変気に入ったためである。それは、次のようなものだった。
「他の人に最高のサービスをする人が、もっとも利益を得る人だ」
「自分の利益のことを考える前にまず貢献すること」

カーネルは衛生状態の悪い店とは契約をせず、契約後でも、製法が守られていないと知ると「契約は取り消しだ!」と、ただちに契約を解除したのである。喉から手が出るほど契約がほしい時期でさえ、カーネルはこうした態度を貫いていた

「新しく開通した大阪(神戸)ゆき急行電車、綺麗で、早うで、ガラアキで、眺めの素敵によい涼しい電車」(小林一三の宣伝)

うろたえて泣き出す友人を前に、寛は自分が窃盗の罪をかぶることにした。その友人は寛とは違って成績優秀で、親からかけられた期待も並々ならぬものだった。
「一人の秀才を救うためだ。俺は犠牲になってもいい」
そんな思いを胸に、寛は一高を去っていった

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『大失敗にも大不況にも負けなかった社長たちの物語』柴崎伴之・著 彩図社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883928101
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◆目次◆

【本田技研工業創業者】本田宗一郎
【ケンタッキーフライドチキン創業者】カーネル・サンダース
【日清食品創業者】安藤百福
【ウォルト・ディズニー・カンパニー創業者】ウォルト・ディズニー
【京セラ・KDDI創業者】稲盛和夫
【シャネル創業者】ココ・シャネル
【阪急東宝グループ創業者】小林一三
【アップル社創業者】スティーブ・ジョブズ
【文藝春秋社創業者】菊池寛
【松下電器産業創業者】松下幸之助

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