2012年6月12日

『経営学を「使える武器」にする』高山信彦・著 Vol.2883

【戦略を考えられる人材になる】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103322810

本日の一冊は、東レ、みずほ、JR西日本などの大企業で「企業内ビジネススクール」を企画し、実績をあげている、話題の研修講師、高山信彦さんによる一冊。

著者は、富士ゼロックスを経て、慶應義塾大学でMBAを取得、現在は「株式会社イナクト」の代表を務める人物ですが、経歴だけを見ると、さほどすごさは感じられない。

しかしながら、読んでみて「これは違う」と、即座にその研修のすごさを実感しました。

MBAホルダーであれば、誰しも経営理論は語れるわけですが、それを現場に落とし込んで、実績をあげるまでには相当綿密な指導プロセスが必要。

本書では、その指導プロセスをはっきりと見せているのです。

著者が実際の講義で使うのは、『競争優位の戦略』『ブルー・オーシャン戦略』『イノベーションのジレンマ』『企業戦略論』『ビジョナリーカンパニー2』など、いわゆる基本書ばかり。

しかしながら、これらの基本書で紹介されている経営論を用いれば、十分に現場で成果をあげられることを、本書は示しているのです。

マネジャー(n+1)の仕事は、現場(n)が解けない問題を一段上の視座から解くこと─そのための抽象思考をどう養うのかという視点、経営戦略論の4つのアプローチ、パナソニック、トヨタを例に語られる「同質化戦略」、造船会社を変革した実例など、組織が学習することのものすごさを、眼の前で見せてくれます。

「経営学なんて使えない」とうそぶく前に、古くても道具を使いこなすことのパワーを教えてくれる、そんな内容です。

組織能力を高めたい経営者、マネジャー、人事担当者は、必読の一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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本屋さんに行けば、経営学に関する本があふれています。アカデミックなものから、実際の経営者に関するものまで。でもその大半は「事例」から「法則」を導く「帰納的」なアプローチによるものです。「A社はXで成功した」「B社もXで成功した」「C社も同様だ」。であれば、「企業はXをするべきだ」となります。一見、とても論理的です。勉強にもなる。でも考えてみてください。こうしたアプローチには「Xをしても成功しなかった企業はないのか」「どうすればXができるのか」という視点が欠落していませんか

企業活動における構想には行為が伴わなければなりませんし、その行為が価値創造に資するものでなければならない

「n」と「n+1」の違いは抽象化、概念化の差です。「n」「n+1」「n+2」「n+3」……とマネジメントの階層が高次になればなるほど、具体的な事実を抽象化、概念化する能力が必要になり、逆に「n」に近づくほど抽象化、概念化したものを具現化する能力が求められる(中略)突き詰めれば、「n+1」の存在意義は、抽象化や概念化を駆使して「n」が解けない問題を解決すること

同じ資源でもどの場に置くかでその効果は異なります。違う言葉を使えば、「上がるリングを選べ」ということです。このポジショニングを間違えると、無惨な結果になります

簡単に手に入るものは切り札にならない

小林製薬は世の中にないモノをどこよりも早く商品化していく。もっとも、花王ほどにはシーズの蓄積はありませんので、他社に真似されやすい

チャレンジャーが差別化に出た時、リーダーがよくやる手は「同質化」

「How」とは、「どのように~するか」という発想です。ある所与の目的があって、その目的を達成するための方法を考えるというものです。でも、私の授業で取り組んでもらいたいのは、「そもそも何をするのか」を考えるという発想です

小賢しい理屈や論理はいらないんです。大事なのは、地に足のついた数字。「この市場が有望だ」と生徒が言えば、私は尋ねます。「有望というのなら、全体の市場規模はどれだけあって、どれだけの受注が見込めるのか」それでも答えて来たら、重ねてこう尋ねます。「具体的には、どこが買ってくれるのか」。企業名を答えて来たら、さらに突っ込みます。「誰が買ってくれるのか。君はその決裁権のある人の名刺を持っているのか」

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『経営学を「使える武器」にする』高山信彦・著 新潮社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103322810
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◆目次◆

準備編 経営学の基本を頭に入れる
実践編 経営学を使って、造船会社を変革する
補講 東レ、JR西日本、みずほの挑戦

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