2012年4月14日

『「しがらみ」を科学する』山岸俊男・著 Vol.2824

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480688714

「Cool Head,but Warm Heart」
(冷静な頭脳とあたたかい心)

これは、ケインズの師として知られる、アルフレッド・マーシャルによる名言ですが、社会を正しくとらえ、貢献するには、やはり物事を冷静にとらえる知性が必要だと思っています。

本日ご紹介する一冊は、北海道大学大学院文学研究科特任教授であり、社会心理学者の山岸俊男さんが、高校生・大学生に向けて社会のとらえ方を述べた一冊。

ジントニックのクイズや離婚率、凶悪犯罪のデータを題材にしながら、なぜわれわれが正しく因果関係をつかむことができないのかを説き、「心でっかち」の弊害を訴えています。

著者の言葉を引用して言うならば、<「心でっかち」というのは、一人ひとりの気持ちや考え方である「心」がすべての原因だと考えることで、心と現実との間のバランスがとれなくなってしまっている状態」>のこと。

さまざまな社会問題を見て、すぐに「人々の心が荒廃してきているから」と説いてしまう人がいますが、これは典型的な「心でっかち」の例です。

われわれは社会問題や現象にすぐ感情的に反応しますが、そこに大きな視点や「理論」を持ってくるだけで、物事の真実が見えてくる。

本書は、リーダーや政策担当者に必要な、社会を見る「視点」を提供したという点で、価値ある一冊です。

概念的な部分が多く、また数字を扱っている個所もあるため、躊躇する方もいらっしゃると思いますが、実際には、楽しく読めてためになる内容です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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社会とは「しがらみ」

「空気が読めない」とか「KY」という言葉で若い人たちが表現していることも、大人が「しがらみ」という言葉で表現していることも、結局は同じことです。自分の考えや行動に対するまわりの人たちの反応を予測して、その予測に自分の行動を合わせる必要があるということです

社会で起きているさまざまなできごとを理解しようとするときにも、一人ひとりの人間が考えていることとか感じていることにとらわれてしまうと、社会全体で起きていることの本質に目が行かなくなってしまって、全体を見ればすぐに分かる現象が理解できなくなってしまうことがある

団塊の世代がまだ三〇代の前半だった一九八〇年代前半には、このような離婚しがちな三〇代前半までのカップルが人口全体の中で占める割合が高かった。そのため、日本全体での離婚率も比較的高くなってしまった

「心でっかち」というのは、一人ひとりの気持ちや考え方である「心」がすべての原因だと考えることで、心と現実との間のバランスがとれなくなってしまっている状態です

「社会」であるできごと(クジャクのハネが派手になるというできごと、あるクラスでいじめが起こるというできごと)を理解するためには、単純な原因―結果という考え方からいったん離れて考えてみる必要がある

アメリカで暮らし始めてすぐに「あ、そういうことか!」と気がついたのは、コマーシャルを作ったアメリカの会社の人たちは、日本人は洗濯のために水の温度を使い分けていないことに気づかないで、アメリカと同じやり方で洗濯機を使っているだろうと思い込んでいたんだね、ということです

そもそも、実態を観察するといっても、「理論」がなければ何を観察したらいいのかを決めることさえできないんですね。逆に言えば、何を観察すべきなのかを教えてくれるのが理論

男性の脳は世の中のしくみをメカニカルにとらえるのに適したようにできていて、女性の脳はまわりの人たちの気持ちになって他人を理解するのに適している

共感を通してほかの人たちのことを理解するのが苦手でも、自分でできるしかたで社会を理解できるようになれば、社会に対する不安が減るはず

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『「しがらみ」を科学する』山岸俊男・著 筑摩書房
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◆目次◆

第1章 ジントニックと凶悪犯罪─「心でっかち」のワナ
第2章 天才は先生に作られる─社会は自分たちで作るもの
第3章 クジャクのハネと「いじめ」の螺旋─社会ができるプロセス
第4章 ぐるぐる巻きの赤ちゃん─社会が分かるとは
第5章 空気と社会─がんじがらめの日本社会

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