2012年2月22日

『「格安航空会社」の企業経営テクニック』赤井奉久、田島由紀子・著 Vol.2772

【「買い」の一冊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4813245609

先日、新宿駅からタクシーに乗り、「短い距離で恐縮です」と言ったら、運転手さんに「短い方が儲かるんですよ」と言われました。

彼は、この不況時にとても儲かっているようでしたが、その秘訣は、「朝の時間に短い距離をたくさんこなす」ことだったのです。

なぜ短い方が儲かるかというと、おそらくその理由は以下の通りです。

1.場所によっては、複数人乗ればバスや電車を使うより割安
→需要が多い
2.需要が多く、乗客がすぐに見つかるので、アイドルタイム
が少なくなる
3.無駄なガソリンを使わず、低コストになる

じつはこれ、現在話題の格安航空会社(LCC)と共通の儲けのしくみです。

そう、本日の一冊は、この格安航空会社(LCC)のビジネスモデルを、航空経営研究所(そんなものあったのか!)の研究所長と主席研究員が解説した本。

マニアックなテーマで、なかなか書店では探せないかもしれませんが、これは「買い」の一冊です。

読んでみると、LCCが安かろう、悪かろうというのは、まったくの誤解。

機体整備時間が短縮できるのも、出発準備時間、搭乗時間が短縮できるのも、ビジネスモデルの転換による、じつに合理的な理由からなのです。

この不況時に儲けを出すための、目からウロコのすごい仕組みが満載の一冊。

これはぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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ケレハー氏の言葉は今も語りつがれています。
「会社の規模と利益率は関係ない」

“航空ビジネスはもはや価格でしか訴求できない完全なコモディティー(日常品)ビジネスになった”ライアンエアーのCEO、マイケル・オレアリー氏はそういって、価格でしか勝負できないのなら、最安値で勝負するという戦略をとりました。そして、最も安い運賃を提供し続けるために、運賃の考え方を変え、破格な安さの「基本運賃」と、別料金(有料)の「付加料金」とに分けたのです

現在のライアンエアーの売上げのなかで、別料金である「付加サービス」からもたらされる収入は、全体の約20%

◆格安航空会社の「ビジネスモデル」
1.路線は短距離に絞りこむ
2.使用する機種(旅客機の種類)は1種類に絞りこむ
3.航空機の稼働時間を多くする
4.2地点間の単純往復運航
5.機内の座席を多くする
6.サービスを絞りこんで単純化する
7.混雑していない第2の空港を使用することが多い
8.機内サービスの廃止や簡素化、有料化
9.自社ホームページを使ってのネット販売
10.積極的に売る付加サービス

LCCの機内座席数は180席であり、FSAの160席と比べると20席(約12%)も多くなっています。さらにLCCは、1日の間に機材を飛ばす時間数、すなわち機材の稼働時間もFSAと比べて長くなっています。これにより、同じ型の機材でも座席の生産力が約7%多くなります。これら2つの要素をあわせると、LCCはFSAと比べて、約2割も多くの座席数を生みだしていることになります。このように、LCCはFSAの約半分という少ない費用(正確には54%)で、FSAより2割も多い座席数(商品)を生産しているわけです

◆LCCが選択する旅客機機材のポイント
1.座席あたりの価格が割安な機材であること
2.座席あたりの燃油消費量を少なくできる機材であること
3.高い搭乗率を得やすい座席規模をもった機材であること

すべての面で単一化と単純化を図る

ファミリーレストランやファストフード店で、革張りや合成皮革のシートを採用しているのは、見栄えがよいということや、除菌などの衛生面での理由もありますが、清掃に人手がかからないという実質的なメリットも大きい

LCCの収入には、このような搭乗しない旅客分のものも少なくない

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『「格安航空会社」の企業経営テクニック』赤井奉久、田島由紀子・著 TAC出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4813245609
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◆目次◆

はじめに
第1章 格安航空会社の経営理論とビジネスモデル
第2章 超低コストの公式
第3章 高搭乗率と利益の公式
第4章 スタッフの力が倍になる秘密
あとがき
参考文献

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