2011年12月30日

『伝える力2』池上彰・著 Vol.2718

【待望の続編ですが…】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569800572

本日の一冊は、池上彰さんによる160万部突破の大ベストセラー、『伝える力』の待望の続編。

※参考:『伝える力』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569690815

前作が出た当初から絶賛していた土井としては、この続編、大変期待して読んだのですが、結論から言うと残念な本でした。

最近読んでいて思うのは、震災がらみのテーマになると、どの論者も勧善懲悪的になり、主張に傲慢さが出てくるということ。

本書にもそんな面があるように思えてなりません。

あくまで「わかりやすく」伝えるために、ストイックな努力をしている前作の印象とは、まったく違った印象の作品でした。

と、厳しいことを並べ立てた上で、本書の良いところを紹介すると、以下の3つに集約されると思います。

1.優れたスピーチのポイントが学べる
2.専門用語連発の専門バカになるのを避けられる
3.正しい日本語が学べる

スピーチの部分では、野田総理の「どじょう発言」、所信表明演説、専門用語の部分では、テレビ業界、出版業界の専門用語を紹介し、「伝えること」の要諦を具体的に示しています。

そして最も役に立ったのは、最後の「正しい日本語が学べる」の部分。

「情けは人のためならず」、「煮詰まる」と「行き詰まる」の違い、「気が置けない」、「流れに棹さす」など、間違いやすい表現について、具体的に解説しています。

自らの「伝え方」をチェックしたい人には、おすすめの一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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話の流れから「ようめん」とは「葉面」、つまり「葉っぱの面」のことだなと推測した私は、とっさに「葉面、つまり葉っぱの表面のことですね」と確認の問いかけをしました。相手は「そうだよ、そんなの当たり前だよ」という表情をされたように見えました

相手に「話の地図」を渡すことが大切

日本人は謙遜した物言いや苦労話が好きなのです

野田総理が前面に打ち出した表現がありました。それは「忘れてはならないものがあります」というフレーズです。「忘れてはならないものがあります」を野田総理は三回も口にしました。決して、忘れてはならないものがあります。それは、大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神です。忘れてはならないものがあります。それは、原発事故や被災者支援の最前線で格闘する人々の姿です。忘れてはならないものがあります。それは、被災者、とりわけ福島の方々の抱く故郷への思いです。

「豊後水道」と聞いて、水を供給する施設などを思い浮かべる人がいても不思議ではありません。小学生なら、頭が混乱しそうです

ある出演者は「アメリカ」と答えました。答えは、残念ながら、不正解です。そこで私が単に「違います」とか「ハズレです。アメリカではありません」とか答えると、せっかく答えてくれた出演者はガッカリするし、場合によっては立つ瀬がなくなってしまいます。(中略)そこで私は「油田を見つけたのは確かにアメリカの会社なのですが、油田の開発を進めたのは別の国なのです」という言い方をしました

業界用語は業界内だけで使うべし

自分の言葉でなければ、たとえ名文であっても、人の心に届かない

伝えたいことを因数分解すると、わかりやすくなる

現在の私たちは外国の言葉が入ってきても、それを日本語に翻訳する努力をあまりしなくなりました

企画をプレゼンテーションするときや職場で朝礼のスピーチをするときなどに、集まっている人を惹きつけるにはどうしたらよいでしょうか。その方法の一つは「具体的な話から始める」ことです

「ご被害者のみなさまへ」はまさに慇懃無礼

「『情けは人のためならず』というのは『人に親切にすると、それが巡り巡って、自分にもよいことが起こる』という意味だよ

「煮詰まったから、いいアイディアは出ない。仕切り直しだ」という発言の「煮詰まる」は「行き詰まる」であれば適切な使い方

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『伝える力2』池上彰・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569800572

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◆目次◆

第1章 東日本大震災と「伝える力」
第2章 テレビの現場から私が学んだこと
―『週刊こどもニュース』『学べるニュース』で培った伝える力
第3章 世間にあふれる「わかりにくい表現」「伝わりにくい言葉」
第4章 もっとわかりやすく伝える方法1─話をコンパクトにまとめる
第5章 もっとわかりやすく伝える方法2─話し方や話題を工夫する
第6章 気になる言葉、気になる表現
第7章 日本語は乱れているのか
第8章 かつて私も「伝える力」に悩んでいた

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