2011年10月7日

『書くことが思いつかない人のための文章教室』近藤勝重・著 Vol.2634

【毎日新聞人気コラムニストの文章術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344982339

『書くことが思いつかない人のための文章教室』。

これは、タイトルだけ見て「即買い」決定でしょう。

本日の一冊は、毎日新聞専門編集委員で、同紙夕刊の大人気コラム、「しあわせのトンボ」の著者、近藤勝重さんが、その文章術をまとめた一冊。

知的かつ温かみのある文章が特徴の著者ですが、本書を読んで、なぜこんなにも人間味あふれる文章が書けるのか、その秘密がわかったような気がします。

著者が見本として取り上げる文章や川柳には、ごく普通の人間の喜怒哀楽が描かれています。

・フラダンス手の先だけが波に乗り
・歯ブラシはそっと寄り添うケンカ後も
・夫逝きなかなか減らぬ歯磨き粉

<「今夜はこれで」と立ち上がりかけても、時計をテーブルに置いて、「これであと十五分、もう十五分付き合うてえな」とせがんでくる。そうしてまた話し相手になって、どうにか解放されたのは翌日未明のことだった。玄関先から奥をうかがうと、やすしは模型飛行機のプロペラをくるくる回しながら、こちらをじっと見つめてい
る。夜の静けさのなかで、プルン、プルンとはかなく響くプロペラの音……。やすしのどこか鋭く、どこか哀しげな目を、私はいまも忘れられない>(急死した横山やすしへの追悼コラム)

いずれの文にも共通しているのは、観察者の「まなざし」がじつに温かく、やわらかいということ。

随所で、有名作家が書いた文章例なども紹介されており、良い文章とは何かを考えさせられます。

また、細かなノウハウについても、新聞や雑誌の切り抜きを「納得」「共感」「驚き・不思議」の3つのファイルに分けるなど、参考になるアイデアがいくつも紹介されています。

これまでいろんな文章術の本を読んできましたが、本書はそのなかでも「もっとも温かい」文章術でした。

心温まる文章が書きたい人に、ぜひおすすめしたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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いい文章=「独自の内容」+「伝わる表現」

演技論は文章論にも通じます。過剰な表現より抑えた表現のほうが強い。細部をとらえる目がそれを支えるのです。細部には神だけでなく、人間の真も誠も実も宿っているからですね

城山三郎氏はつねづねおっしゃっていました。「心情吐露や説明はいらない。描写が大切だ」

着眼点が面白い。つまり見方、視点が独特ですと、なるほどこういうとらえ方もあるのか、と引きつけられます

書く以上は自分ならではの内容と表現であるべきです

見方・視点は「(1)納得」「(2)共感」「(3)驚き・不思議」の三つのファイルに分け、新聞や雑誌、本に登場の人の話でそれらに該当するものがあれば切り抜いたり、コピーしてそのファイルに収めています

ある男子学生の「生きるとは、ふとんから起き上がるときの決意です」という答えには笑ってしまいました。でも強く印象に残りました

文章、とりわけ描写文は五感の働きを抜きに書くのは困難でしょう。文章上、五感のバランスも心がけてほしいと思いますが、学生たちの作文でよく働いているのは「視」で、あとの「聴」「嗅」「触」「味」はそうでもない印象を受けます

「子ども性」を取り戻そう

物事の初め・中ほど・終わりの三つで構成する序・確・急なども知られた形式ですが、おすすめは現在・過去・未来の順に書いていく方法です

「あれ、それ、これ」などの指示代名詞で不要なものは削りましょう

◆重複表現を直す ※一部紹介
・あとで後悔する → 後悔する
・連日暑い日が続く → 暑い日が続く
・製造メーカー → メーカー
・思いがけないハプニング → ハプニング
・最後の追い込み → 追い込み

どんな文章も次の行には何が書かれているんだろう、と思わせ、思わせ進んでいくのが一番です

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『書くことが思いつかない人のための文章教室』近藤勝重・著 幻冬舎
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344982339

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◆目次◆

第1章 記憶を描写してみよう
第2章 伝わる文章の秘密
第3章 そもそも書く手順とは?
第4章 文章はこう直す

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