2011年8月26日

『世界の運命』ポール・ケネディ・著 Vol.2592

【『大国の興亡』の著者が解く、これからの世界】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121021142

本日の一冊は、ベストセラー『大国の興亡』の著者、ポール・ケネディによる最新エッセイ集。

※参考:『大国の興亡』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794204914

最新といいながら、収録されているエッセイは2007年?2009年のものが中心なのですが、序文には3.11震災後の日本に向けたメッセージが書かれています。

ちょっと長いですが、そこに書かれているメッセージを紹介しましょう。

「実は、はるか昔の一七五五年に、リスボンの中心部は凶暴な地震と津波によって壊滅した。そして多くの住民は、世界が終わったように感じたのである。だが、そうではなかった。多大な費用と年月を要したものの、リスボン市民は、破壊された中心部を再建し、以前よりもっと美しい街にしたのである」

本書には、現在世界が直面しているさまざまな問題への考察が書かれていると同時に、それらがどこに向かうのか、ヒントとなる歴史上の事実が付されています。

このリスボンの話のように、われわれの意識はつい現在の問題にとらわれがちですが、広い視野と歴史的視点を持てば、自ずと方向性は見えてくるものです。

アメリカに対する強烈な皮肉、中国、韓国、ロシアの今後に対する考察…。

読んだから何が解決するというわけではありませんが、読むことで広い視野を獲得することができる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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アラブ世界には、「未来を予測し、それが的中した者は、利口なのではない。非常に幸運なのである」という偉大なことわざがある

ケーガン氏は二〇〇二年夏、「力と弱さ」という論文の中で、こう指摘した。欧州人は戦争に疲れ、単に平和の喜びを享受したいと思っている。これとは対照的に、概して米国人は、世界に邪悪と脅威が存在する限り、たとえそれが遠い戦場であっても、立ち向かう必要があると思っている。この結果、欧州人は武器にほとんど金を使わず、軍事的にほとんど何もできない。逆に米国人は、陸軍、海軍、空軍にたくさんの金をかけ、どんどん戦闘を行う

そのころ、世界中で最も熱効率が高い石炭は、どこにあったのか。それは、英サウス・ウェールズ地方の、特殊な瀝青炭だった。造船業、蒸気機関、そして石炭が、大英帝国をさらに一五〇年間にわたって前進させたのである

世界の人口は全体的に増加し、近年、二〇億以上の人々の実質所得が上昇している。したがって、世界的なタンパク質の需要が高まり続けるのは確かだろう。牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉の需要が増えれば、当然、飼料穀物の需要も増える

これから何十年かすれば、この地球上の国々は、穀物や清浄な水、石油などの基本物質を、ますます有難がるようになるだろう。これらを全部持っていれば問題はない。だが、資源に乏しい国々は、暗い未来に直面するだろう

一つの大国が、一戦交えることなしに第二列に落ちることは滅多にない。また、新興国が暴力抜きでトップに立つことは滅多にない

高価値な産品一つへの圧倒的な依存は、二つの巨大なリスクを伴っている。一つは、我々はこれにあまり注意を払っていないが、地下から噴出する新たな富の源泉が、国民所得の他の財源をいつのまにか駆逐したり、弱体化させたりすることである(中略)第二のリスクは、いまやもっと我々になじみ深い問題である。すなわち、貴重な産品の取引価格が、世界市場で突然崩壊する危険である

要するに、国家が舞台の中央に復帰したのである。ほとんどの国で、GDPにおける政府部門の比率が急上昇している。政府支出と国家債務も同様である

ある国の通貨が他国に場所を譲れば、必ず国際的な力と影響の低下につながる。これは歴史的事実なのである

何千年にもわたって歴史家と戦略家は、小さいがよく組織された力の集団が、その実際の規模とはまったく不相応に大きな影響力を発揮する場合があることをてきた。たとえば、古代アテネを囲む城壁の大きさは、シチリアからエジプト、そして北方の黒海まで広がる、途方もなく大きなギリシャ人の影響圏と、まったく不釣り合いのものだった

韓国がこの地域のスイスになることなど、望むべくもない。なぜなら地理的にも地政学的にも、スイスと同一の、ないしは同じような位置には、ないからである

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『世界の運命』ポール・ケネディ・著 中央公論新社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121021142

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◆目次◆

I この世界の戦争と平和
II 国家vs.金融
III ああ、アメリカ
IV 諸国家の興亡
V リーダーたちと民主主義

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